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企業の新規事業開発としての可能性

なぜ今SDGsなのか?日本企業に期待される役割(後編)

2018年10月03日 コンサルティング事業推進部 山本 麻紗子

近年、注目されているSDGsという国際目標について、なぜ企業の評価、企業価値創造という文脈において重要視されているのか、前編では、日本企業にとってSDGsが経営戦略上、重要な目標となった背景と経緯を紹介した。後編となる本稿では、日本企業のSDGsの取り組み方の現状を概観し、日本企業としてSDGsと事業戦略とをどのように融合させ、新規事業開発の一環として展開させることが可能となるかについて考察したい。

SDGsと企業活動、これまでとの違い

企業各社は、これまで企業の社会的責任(CSR:Corporate Social Responsibility)の観点からSDGsとも関連性の高い事項について取り組んできた。また、国連開発計画がこれまで提示してきたMDGs(ミレニアム開発目標)は、特定の専門化された人々にとって「何をすべきか」という行動目標であった。

SDGsはこれらの取り組みとは異なり、企業活動の一環として実施することが可能な内容であり、その実現のためには、まずは、SDGsがどのような目標かについて正確に把握しておく必要がある。

SDGsがこれまでの取り組みと異なるのは、すべての人々にとって「どういう状態になっていなくてはならないか」という成果目標であり、つまり、SDGsは2030年の世界のあるべき未来を定義し、“全世界が合意した未来像”といえる。この未来像を達成するためには、我々を取り巻く多くの社会的課題解決のためイノベーティブなソリューションの実現が必要とされており、その潜在マーケットは、2017年のダボス会議において、12兆ドルの価値が創出されると推計されている。

包括的で捉えどころがないように思われるSDGsだが、図表1に示すとおり、目標1~6で貧困を撲滅し、目標7~12で持続的な経済を創出しながらも、目標13~15のとおり環境を保護・育成するというストーリーとなっている。目標16、17は、目標1~15を実行するために必要な手段という位置づけである。

とはいえ、SDGsの目標は相互に関連しており、必ずしも何か1つの目標を達成して完結するものではない。たとえば、途上国における都市ゴミの処理は、目標11「住み続けられるまちづくりを」に該当するが、衛生環境整備という意味では、目標3「すべての人に健康と福祉を」や目標6「安全な水とトイレを世界に」にも沿う。さらにバイオマス発電等のビジネスにつなげられれば、目標7「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」にも合致する多様な展開が想定される。このように、SDGsで定められた未来像の実現のためのニーズを探して行くと、ありとあらゆるSDGsビジネス展開の可能性が考えられる。

しかしながら、17の目標と169ものターゲットで構成されるSDGsを理解し、SDGsのどの目標が自社の目標や事業とどのように関連付けられるかを、その枠組みの中で再構成することは容易ではないだろう。

図表1 SDGs目標の構成
図1

これまでの日本企業の動き

それでは、SDGsが採択されて以降の日本企業の取り組みの現状はどうであろうか。CSRを超えた企業の本業(価値創造・新事業創出)として、SDGsの企業活動への取り込みを促す動きが高まっていることは前稿で言及したところである。外務省のSDGsのホームページには、国内企業の具体的な取り組み事例が各社の関連ホームページへのリンクとともに紹介されている(*1)。各社の取り組みを概観すると、多くの企業が、自社の事業や、製造・販売する製品と関連するSDGs目標を紐付けている。

日本企業によるSDGsへの取り組みについて、目標1~17のどの目標に沿った活動を実施しているのかを図表2に示す(2018年8月現在)。

最も多かったのは、目標12「つくる責任つかう責任」への取り組みで、持続可能なサプライチェーンへの注目がメーカーを中心に高かった。3番目に多い目標13「気候変動に具体的な対策を」も、気候変動をはじめとする環境問題への関心の高さが現れているといえよう。

目標8「働きがいも経済成長も」(第2位)、および目標5「ジェンダー平等を実現しよう」(第4位)を挙げた企業も多かったが、これは、昨今のワークライフバランスや女性にとって働きやすい環境づくりという面から社員の働き方改革を行っている企業による取り組みの事例がほとんどであった。

このように、各企業の取り組み事例を概観すると、既存の事業をSDGsの枠組みの中で言い換えた現状の延長という印象が強く、SDGsを新たなビジネスチャンスと捉え、SDGsに資するビジネスデザインまで実施している企業は少ない印象である。

図表2 日本企業によるSDGs取り組み件数
図2

(出所)外務省HPよりみずほ情報総研作成

今後のSDGsを巡る動き

企業内部においても、SDGsそのものをどの部署で管轄するのか、また、社員にどのように周知徹底させるかも課題である。CSRと同様に、SDGsを「コスト」と捉える風潮があるが、前述したとおり、SDGsはさまざまなマーケットで新たな事業機会を生み出す「ビジネスチャンス」である。したがって、CSR担当部署だけでなく、各事業部もまたSDGsを理解し、事業実施や新規事業立ち上げに取り込んで行く必要がある。

品質を重視し、決定後の確実な事業遂行、現地コミュニティを重視した投資インパクトの大きさが日本企業の美点であり、こうした日本企業の精神はSDGsが目指す未来との親和性が高い。SDGsビジネスへの参入を促進するためには、自社の理念・戦略や既存事業のSDGsへの取り込みのみならず、新規事業立ち上げの段階において、SDGsを達成することを念頭にプロジェクトを設計するべきであろう。

SDGsの目標から想定される課題、それに対するソリューションとなる製品・サービスは何かを洗い出し、SDGsビジネスのコンセプトを策定する。そして、コンセプトに基づくSDGsビジネスモデルを検討することで、日本企業が世界でビジネスチャンスを見出し、世界規模の課題解決に貢献することが可能となるだろう。

  1. *1JAPAN SDGs Action Platform:取組事例(外務省)https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/sdgs/case/org1.html

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