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“攻め”の環境政策元年

第五次環境基本計画の策定

2018年5月2日 環境エネルギー第1部 渡邉 絵里子

第五次環境基本計画、始まる

2018年4月17日、第五次環境基本計画が閣議決定された。1994年に最初の環境基本計画が策定されて以降、5期目の計画である。

環境基本計画の見直しやその点検について議論するのは、環境省中央環境審議会総合政策部会(以下「総合政策部会」)である。第五次環境基本計画(案)の作成にあたり、総合政策部会のメンバーが繰り返し強調していたのは、「SDGs(持続可能な開発目標)、パリ協定採択後に初めて策定される環境基本計画」という点であった。また、計画案の議論に際して、総合政策部会の委員からは、「環境の話は、環境だけにとどまらない」「環境はビジネスマター」といった発言も見受けられた。

こうした議論をベースに取りまとめられた第五次環境基本計画では、今後の環境政策の展開の基本的方向性として、SDGsの考え方も活用して環境・経済・社会の統合的向上の具体化を進めることとしており、「SDGs基本計画」とも呼べるほど、環境分野の重要性や経済・社会への影響力の大きさをアピールするものとなっている。

新計画の目玉は“横串”の重点戦略

従来、環境基本計画は「特定の環境分野に関する課題を直接的に解決するための分野別の重点分野を設定する」という考え方に基づき、重点分野や各分野の施策が取りまとめられていた。しかし、第五次環境基本計画においては、特定の施策が複数の異なる課題を統合的に解決し得る、分野横断的な“横串”の重点戦略が掲げられており、挑戦的な内容となっている。

たとえば、第四次環境基本計画では、「地球温暖化」「資源循環」「生物多様性」「水環境」「大気環境」「化学物質」といった重点分野が設定されていた。しかし、第五次環境基本計画では、以下に示す分野横断的な6つの重点戦略が掲げられた。

  1. 1)持続可能な生産と消費を実現するグリーンな経済システムの構築
  2. 2)国土のストックとしての価値の向上
  3. 3)地域資源を活用した持続可能な地域づくり
  4. 4)健康で心豊かな暮らしの実現
  5. 5)持続可能性を支える技術の開発・普及
  6. 6)国際貢献による我が国のリーダーシップの発揮と戦略的パートナーシップの構築

“所管の壁”をどう乗り越えるか

これまでの環境行政は、ある分野の環境政策が他の分野の施策と重複する場合、「どこまでが、どちらの分野の所管なのか」という観点で役割分担を確認しつつ、棲み分けを図ってきた。しかし、第五次環境基本計画では、「環境問題の同時解決」が求められており、各分野の施策の実行に際しては、必要に応じて“所管の壁”を取り払う姿勢が求められる可能性がある。なぜなら、分野横断的な“横串”の重点戦略が掲げられたとはいえ、この重点戦略を達成するための施策やその施策を実行する組織は分野別であり、また、環境基本計画の点検を行う各部会も分野別に組織されているためである。

今後、国が策定した環境基本計画に追随する形で、地方自治体の環境基本計画も、同様に横串の重点戦略が掲げられる可能性があり、国・地方自治体双方で、横串の重点戦略に対して、各担当部署がどのようにアプローチするかという課題が新たに出てくるだろう。

決して行政組織を分野横断的な組織編制にすべきというものではないが、施策やそれを実行する組織が個別・分野別である以上、今後は所管の壁をどう乗り越えるかが重要だ。そのためにはたとえば、所管を超えたデータの利活用はもちろんのこと、重点戦略の達成に向けたCFT(Cross Functional Team)の設置・活用などが考えられる。これらの考え方自体は真新しいものではないが、行政による取り組み事例は依然少ないと考えられ、所管の壁を乗り越えるための有効な手段の1つになり得る。

いずれにせよ、今回の第五次環境基本計画の策定は、まさに“攻め”の環境政策元年とも呼べる、環境分野においてターニングポイントの年となるのでないだろうか。

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