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介護職種における技能実習生の受入れ事例から

コロナ禍に学ぶ、円滑な外国人材受入れのポイント

2020年12月16日 社会政策コンサルティング部 杉田 裕子

コロナで停滞した介護技能実習生の受入れ

新型コロナウイルス感染症の流行による入国制限の影響で、外国人労働者の受入れは長らく停滞状態にあったが、レジデンストラック*1を利用した人の往来が徐々に始まりつつある。慢性的な人材不足に悩む介護の現場は、期待していた外国人労働者が入国せず、厳しい環境を痛感したであろう。入国が開始されたとはいえ未だウイルスの収束は見通せず、先行き不透明な状況が続いている。状況が落ち着くまで、外国人受入れを見合わせようと考える事業者も少なくないかもしれない。

外国人介護人材の受入れについては、「EPA(経済連携協定)」「在留資格『介護』」「技能実習」「特定技能」の4つの制度があり、それぞれに異なる目的・趣旨の下で運用されているが、なかでも近年急速に拡大しているのが技能実習制度による受入れである。公表データによると、介護職種における技能実習1号(実習1年目)の認定数は2018年度の1,823件*2から2019年度は7,363件*3へと、大幅に増加している。

とはいえ上述の事情から、2019年度に計画認定を受けた7,363人のなかには入国できずに自国で実習開始を待つ者が多く存在する。待機期間中の技能実習候補者は、自国で仕事に就かない限り収入を得ることができない。コロナ禍により入国の見通しが立たないことで、「日本に行くのをやめよう」と判断するケースもあるかもしれない。

ミャンマー技能実習候補者の強い意志を支える支援

この点に関し、ミャンマーで介護人材育成と日本への送出しに取り組むさくらCSホールディングス株式会社の代表取締役 中元秀昭氏、同社グループのミャンマー送出し機関Polestar Services Co.,Ltd(ポールスター・サービス)の代表 Aung Lin Htin氏との意見交換の機会を得た。そこには、ミャンマー人技能実習生Aさん(20代女性、日本への入国を翌日に控えていた)も参加してくださり、入国待機期間中の状況や思いについて、話を伺うことができた。以下に、その一部を紹介する。

Aさんは、今年3月に日本での実習開始を予定していたが、入国制限により自国で待機することになった。待機期間中は、ミャンマーもロックダウン状態であったため、オンラインで日本語学習を継続したという。並行して介護の専門用語も学び、入職後の円滑な定着と技能習得に備えた。結果、3月時点では日本語能力試験N4の合格者として入国予定であったところ*4、半年間の学習を経てN3レベルでの実習開始となった。待機期間中に不安な気持ちになったことはあったかと尋ねると、「絶対に介護の技能を習得したいという気持ちがあった」「いつか必ず日本に行けると信じていた」と、希望に満ちた眼差しで語ってくれた。

対話を進めていくと、Aさんの強い意志の裏にはポールスター・サービスの手厚い支援があったことに気づかされる。入国延期を受け、同社では技能実習候補者に学習用テキストを提供し、日次の連絡・報告を行いながら能力向上とモチベーション維持を図った。増えた学習時間を活用して、日本での生活に関する留意点やマナー等、より具体的かつ実用的な情報を提供する機会も確保したそうだ。また、「日本の介護施設は清潔」「介護施設だからこそ、感染症対策を徹底している」と説明し、候補者本人やその家族の安心確保にも努めた。待機期間中の指導コストは、送出し機関側の負担となる。さらに同社では、稼ぎが必要で仕事に就いた技能実習候補者向けに夜間の学習指導等の支援も実施しており、送出し機関にとってもコロナの影響は甚大であったと推察される。しかし、こうした丁寧なサポートにより、コロナ禍を理由に入国を中止した技能実習生はほとんどいないという。

外国人材を受け入れる事業所に必要な「支援機関との連携」の姿勢

人々の往来や関わりが制限されるコロナ禍で浮き彫りになったのが、受入れ事業所と外国人材の間に立つ支援機関の重要性ではないかと思う。技能実習生の受入れにおいてこれに該当するのが、アジア諸国で人材の選抜と教育を行う送出し機関、そして国内で人材の取次ぎと入国手続き、実習中の監査等を行う監理団体である。

送出し機関は、技能実習候補者の学習支援を通じて、モチベーション維持や家族へのフォローを担う。入国・就業開始後は、「母国の先生」として相談相手にもなる。また、監理団体は入国前から技能実習生と受入れ事業所の間に立って、双方の困りごと・悩みや質問に対応したり、両者のコミュニケーションをサポートしたりしている*5。技能実習生の円滑な入職・職場定着に向けては、これら支援機関を単なる「送出し」「監理」の担当組織としてではなく、メンタル面のサポートも含めた協働相手として受け止める必要がある。そして、受入れ事業所・監理団体・送出し機関のそれぞれが各自の責任と役割を全うし、技能実習生の活躍を支える体制を築くことで、わが国における外国人材活用は、一層推進力と有効性を増すと考えられる。

  1. *1日本への入国/再入国/帰国の際に利用可能なスキームの一つ。本件措置により例外的に相手国又は本邦への入国が認められるものの、相手国又は本邦入国後の14日間の自宅等待機は維持される。
  2. *2外国人技能実習機構「平成30年度外国人技能実習機構業務統計」
  3. *3外国人技能実習機構「令和元年度外国人技能実習機構業務統計」
  4. *4介護職種における固有要件として、第1号技能実習は「日本語能力試験のN4に合格している者その他これと同等以上の能力を有すると認められる者であること」が定められている。
  5. *5弊社が実施した「外国人介護人材の受入れの実態等に関する調査研究事業」(令和元年度老人保健健康増進等事業)(PDF:7,970KB)のヒアリングでは、送出し機関・監理団体からのこうした支援に関する話が複数の事業者から聞かれた。

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