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改正銀行法が切り拓く金融サービスの未来

2018年10月23日 ソリューション第4部 黒川 尚紀

2017年5月26日に「銀行法等の一部を改正する法律」が成立し、改正銀行法として、2018年6月1日から施行されている。「銀行法?特に関係なさそうだな」と感じた読者もいるかもしれない。確かに施行後すぐに恩恵を受ける性質のものではないが、長期的には消費者にとってのメリットが生まれる可能性を秘めている。

本稿では、銀行法が改正に至った経緯、改正銀行法の主な内容、金融サービスの未来について述べたい。

銀行法が改正に至った経緯

なぜ銀行法を改正する必要があるのか。背景として、FinTech(*1)企業の躍進が挙げられる。FinTech企業の代表的なサービスとして、例えば、顧客が口座を開設している複数の金融機関から口座情報を取得し、顧客のスマートフォン上に一覧表示するものがある。FinTech企業は顧客側の同意の上で、顧客から入手した情報を用いて金融機関の口座にアクセスし、情報を取得しているのだが、この場合の問題点は以下の3つである。

1.セキュリティ上の問題
ID、パスワードといった個人認証に関する情報を金融機関以外の事業者が保持して金融機関のサービスにアクセスせざるを得ない。

2.口座情報取得の技術的な問題
金融機関から口座情報を照会する際の作法が公開されていないため、FinTech企業は金融機関のWebサイトのHTMLなどのコードを解析して情報を取得しており、Webサイトに過度な負担がかかっている。

3.オープンイノベーションにおける問題
FinTech企業の法的位置付けが不明確であり、金融機関はセキュリティ面の不安要素からサービス提携に踏み切れず、またFinTech企業は金融機関から要求されるセキュリティレベルが高いため、サービス提携が進みにくいケースもある。

上記3つの問題に対応すべく、成立したのが改正銀行法である。

改正銀行法の主な内容

改正銀行法における重要なキーワードは以下の2つである。

1.電子決済等代行業制度の創設
口座への送金、口座情報の取得などのサービスを「電子決済等代行業」と定義し、そのサービスを営む事業者を「電子決済等代行業者」として、登録制による規制を課した。電子決済等代行業を営むFinTech企業に明確な法的規制が与えられ、情報の厳格かつ適切な管理体制が求められるようになり、セキュリティ上の問題を回避・軽減することが可能となる。

2.オープンAPIの活用
電子決済等代行業者は登録制という規制強化となる一方で、オープンイノベーションの推進に向けて、金融機関に対しては「オープンAPI(*2)」に係る体制整備の努力義務が課された。

これにより、FinTech企業は従来の独自の手法ではなく、ルール化された共通の手法で口座情報を取得することが可能となる。

金融サービスの未来

改正銀行法により、現在もAPIの公開が進んでいる状況であるが、今後金融サービスはどのように変化し、どのようなメリットが生まれるのか。

Fintech企業の目線では、新たに機能を開発しようとする際に、すでに公開されているAPIを用いた開発が可能となり、大幅な効率化が見込める。また、さらなる利用ユーザ獲得のため、公開されている機能をより高機能・高付加価値なものに洗練しようという競争原理が働きやすくなり、より多くの高品質なサービスが創出される可能性がある。

一方、消費者の目線では、FinTech企業に個人認証情報を開示する代わりに、金融機関がFintech企業にアクセス許可を発行する形になるため、APIを通じてより安全にサービスを利用することができるようになる。個人認証に関わるAPIの公開が促進すればするほど、消費者はよりシームレスなサービスを享受することが可能となる。例えば、今まで使用していなかった他社サービスを利用しようとした時に、APIによる個人認証を利用することで、消費者は都度会員登録をする必要がなくなるなど、様々な面での利便性の向上が期待される。

おわりに

APIの公開が進んだ世の中では、APIを通じてどのようなサービスを提供できるか、どのような付加価値を提供できるか、という点が競争領域になると思われる。時代の変化がますます激しくなる中、複数の企業がパートナーシップを組み、互いの技術や資本を生かしながら、業界の枠を越えて広く共存共栄していく仕組み(「エコシステム」と呼ばれる)は、今後益々増えてくることとなるが、まさにオープンAPIはその土台たるものと言える。

オープンAPIをはじめとする「オープンイノベーションの活用」は金融サービスに限った話ではない。今後ありとあらゆる業界でオープンイノベーション化が浸透・促進されること、そしてさらなる革新的なサービスの創出に期待したい。

  1. *1金融(Finance)と技術(Technology)を組み合わせた造語
  2. *2アプリケーション・プログラミング・インターフェースの略で、あるアプリケーションの機能や管理するデータ等を他のアプリケーションから呼び出して利用するための仕組みのこと。それを他の企業等に公開することを「オープンAPI」と呼ぶ。
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