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西部に豊かな再生エネ資源 政局次第で導入拡大に陰りも

[連載]世界新エネルギー地図 第20回:米国(2)

  • *本稿は、『日経エコロジー』 2012年6月号 (発行:日経BP社)に掲載されたものを、同編集部の承諾のもと掲載しております。

みずほ情報総研 環境エネルギー第2部 次長 冨田 哲也

正式名称:アメリカ合衆国
首都:ワシントンD.C. 名目GDP:14兆5,265億ドル
人口:3億1,168万人 面積:982万6,537平方キロメートル

前回取り上げた風力発電と同様、太陽光発電でも導入拡大の勢いが増している。2011年には185万5,000kWの発電設備を新設。同時期に900万kWを導入したイタリアや750万kWのドイツに比べると見劣りするが、3位の中国に次ぐ世界4位である。日本の導入量も増加傾向が続くが、2011年に110万kW程度で、米国が上回る。

最近は大規模発電事業用の太陽光発電設備が各地に建設され、2011年末の累積導入量は446万kWに達した。カリフォルニア州に建設中のデザート・サンライト・ソーラー・ファームや、トパーズ・ソーラー・ファームと呼ばれるプロジェクトは、いずれも55万kWの大規模事業で、日本のメガソーラーとはケタ違いだ。

カリフォルニア州で大規模事業が進むのは、日照条件に恵まれ、大規模事業の適地があることが理由に挙げられる。ただ、州政府が長年、再生可能エネルギーの普及を推進してきたという点も大きい。

州政府は早くから再生可能エネルギー発電を義務づけるRPS制度を導入。州内の電力供給に占める再生可能エネルギーの比率を高めてきた。現在の目標も、2020年に33%にするという野心的な内容だ。

同州では、太陽熱発電の導入も進む。1980年代中ごろ、「SEGS」と呼ぶ太陽熱発電所が世界に先駆けて運転を始め、後に規模を拡張して現在は35万4,000kWの発電所として運転中だ。

今年3月26日時点で、米国で稼働している太陽熱発電は合計で51万4,000kW。建設中の設備はこれより多い。また、太陽電池を使う集光式発電所の建設計画もあり、熱と太陽電池を合わせた集光式発電設備で建設段階にあるものが134万9,000kWに達している。

●米国の太陽光発電設備導入量(単年)

グラフ

(注)系統連携した設備のみ。独立型は除いている
出所:米国太陽エネルギー産業協会(SEIA)


地熱発電所の設備容量でも、米国は世界最大だ。2011年4月時点で310万kWに到達している。地熱発電所もカリフォルニア州に集中し、サンフランシスコ北部、ワインの産地として知られるソノマ郡周辺には「ガイザーズ」と呼ぶ地熱発電所の一大集積地がある。

この地では60年に発電が始まり、これまでに22基が立地。なかには70年代初頭に建設した発電所も残るが、現在も地域の主力電源として機能している。蒸気生産量が減ったことから定格の発電能力では運転できないが、蒸気が枯渇した地点に注水して蒸気生産量を維持するなど、工夫されている。

地熱発電所はアラスカ州やハワイ州、アイダホ州、ネバダ州、ニューメキシコ州、オレゴン州、ユタ州、ワイオミング州でも稼働している。今後は、ほかの州でも新設が見込めそうだ。

ガソリンに10%程度混ぜて使うバイオエタノールの生産拡大も目覚ましい。ブラジルが原料にサトウキビを使うのに対し、米国はトウモロコシを使う。「コーンベルト」と呼ぶ中西部の一大生産地域にはプラントが多く立地する。アイオワ州とネブラスカ州、イリノイ州、ミネソタ州、インディアナ州、サウスダコタ州の生産量は国内生産量の約3分の2に相当する。

ガソリン価格の高騰や優遇策を背景に、ここ10年程度で飛躍的に生産量が増加。2005年にはブラジルを上回り世界1位になったが、その後も大幅な生産増が続く。2011年の生産量は139億ガロンで、ブラジルの2.5倍の規模だ。

ところが、それだけ生産しても石油消費量の数%程度にも及ばない。最近はエタノール需要が頭打ちになり、プラントの新設も停滞。生産量を再び拡大するには、食料を原料にしない次世代燃料の実用化や、ガソリン混合率を15%に引き上げるなどの措置が必要だ。

●米国のエタノール燃料生産量

グラフ2

出所:米国再生可能燃料協会(RFA)


拡大が見込まれる再生可能エネルギーだが、海外メーカーと米国メーカー間の価格競争の激化や、ギリシャに端を発する欧州経済危機を背景に企業の事業環境は悪化している。政府から債務保証を受けていたソリンドラなど、太陽電池メーカーの破産が相次ぐ。今年4月にはカリフォルニア州で100万kWの太陽熱発電を建設していた企業が破産申請に至った。

雇用拡大策として再生可能エネルギーの導入支援を展開したオバマ政権であるが、支援の継続は政策論争の火種になっている。再選できなければ、支援策の打ち切りで導入が減速する可能性もある。

あるメーカーは、「政府が再生可能エネルギー発電事業者に対する税控除(PTC)制度を廃止すれば、大胆なレイオフに踏み込まざるを得ない」とみている。再エネ大国の座を維持できるか、現政権の存続にかかっている。

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