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今後小売業に必要なデジタル技術はどちらか?

画像認識(Computer Vision)vs 電子タグ(RFID)

2019年2月27日 経営・ITコンサルティング部 紀伊 智顕

2016年12月にAmazon Goのベータ版店舗が開店して以来、筆者は多くの小売業の方から、無人レジ実現に要する投資コストについて聞かれる。それは、「個々の商品に電子タグを貼り付けてアンテナ・リーダを装備したレジに入れ替えるよりも、天井にカメラを設置する画像認識のほうがコストが抑えられるのではないか」という質問である。

この、画像認識(Computer Vision)がよいのか、電子タグ(RFID)がよいのかという問いについて考えるにあたり、これらのデジタル技術は、現在小売業でどのように使われているのか見てみよう。

Amazon Goは、画像認識と各種センサー、ディープラーニングを組み合わせることにより小売業での大きな課題であるレジ待ちをなくし、快適な買い物体験を実現している。買い物客は、入店時にAmazon Goアプリを立ち上げて個人IDをQRコードで表示し、それをゲートでスキャンして入店すると、店内のカメラやセンサーにより、どの棚の前でどの商品を手に取ったかが把握され、ゲートを出た時点で自動決済が完了し、数分後に自分のスマートフォンでレシートを受け取ることができる。2018年1月にシアトルの1号店が一般向けに営業を開始し、現在ではシアトルとシカゴに各4店舗、サンフランシスコに2店舗、計10店舗を展開している(2019年2月現在)。報道によると、米Amazonは、2021年までに3000店のオープンを計画しているという*1

図1

  • *Amazon Go 300 California St店

一方、電子タグの導入が最も進んでいるのはアパレル分野であり、ユニクロは2018年春夏商品から全ての商品に貼付を進めている。同業のZARAやH&Mも年間数億超の商品に電子タグを貼付、入出荷検品や在庫管理、防犯などの活用を始めた。また、今年1月に筆者がサンフランシスコにあるメイシーズのユニオンスクエア店を訪問したところ、アパレル、寝装寝具・タオル、カバン・スーツケースは全品、調理器具もかなりのアイテムに電子タグが貼付され、全ての出入り口に防犯ゲートが設置されていた。報道によれば、同社は2016年1月にオムニチャネル戦略「Pick to the last Unit(P2LU)」を発表、電子タグを用いて店舗在庫の最後の1点までオンライン販売にリストアップできる正確な在庫把握ができるようになった。さらに、2018年末までに全ての商品に電子タグを貼付すると宣言しており、アパレル以外の商品でも着実に電子タグの活用を進めている*2

図2

  • *メイシーズ ユニオンスクエア店

この2つの事例からわかるように、画像認識と電子タグにはレジの無人化など一部利用領域が重なるところがあるものの、基本的にはそれぞれ特徴を活かして使い分けられていくと考えている。


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小売業における画像認識と電子タグ活用の特徴
  画像認識(Computer Vision) 電子タグ(RFID)
活用領域
  • 主にレジの無人化、マーケティング
  • 主に省力化、トレーサビリティ
  • レジ無人化も可能だが現状精度に難あり
メリット
  • 導入・運用コストが安い
    (スタートアップ技術を活用する場合。Amazon Goは1店舗100万ドル超)
  • 個品識別によるトレーサビリティが可能
  • 物流シーンでの一括読み取りが可能
デメリット
  • 個品識別が不可能
  • アパレル等不定形(ハンガー・畳み等)かつ種類(色・サイズ等)が多い商品は学習データ作成および店頭での商品識別が困難
  • 投資コスト(メーカーにおけるソースタギング設備、店舗のレジ入れ替え、アンテナ・リーダ設置)、運用コスト(電子タグ費用)が高い

今後も買い物体験の向上や省力化を目的としたリアル店舗へのデジタル技術導入は加速するだろう。

まず、画像認識だが、Amazon Goの店舗数が増えても取り扱いアイテムや更新頻度は少ないため、既存小売業に与える影響はEC(電子商取引)よりは限定される。また、普及品のカメラやセンサーを用いて数を減らすことにより、Amazon Goより導入コストを抑えて展開するスタートアップも多数登場してきた。しかしながら、現状の技術では同時に処理可能な人数が少ないため、ここ数年間は、オフィスや工場内、ガソリンスタンド、空港などで、商品数が限定されたミニ店舗のような顧客数が限定されたシーンでの導入が中心となると想定される。

また、電子タグも、製造コスト1円以下かつ現状のシリコンチップベースと同等の性能を持つ画期的なプリンテッドタグ等が登場するまでは、極小サイズの菓子類など10円レベルの価格帯への貼付は困難であり、当面はアパレルや寝装寝具、化粧品など1,000円超の価格帯かつ防犯対策が必要な商品など、個品レベルへの導入は限定的にならざるを得ない。 一方、ダンボールやカゴ台車など物流資材への貼付は進んでいる。工場や倉庫でのピッキング時に、商品種類や個数と紐付けることにより入出荷検品や在庫管理が容易になるなど、省力化対応が待ったなしとなっている物流シーンでの利用は加速するだろう。

こうしたデジタル技術の活用が、競合との店舗の魅力や物流を含めた運営コストに大きな差をつけることになる。そして、多くの小売業は革新的な取り組みを傍観しているだけでは済まなくなっており、実証実験を行うなど実装に向けて果敢にチャレンジしていくことが不可欠となるだろう。

  1. *1Amazon Will Consider Opening Up to 3,000 Cashierless Stores by 2021(Bloomberg,2018.9.20)
  2. *2Is The 'RFID Retail Revolution' Finally Here? A Macy's Case Study(Forbes,2017.5.15)

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