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中国FCVC2018に参加して

中国の水素燃料電池自動車市場が熱い

2018年11月20日 サイエンスソリューション部 瀧見 知久

はじめに

2017年に独仏英および中国において内燃機関自動車(従来のガソリン車およびディーゼル車)の販売禁止に向けた方針が打ち出された。現在のHV(ハイブリッド車)も対象となるかは決まっていないが、自動車産業のCO2ゼロエミッションへの流れが加速しつつある。

将来のゼロエミッションの車種として、大きくバッテリー駆動の電気自動車(EV)および水素燃料電池自動車(FCV)が考えられている。水素供給ステーションの整備や価格が課題となっているFCVはEVに比較して不利だと考えられ、もはやFCVはEVに対して勝ち目がないというニュースも最近では多く流れているが、単純にそうとは言い切れない。

FCVはEVに比較して航続距離が長く、水素の充填時間が3~5分と短時間で済む利点がある。特に、バス、トラックやタクシーなどの業務用自動車は1日あたりの走行距離が自家用乗用車に比較して長く、さらに稼働時間を長くするためにエネルギー源の供給時間の短縮が求められる。また、業務用自動車は決まったルートや範囲を走行するため、FCV普及のボトルネックとなっている水素ステーションの少なさは問題となりにくく、業務用自動車においてFCVはEVに対して優位性があると言われている。

一方で自家用乗用車では、現状、EVに優位性があると見られている。このようにFCVとEVは競争相手というよりも、得意な領域を棲み分けて共存していくというのが業界での一般的な考え方とされている。

さて、世界最大の自動車市場を有する中国では、2018年は「水素燃料電池車元年」と位置づけられ、市場において大きな動きが始まっており、世界各国の水素燃料電池のプレーヤーはもはや中国市場を注目せざるを得なくなっている。そのような背景の中、今回、上海浦東空港から長江を渡って230km程度の江蘇省如皋市にある如皋汽車文化館において2018年10月23日~25日に開催されたThe International Hydrogen Fuel Cell Vehicle Congress 2018(FCVC 2018)(*1)に参加してきた。

FCVC 2018の参加報告および活発な中国企業動向について

FCVC 2018は講演と展示会の同時並行で開催された。本コラムでは展示会の様子を中心に報告したい。まず、展示会では燃料電池バスが多く展示されていた。中国プレーヤーの多くは前述したFCVの優位性のある領域が明確化されてきてから市場に本格参入してきたため、業務用自動車、特にバスに焦点をあてていると見られる。上海汽車や第一汽車のような大手自動車メーカーは燃料電池乗用車も展示していたが、最も目を引いたのはやはり業務用自動車である。

SAE China(中国汽車工程学会)が燃料電池自動車に関する技術発展ロードマップを2016年に発表しているが、そこでは2020年におけるFCV普及台数目標を5000台としていた(*2)。展示会出展者等とのコミュニケーションから、その目標の達成の可能性は高く、その普及の大部分は業務用、特に燃料電池バスであるという認識がなされていることがうかがえた。日本における2020年の燃料電池バスの普及目標は100台程度であり、日本と中国の市場規模は違うものの、圧倒的に高い目標を達成しようとしている。

また、海外の有力な燃料電池企業と積極的に戦略提携を行っている中国企業の展示も見られた。空気圧縮機などの周辺機器を主に手がけている雪人股价は2017年6月にカナダの主要な燃料電池スタック企業Hydrogenics社の株の17.6%を取得、筆頭株主になっている。同社は展示会にブースを出展、燃料電池に不慣れな中国自動車メーカー向けにHydrogenics社の燃料電池スタックを搭載したバス向け動力システムを出展していた。

また、山東省に本拠地を置くWeichai Powerもカナダの燃料電池スタック企業Ballard社の19.9%の株式を取得して筆頭株主となっている。山東省は中国の中では商用車製造の盛んな地域であり、Weichai Power等を中心として水素燃料電池のサプライチェーンの構築に力を入れていると見られる。

一方で海外からの部品輸入に頼ると燃料電池全体のコストが高くなってしまうため、積極的に国産化とサプライチェーンの構築を進めている動きがある。展示会でも中国国内のスタックメーカー・部品サプライヤーのアクティブな新規参入動向が感じられた。事前にある程度中国国内企業を調査したにもかかわらず、名前を初めて聞くような企業が比較的大規模なブースを出展しているケースも見られた。参入企業がとても多くさらに展開スピードも速く、驚くばかりである。現在は国内企業の新規参入期・勃興期と見られ、いずれは競争とともに優良企業に収斂・淘汰されていくのではないかと思われる。

中国の日常における電動車両

さらに、中国の日常風景の観察も市場環境をうかがうためによい経験となった。中国では電動バイクの普及が非常に進んでおり、町中で電動バイクを運転している景色をたくさんみかけた。

上海などの大都市では従来の内燃機関自動車への新規ナンバープレートの発行を制限しており、上海ではナンバープレートに対して入札制度を導入。落札価格の相場は10万元(164万円)前後と非常に高い値段になっている。一方でEVやFCVをはじめとするNEV(新エネルギー車)に対しては特別に緑色のプレートが発行されており、入札は免除されている。実際に上海の道路状況を観察すると、まだ緑色のナンバープレートは少数派ではあったが、走行している自動車(新車以外も含む)の15台に1台程度の割合では見かけており、こうした施策によってNEV普及の一助になってゼロエミッション車の普及が力強く推進されていることを感じた。

最後に

今回の中国・如皋市におけるFCVC2018への参加は中国の燃料電池市場の動向を理解する絶好の機会であった。百聞は一見にしかずというが、直に中国のプレーヤーおよび現地の日常に接することで数字では表せない市場の空気に触れられたことが最も有意義な収穫であった。中国のプレーヤーからは燃料電池先進国である日本に対する高い関心もうかがえ、日本との協力関係にも関心が寄せられていた。泥臭く市場を観察しながら中国で事業展開・協力関係を構築していく重要性を感じた次第である。

  1. *1FCVC2018ホームページ
    http://www.fcvc.org.cn/
  2. *2SAE China“Hydrogen Fuel Cell Vehicle Technology Roadmap”
    http://www.ihfca.org.cn/file/FCV%20Tech%20Roadmap.pdf(PDF/1,640KB)

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