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化石資源に大きく依存 再エネ推進国へ脱皮図る

[連載]世界新エネルギー地図 第24回:アラブ首長国連邦

  • *本稿は、『日経エコロジー』 2012年10月号 (発行:日経BP社)に掲載されたものを、同編集部の承諾のもと掲載しております。

みずほ情報総研 環境エネルギー第2部 次長 冨田 哲也

名目GDP:2976億4800万ドル 面積:8万3600平方キロメートル
人口:826万人 首都:アブダビ

アブダビやドバイなどの首長国から構成されるアラブ首長国連邦(UAE)は、OPEC(石油輸出国機構)の主要な加盟国で、豊富な石油資源の輸出国の1つとして知られている。

日本にとっては、サウジアラビアに次ぐ原油の供給国である。天然ガスについても、東京電力が同国との長期契約に基づいて輸入していることから、首都圏の電力供給には欠かせない存在だ。

国内向け供給に課題

石油の生産量はやや増加傾向にある。2011年には日量332万バレルを生産し、世界の石油生産国におけるシェアは3.8%だった。国内で生産する石油は、貴重な外貨獲得の手段である。産出量の大半は輸出向けに回され、国内におけるエネルギー需要の8割以上が、天然ガスで賄われている。

2008年に起きたリーマン・ショックによる影響は見られたものの、近年の経済成長は著しく、エネルギーの供給量も大幅に増えている。2009年における1次エネルギーの供給量は、石油換算で約6000万トンまで増加した。人口1人当たりでは、日本の約2倍にもなる水準だ。

もともと石油産業など、エネルギー多消費の産業が多いうえ、経済成長や人口の急増を背景に、電力需要が大幅に増加している。そのため、産油国でありながら、国内向けのエネルギーを安定的に確保することが、重要な課題になっている。天然ガスは消費の大半を国内で賄っているが、国産のみでは不足する事態になっている。2007年からは、パイプラインを通じて隣国カタールから輸入している。

急激に進んだ都市化や人口増は、特に夏場の冷房や淡水化によるピーク需要の増加をいっそう加速させた。ドバイでは、夏場の需要増に対応するため、LNG(液化天然ガス)の輸入を始めている。

また、UAEとイランに挟まれる原油輸送の要衝であるホルムズ海峡の封鎖などといった万が一の事態に備えて、ペルシャ湾の外側に位置するフジャイラにも、新たにLNGを輸入する基地を建設する計画が持ち上がっている。

このフジャイラには、海軍基地や新たな原油の輸出基地も整備されており、エネルギー輸出入の安全確保が急ピッチで進められている。

再エネの利用はほとんどゼロに近い
■UAEの1次エネルギー供給量

グラフ
6000万石油換算トン(2009年)

出所:国際エネルギー機関(IEA)統計を基に作成
注:廃棄物発電にはすべての廃棄物が含まれる

原発の新設事業にも着手

発電は、現時点ではそのほとんどを天然ガス火力発電に頼っており、原子力発電は無い。しかし、同国政府は今後の原子力発電の導入に積極的で、この7月には政府の原子力規制委員会が、原子力公社に原子炉2基の建設を承認した。

日本やフランスの企業群も加わって受注を争ったが、結局、韓国電力公社を中心にする韓国企業によるコンソーシアムが受注。2017年に第1号機が運転を始める予定となっている。将来は、140万kWの原発を4基導入する予定だ。電源の多様化を進め、天然ガスへの依存度低下を目標としている。

再生可能エネルギーについては、これまでほとんど利用されていなかった。ところが、電力需要の増加に対応するため、積極的に利用する方針に変わっている。

根底には、自国の経済を過度の石油依存体質から転換させようとの狙いがある。国内のエネルギー確保という目的だけではなく、再エネ産業を今後の自国の成長の芽としても捉えている。政府は国内外の再エネ事業や関連企業に対し、積極的に投資を進めている。

踊り場のマスダール計画

その中心が、2008年に立ち上がったマスダール計画である。太陽光発電や太陽熱発電、風力発電、水素発電、CCS(CO2回収貯留)といった低炭素型のエネルギー技術を核として、持続可能な社会の構築を進める経済開発プログラムだ。

アブダビは、2020年までに全エネルギー源の7%を再エネに転換する目標を掲げる。アブダビ市の近郊では、居住人口5万人程度の新たな都市、「マスダールシティ」の建設が始まった。

再エネの活用に加え、火力発電所で排出するCO2を回収することで、CO2を排出しない「ゼロエミッション」型の都市の実現を目指している。そのためにも、合弁企業の設立による太陽電池の生産事業や、再エネによる各地での発電事業、さらにはマスダール科学技術大学を通じた海外企業・研究機関との共同技術開発など、さまざまな事業が進められている。

2011年4月には、アブダビにおいて国際再生可能エネルギー機関(IRENA)の第1回総会が開催され、本部をアブダビに置くことが決まった。再エネ産業と技術開発の集積地を目指し、技術の活用や、利用拡大に国を挙げて取り組む姿勢を強調している。

とはいえ、マスダールシティは、壮大な計画であるため、その実現には克服すべき課題も多い。

当初の計画によると、2015年にも完成を予定していたが、既に遅れが生じている。CCSについては、石油メジャー(国際石油資本)のBPらの協力で、天然ガスから得られる水素を使った発電と、発生するCO2を回収する事業を予定していたが、具体的な事業開始には至らなかった。そのうえ、リーマン・ショックの影響から事業の財政面でも混乱が生じ、都市開発の計画そのものについても、見直しを余儀なくされているのが実情である。

一方で、マスダールは、100万kW規模の世界最大の洋上風力発電事業である、英国のロンドンアレイプロジェクトに20%出資し、具体的な成果も現れつつある。また、マスダールシティの実現に向けて、先進的な技術を積極的に取り組む姿勢には、日系企業を含め、世界の多くの企業が期待を寄せている。今後のプロジェクトの行方が注目される。

国内電力供給は天然ガス火力に依存
■総発電量の構成

グラフ2
9万573GWh(2009年)

出所:IEA統計を基に作成

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