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欧州における太陽電池モジュールリサイクルの動向

  • *本稿は、『産業と環境』 2012年3月号 (発行:株式会社産業と環境)に掲載されたものを、同編集部の承諾のもと掲載しております。

みずほ情報総研 環境・資源エネルギー部 河本 桂一

はじめに

太陽光発電システムは、発電用燃料を使用しないクリーンな技術であるが、環境保全や資源有効利用の観点からは、一定期間の使用を終えた後(耐用年数への到達、あるいは何らかに理由によって撤去される場合)も、そのまま廃棄処分をするのではなく、最大限、製品あるいは資源として有効利用することが望ましい。

太陽光発電システムの核となる太陽電池モジュールの耐用年数は20年とも30年とも言われ、現時点では使用後処理に対するニーズは少ないが、導入拡大初期(1990年代)から20年以上が経過する今後、大量の処理需要が発生する可能性がある。一方、耐用年数が長い製品であるが故、太陽電池モジュールは耐久性を高めるための強固な加工処理が施されており、資源としての有効利用を前提とした分解・リサイクルが非常に困難な構造となっている。

太陽光発電システムの導入は、新興国も含め世界的に大きく進展しているが、とりわけ欧州地域における導入拡大が著しい。欧州太陽光発電工業会(EPIA:European Photovoltaic IndustryAssociation)(1)によれば、2011年における世界の太陽光発電導入量(年間導入量)は27.7GW/年で、うちヨーロッパ諸国の導入量が約75%に相当する20.9GWであった(イタリア:9GW/年、ドイツ:7GW/年、フランス:1.5GW/年など。日本の導入量は1.1GW/年で、世界第6位と推定されている)。そして、2011年末までの累積導入量は世界全体で67.4GW、うちヨーロッパ諸国における導入量が50.3GWとされている(ドイツ:24.7GW、イタリア:12.5GW、スペイン:4.2GW、フランス:2.5GWなど。日本の累積導入量は4.7GW/年で世界第3位)。

本稿では、このように急速な市場拡大を遂げている欧州における太陽電池モジュールのリサイクルに関する動向を紹介する。欧州では、太陽電池モジュール製造企業等からなるPV CYCLEという機関が設立され、太陽電池モジュールを回収・処理する仕組みが世界に先駆け構築されているほか、個別企業による具体的な取り組みも始まっている。その一方で、欧州指令への対応にも直面している。

PV CYCLE

PV CYCLEは、2007年に設立された、欧州における太陽電池モジュールリサイクルを手がける機関(Association)である。欧州域内に太陽電池モジュールを供給する太陽電池メーカー、輸入業者および関連機関がメンバーとして参画しており、2012年1月時点において240の企業や機関がメンバーとなっている(2)

PV CYCLEは、太陽電池モジュールを回収する仕組みを自らが主体的に整え、運営しており、一連の活動費用(太陽電池モジュールの回収・処理、および機関運営)はメンバーからの賦課金によって成り立っている。しかし、回収した太陽電池モジュールを処理する技術やプラントを自ら所有しているわけではなく、回収モジュールの処理方法(処理委託先)はメンバーの合意によって選定される。

太陽電池モジュールの回収は、枚数が数十枚(30-40枚)以下(おおよそ住宅用太陽光発電システム1件分に相当)の場合は、欧州内に配置された回収拠点(Collectionpoint)に収集され、一定量が収集されると、リサイクル処理プラントに搬送される(図1)。回収枚数がそれ以上の場合は、撤去サイトから直接処理プラントに搬送される。Collection point は2012年1月時点で、欧州内12ヶ国に206箇所が配置され(3)、その大半は太陽電池メーカーや施工業者である。このCollectionpoint となる企業等は、PV CYCLEによる承認を受けている。

具体的な運用は2010年6月より開始され、2012年1月までに回収された太陽電池モジュールは2,058トンであった(3)。PV CYCLE設立当初は結晶Siの回収も可能なプラントでの処理が想定されていたが、現在はガラスリサイクルプラントでの処理を行っており(4)、回収されたガラスは資源として再利用(リサイクル)されている。

なお、PV CYCLEでは一定期間の使用を終えて撤去された太陽電池モジュールのほか、設置サイトで破損等が生じたモジュールも対象としているが、モジュール工場で発生する不良品は回収・処理の対象としていない。

一方、PV CYCLEを通じて回収された太陽電池モジュールの処理を手がけているガラスリサイクルプラントでは、個別企業から直接搬送されてくる太陽電池モジュールの処理にも対応しており、それらには工場等で発生する不良品も含まれていると考えられる。

図1 PV CYCLEによる太陽電池モジュール回収スキーム(4)
図表

個別企業による取り組み例

(1)SolarCycle

PV CYCLEでは当初、結晶Si太陽電池モジュールからのSi回収を前提としていた。その背景には、SolarWorldグループ(ドイツ)のDeutsche Solar(当時)が手掛けようとしていたSi回収技術があり、SolarWorldグループはPV CYCLE設立の立役者の一人でもあった。けれども、PV CYCLEによる運用開始に際し、太陽電池モジュールのリサイクル処理として、Si回収が可能なプラントではなく、相対的に低コストであるガラスリサイクルプラントでの処理が選択された。

このような中、2011年9月、SolarWorld グループでは、太陽電池モジュールのリサイクル処理を手がけるSolarCycle というベンチャー企業の設立を発表した(5)

SolarWorldグループには、グループ内企業で発生するSiウェハーやSiセルの不良品も含めたSiリサイクルを手掛けるSunicon があり、Deutsche Solar の技術を継承した太陽電池モジュールリサイクルのパイロットプラントも実証していたが、その技術を発展させ、太陽電池モジュールのリサイクル処理を目的とする別会社としてSolarCycle を立ち上げた。

SolarCycleでは、設置サイトから撤去されたモジュールに加え、モジュール工場で発生する不良品も処理対象とし、このようなモジュールの処理を必要とする企業等と相対の契約を締結し、ビジネスを展開していくこととしている。目下のところ、具体的な処理プラントは整備段階にあるが、2012年中には稼働の準備が整うとされている(6)

SolarCycleとPV CYCLEは異なるビジネスモデルであり、モジュール回収の面で競合する可能性はあるが、SolarCycleはPV CYCLEによって回収された太陽電池モジュールの処理委託先となることも視野に入れており、PV CYCLEとしても費用対効果の高いプラントでの処理を依頼する方針としている。なお、SolarCycleは、First Solar(次項参照)が既に処理技術を有していることもあり、CdTeの回収・処理は対象外としている。

(2)First Solar

First Solarは米国に本社を置く太陽電池モジュール製造企業で、CdTe太陽電池を生産している。米国、ドイツ、マレーシアで製造工場が稼動しており、2010年における生産量は1.4GW/年で世界第2位であった(7)

有害物質(Cd)を含む太陽電池を扱っていることから、創成期から太陽電池モジュールリサイクルに対する取り組みを続けてきており、現在は、太陽電池モジュールを製造する全ての工場にリサイクルプラントも配置している。リサイクル処理は、ガラスサンドイッチ構造の太陽電池モジュールを粉砕し、化学処理(溶液処理)によってCdを含む化合物とガラスを分離し、回収するものである。工場で発生する不良品は全てこのリサイクルプラントで処理されており、Cdも分離・回収されている。

一定期間の使用を終えたモジュールの処理も同様の技術による処理が可能とされており、回収・処理費用はモジュール価格に組み込まれ、基金として積み立てられている。また、設置サイトからの回収を確実に行うため、回収先(設置サイト)が確実に特定できる中規模以上のシステム向けの販売を基本としている。設置サイトにおいて回収のニーズが発生した場合には、同社website等を通じて回収のリクエストをすることができる仕組みとなっている。

欧州指令への対応

欧州では、電気・電子機器に係る特定有害物質の使用制限に関するRoHS(Restriction of the useof certain Hazardous Substancesin electrical and electronicequipment)指令、電気・電子機器廃棄物の回収とリサイクルに関するWEEE(Waste Electricaland Electronic Equipment)指令がある。

RoHS指令は、新たに市場投入される電気・電子機器に関して、鉛、水銀、カドミウム、六価クロム、ポリ臭化ビフェニール、ポリ臭化ジフェニルエーテルの使用を禁止するものであり、これらの物質の最大濃度許容値等は欧州委員会によって定められる。現時点で、太陽電池モジュールはRoHS指令の対象機器から除外されているが、今後の改正によって対象となる可能性はある。

一方、WEEE指令は、ほぼ全ての電気・電子機器廃棄物を対象に、各メーカーに自社製品の回収・リサイクル、およびそのためのコスト負担を課すもので、2003年2月に発効した。これまでのWEEE指令では太陽電池モジュールは対象製品に含まれておらず、「科学・技術の進歩に適応し、今後、追加することの可能性」という位置づけであった。しかしながら、2011年12月、WEEE指令改正案に対する合意がなされ、この改正に伴い、太陽電池モジュールが対象製品に含まれることになった。この改正WEEE指令は2012年6月(~9月)までに発効される見通しで、その後18ヶ月の間に各国において国内法等が整備され、本格的な施行が開始されることになる。

WEEE指令では、電気・電子機器の分類に応じた回収率、リサイクル(あるいはリユース)率が設定される。今回の改正に伴い、電子・電子機器の分類が10から6に変更され(表1)、太陽電池モジュールは「4. Large equipment(any external dimension >50cm)」として分類される。

この改正WEEEの分類「4.」には、太陽電池モジュールのほか、洗濯機、乾燥機、食器洗浄機、電気ストーブなどのいわゆる家電製品が含まれている。

WEEEにより課せられる回収率は廃棄物量の85%あるいは至近3年間の平均出荷量の65%、リサイクル率は80%である(いずれも重量%)(8)。回収率としていずれの指標を採用するかは各国が整備する国内法等によって定められる。この回収率の義務履行に対し、2015年までに廃棄物量の45%を回収、その後、2019年までに廃棄物量に対する85%あるいは出荷量に対する65%を回収、といった段階的措置が講じられるものと見られる。

前述のリサイクル技術により、80%というリサイクル率は可能と見られているが、回収率については、長期耐久性を有する太陽電池モジュールの特性を考慮した再定義(例えば、太陽電池モジュールと他の電気製品を区別すべき)などは議論の余地があると見られる。改正WEEEでは、各国が共通して採用することが可能な回収率測定方法を3年以内に提示することとしており、EPIAおよびPV CYCLEでは太陽光発電業界として対応、実施すべき具体的な方策に関する議論が行われている(9)。とりわけ、PV CYCLEは、これまでに構築してきた仕組みをWEEE指令の履行のために維持・運営していくこととなるため、極めて重要な局面に立たされている。

なお、現時点において、太陽電池モジュールのリユースに関する体系的な対応は実施されていない模様で、WEEE指令への対応は回収モジュールのリサイクルが前提となっている。

左右スクロールで表全体を閲覧できます

表1 WEEEの分類(8)より作成
現行WEEEの分類 改正WEEEによる分類
  1. Large household appliances
  2. Small household appliances
  3. IT and telecommunications equipment
  4. Consumer equipment and photovoltaic panels
  5. Lighting equipment
  6. Electrical and electronic tools
  7. Toys, leisure and sports equipment
  8. Medical devises
  9. Monitoring and control instruments
  10. Automatic dispensers
  1. Temperature exchange equipment
  2. Screens, monitors and equipment containing screens with surface > 100cm2
  3. Lamps
  4. Large equipment (any external dimension > 50cm)
  5. Small equipment
  6. Small IT and telecommunication equipment

まとめ

太陽光発電システムは、発電用燃料を使用しないクリーンな技術であるが、環境保全や資源有効利用の観点からは、一定期間の使用を終太陽光発電システムの普及拡大に伴い、将来的な廃棄量の増加が予想される。現時点ではニーズは少ないが、今後発生するニーズに備え、リサイクル・リユースに必要な処理技術や撤去後の回収、製品や資源として再利用する仕組みを予め準備しておく必要がある。

日本国内でも、太陽電池モジュールのリサイクルに対する技術開発がNEDOにより実施されてきており(10)-(11)、リユース事業を手がけている企業も既に存在する。また、国や業界団体(太陽光発電協会)による仕組みづくりの議論も進められている。

現在、NEDOにより実施されている太陽電池モジュールリサイクルの技術開発(「広域対象のPVシステム汎用リサイクル処理手法に関する研究開発」)は、財団法人北九州産業学術推進機構を中核機関とし、北九州市、昭和シェル石油株式会社、株式会社新菱、みずほ情報総研株式会社、北九州市立大学との連携によるもので、太陽光発電システムのリサイクルにおける低コスト化、共通処理化等を目的とした汎用リサイクル処理技術を確立するとともに、回収方法やリサイクル義務化、費用負担方法等を検討し、新たな社会システムの構築を国に対して提案することを目的としている(図2)。研究開発目標達成後には、太陽光発電システムメーカーを中心とした関連機関と、本格的なパイロットプラントを建設・運営する組織の設立、処理施設の安定稼動に必要なノウハウを蓄積し、普及型のビジネスモデルを構築し、全国・アジアへの普及を促進していくことを想定している。

中長期的かつ持続的な太陽光発電の導入普及のためには、各国・各地域に事情に応じた太陽光発電の適正処理の仕組みを構築していく必要がある。日本における取り組みは、欧州に比べて遅れをとっているが、先行している欧州の仕組みや経験を参照しつつ、現在実施されている技術開発や議論を進めていくことが重要である。

「クリーンな技術」であることを確固たるものとするためにも、太陽電池モジュールのリサイクル・リユースへの取り組みが着実に推進されていくことを期待したい。

図2 「広域対象のPVシステム汎用リサイクル処理手法に関する研究開発」における太陽電池モジュールの処理工程案(12)
図表

参考文献

  1. (1)European Photovoltaic Industry Association:Market Report 2011, January 2012
  2. (2)PV CYCLEプレスリリース
  3. (3)PVCYCLE Operational Status, January 2012
  4. (4)V. Gomez and J. Clyncke:PV CYCLE:the Sustainable Industry Solution for the End-of-Life PV Modules, 26th European Photovoltaic Solar Energy Conference and Exhibition, Hamburg, Germany, September 2011
  5. (5)SolarWorldプレスリリース
  6. (6)K. Wambach:PV Module Take Backand Recycling Systems in Europe, 21st International Photovoltaic Scienceand Engineering Conference, Fukuoka, December 2011
  7. (7)PV News, Vol.30, No.5, May 2011
  8. (8)European Parliament website
  9. (9)EPIA/PV CYCLEプレスリリース:PV industry ready to face newcha llengesposedby revised Directive on collection and recycling of electrical and electronic equipment
  10. (10)太陽光発電技術研究組合、シャープ株式会社、昭和シェル石油株式会社、旭硝子株式会社、独立行政法人産業技術総合研究所:太陽光発電システムのリサイクル・リユース処理技術等の研究開発、平成16~17年度新エネルギー・産業技術総合開発機構委託業務成果報告書(2006)
  11. (11)独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構:「太陽エネルギー技術研究開発」基本計画(2010)
  12. (12)北九州市・財団法人北九州産業学術推進機構:「広域対象のPVシステム汎用リサイクル処理手法に関する研究開発」報道発表資料(平成22年7月7日)

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