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産業洗浄における経済的に実行可能な最良利用可能技術(EVABAT)の評価システム(1/3)

  • *本稿は、『潤滑経済』 2011年7月号 (発行:潤滑通信社発行)に掲載された執筆記事の改訂原稿です。

みずほ情報総研 環境エネルギー第1部 シニアコンサルタント 和田 宇生

はじめに

産業洗浄は、金属を主体とする各種素材の加工、組立、仕上げの工程に汎用的に利用されている。これらの工程で使われる洗浄剤は溶剤系のものが大半を占めるが、これら溶剤系洗浄剤は揮発する性質をもつので、大気排出の抑制対策が必要となる。

本稿では、産業洗浄で使われる洗浄剤について、大気排出の実態およびその対策を概説するとともに、事業者の排出抑制対策の選定を支援するためのパソコン用ソフト「EVABATシステム」の概要を紹介する。

1. 洗浄剤の使用・排出実態

表 1に工業用途で使われる洗浄剤の国内出荷量を示す。洗浄剤の種類としては、塩素系、アルコール系、炭化水素系といった溶剤系が大半を占めている。また用途としては、鉱物系加工油、油汚れ・シミなどの脱脂用に使われることが多い。

これらの溶剤系洗浄剤の主成分は、揮発性有機化合物(VOC)である。工業用洗浄剤の使用を発生源とするVOCの大気排出量の推定値を表2および表3に示す。平成21年度の排出量の合計は43千トン/年である。洗浄剤別に見ると、塩素系(塩化メチレン、トリクロロエチレン)が5割、アルコール系が2割を占めている。

また業種別に見ると、金属製品製造業が2~3割を占めている。金属製品製造業は排出量が多いだけでなく、経年での排出削減率も低いレベルに留まっている。

洗浄剤と業種の組み合わせとしては、塩素系の洗浄剤の使用が多いのは金属製品製造業とされている。具体的には、金属製の製品や部品の脱脂工程などが多いと考えられる。このような洗浄を実施している事業者の大半は中小規模であることから、これら中小規模の事業者における排出抑制対策の更なる促進が重要であると考えられる。


表1 工業用途で使われる洗浄剤の国内出荷量(トン/年)[平成19年度実績]
表1

  • *ここでの「出荷量」とは、洗浄剤メーカー・販売業者が工業用洗浄剤として国内に販売・出荷した量のことである。ダブルカウントを防ぐために、同業者等からの仕入れ、委託生産分は除外した集計値である。

(出典:参考文献2)


表2 工業用洗浄剤に起因するVOCの大気への推定排出量(洗浄剤別)

左右スクロールで表全体を閲覧できます

種類 物質名 平成12年度
(トン/年)
平成21年度
(トン/年)
塩素系 ジクロロメタン 38,095 10,535
トリクロロエチレン 23,827 9,978
テトラクロロエチレン 5,145 2,038
上記以外 212 10
炭化水素系 n-パラフィン系 2,079 3,622
i-パラフィン系 736 1,698
ナフテン系 111 137
上記以外 4,122 3,100
フッ素系 HFC系 765 459
上記以外 52 362
アルコール系 イソプロピルアルコール 2,713 7,396
上記以外 944 2,768
準水系 ジエチレングリコールモノエチルエーテル 4 9
ジエチレングリコールモノブチルエーテル 4 9
N-メチル-2-ピロリドン 8 0.05
臭素系 N-ブロモプロパン 998 1,346
その他 特定できない物質 3,723 0

(出典:参考文献3)


表3 工業用洗浄剤に起因するVOCの大気への推定排出量(業種別)

左右スクロールで表全体を閲覧できます

業種 平成12年度
(トン/年)
平成21年度
(トン/年)
削減率(%)
木材・木製品製造業(家具を除く) 2,732 1,709 37
プラスチック製品製造業 6,800 2,633 61
ゴム製品製造業 1,415 398 72
窯業・土石製品製造業 1,441 474 67
鉄鋼業 4,684 1,100 77
非鉄金属製造業 4,149 1,879 55
金属製品製造業 20,106 10,962 45
一般機械器具製造業 4,134 2,073 50
電気機械器具製造業 2,353 548 77
情報通信機械器具製造業 2,381 625 74
電子部品・デバイス製造業 7,382 5,109 31
輸送用機械器具製造業 15,111 3,918 74
精密機械器具製造業 6,631 9,998 -51
その他の製造業 4,218 2,039 52
合計 83,538 43,466 48

(出典:参考文献3)

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