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サービス開発が盛り上がる時代に突入

5Gのキラーサービス

2021年1月29日 経営・ITコンサルティング部 西脇 雅裕

5Gを活用したキラーサービスが不在

2020年3月より、大手通信キャリアが5Gの商用サービスを開始したことを受け、2020年はわが国の「5G元年」とも呼ばれている。5Gは、現在の携帯電話と比較して、高速・大容量、低遅延、同時多数接続という3つの特徴を有し、今後、それらの特徴を活かしたサービスの実現が期待されている。たとえば、超高速・大容量では2時間の映画を最速3秒でダウンロードできる、超低遅延では遠隔地にあるロボットや自動車、ドローン等をほぼ遅延なく遠隔操作でできる、多数同時接続では多数のセンサデータを収集することでスマートホームやスマートシティを実現できるといった、5Gを活用した将来の生活や社会の姿が想像されている。

一方、5Gの商用化から1年が経過しようとしている現在、5Gを利用したことがまだなく、また、様子見している読者も多いのではないだろうか。その理由は大きく3点あり、5Gが普及していくためにクリアすべき課題ともいえる。1点目は、現在5Gが利用できるエリアは都心部などに限定され、さらに特定の地区にスポット的に整備されているため、5Gを体感できる機会が少ないという点である。2点目は、5Gの特徴を実感できない点である。現在の5Gは、既存の4Gのコアネットワークを基盤として動作するNSA(Non Stand Alone)方式であり、4Gの特性を引き継ぐことから、高速・大容量という飛躍的な性能の向上を実感しにくい。また、5Gのコアネットワークを基盤として動作するSA(Stand Alone)方式の整備は数年を要し、それまでは低遅延や同時多数接続という5Gの特徴を具体的に実感することができない。3点目は、5G活用サービスの開発は道半ばであり、さらに5Gの利活用が進むきっかけとなる“キラーサービス”が存在していないため、5Gを身近に感じることができない点にある。

1点目や2点目の課題は、通信キャリアによる5G基地局の整備を通して、数年という時間軸で、時間の経過とともに解決されていく問題である。一方、キラーサービスの不在という3点目の課題は、一筋縄に解決できる問題ではない。5Gはあくまでも通信基盤であるため5G単体では効果を発揮しにくく、その通信特性を活用したサービスがなければ、5Gの利用率は高まらない。現在、さまざまな組織が試行錯誤しながら5Gを活用したサービスを検討し、キラーサービスを暗中模索している状況にある。

5Gキラーサービスの萌芽

5Gのキラーサービスは何になるのか。実はまだその明確な解はない。しかし、通信キャリアと、5Gの利用を希望するユーザー企業はともに、さまざまな実証実験やサービス開発等の取り組みを各所で進めており、キラーサービスの芽は出始めている状況にある。

国内の取り組みを俯瞰すると、5G活用サービスは、下図のように整理できる。この図の中から、キラーサービスが生まれる可能性がある。縦軸は時間軸を示しており、5Gの特徴のうち、高速・大容量のみで発揮される「短期的」な視点と、3つの特徴が全て発揮される「中長期」の時間軸の中で、活用される5G活用サービスを整理している。横軸は、生活や産業、社会を支える観点として、「快適・便利」と「安全・安心」という、5G活用サービスによって生まれる効果の視点から整理している。

短期的には、Web会議やオンラインゲーム、動画や映像の視聴というエンターテイメント目的など、快適・便利の向上を企図した個人向けのサービスが広く普及すると考えられる。初期の5Gは、3つの特徴のうち、高速・大容量のみが実現される。一方、一世代前の4Gの時代は、スマートフォンやタブレット端末を介して、容量のある映像を、4G回線を通して視聴することが広く普及した。そのため、4Gから、高速・大容量の特徴のみを有する5Gに移行する段階では、4Gのサービスを高度化するサービスが普及していくものと予想される。

一方、中長期的には、4Gの時代には見られなかった新しいサービスが出現し、さらにその対象は、個人の快適・便利だけでなく、個人や産業、社会の安全・安心につながると考えられる。将来的には、低遅延や同時多接続という5Gの特徴が発揮され、ネットワークの信頼性が一層向上する。その特徴を活かしたサービスとして、遠隔操作や自動運転などのサービスが実社会の中で実装されていくであろう。


5Gのキラーサービスとなりうるサービス例
図1

出所:各種情報をもとにみずほ情報総研作成


サービス開発が盛り上がる時代へ

5Gのキラーサービスが何になるのかはまだわからないが、現在、5G活用サービスの開発や実装が各所で進められており、今後、その取り組みが一層活発化していくことが予想される。また、5Gのもう一つの特徴としてビジネスモデルの構築が挙げられ、従来のように、組織単独でサービスの検討や開発を進めるのではなく、目的を共有する組織同士が手を組み、お互いの強みやアイデアを共有しながら、新たなサービスを検討し、開発を行う事例も増えている。たとえば、高速・大容量や低遅延という5Gの通信の特性が求められる自動運転車の開発を加速するため、今まで自動車業界に深く関与していなかった通信会社とモビリティ企業が連携するような事例も増えてきている。こうした異業種連携等を通じて、今後数年の間に新たな5G活用サービスが数多く生まれ、それにより5Gの利活用が進むきっかけとなるキラーサービスが誕生するものと考えられる。

一方、3Gや4Gのキラーサービスは、普及当初は、携帯端末によるネット利用や動画視聴であったが、近年は、マルチメディアサービスとしてWeb会議がキラーサービスの1つとして躍り出た。このように、今まで日の目を浴びていなかったサービスが、時代やニーズの変化によって、一気にキラーサービスへと花開く可能性も十分にある。さらに、キラーサービスとともに、スマートフォンに代わる新たなキラーデバイスも生まれるだろう。

2020年に5Gが商用化され、今後、5Gを利用できる環境の整備は一気に進む。2021年は次のステップとして、5Gという基盤を活かしたサービスを創造し、実装する時代だ。この時代においては、キラーサービスの芽となる5G活用サービスのアイデアを検討し、開発していくことが肝要になり、今からでも遅くない。5G活用サービスやキラーサービスが生まれ、より快適・便利で安全・安心な社会が形成されていくことに期待したい。

西脇 雅裕(にしわき まさひろ)
みずほ情報総研 経営・ITコンサルティング部 コンサルタント

社会基盤(通信、建設テック、スマートシティ)、モビリティ(CASE、自動運転、MaaS)、デジタル(人間拡張技術、アバターロボット、AI、IoT)領域に関する調査研究・コンサルティングに従事。ICTインフラやITサービスの国際展開に向けた技術・市場動向調査、政策立案支援等にも携わる。

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