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肥料原料の輸入実態と円安(1/2)

  • *本稿は、『農業と経済』 2015年6月号(発行:昭和堂)に掲載されたものを、同編集部の承諾のもと掲載しております。

みずほ情報総研 コンサルティング業務部 大谷 智一

1.はじめに

平成20年肥料原料価格は世界の肥料需要の変動により大幅な高騰となり農家の農業経営に大きな不安材料となった。2015年4月現在、円相場は118円台と円安傾向にある。肥料価格は今後どのようになるのであろうか。平成22年度、平成23年度に農林水産省、商社とともに肥料原料の国際市場の調査や新規調達先探索を実施した際に得た知見から、考察したい。

2.肥料原料について

肥料は農業生産に必須の資材であり経営費に占める割合は作目にもよるが7~17%と大きな割合を占める。その最も重要な成分である肥料の三要素は、窒素(N)、りん酸(P)、加里(K)であり窒素(N)は葉の成長を促し、りん酸(P)は開花結実を、加里(K)は根の発育を促す。

主な肥料の種類としては表1のようなものが挙げられる。


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表1 主な肥料の種類
分類 主な肥料
化学肥料 窒素質肥料 尿素、硫安、塩安、石灰窒素
りん酸質肥料 過りん酸石灰、熔成りん肥
加里質肥料 塩化加里、硫酸加里
複合肥料 高度化成肥料、普通化成肥料、配合肥料
石灰質肥料 炭酸カルシウム肥料、消石灰
その他肥料 ケイ酸質肥料、苦土肥料
有機質肥料 堆肥 牛ふん堆肥、豚ふん堆肥、鶏ふん堆肥
動植物質肥料 魚粕粉末、菜種油粕、骨粉
有機副産物肥料 汚泥肥料

出典:農林水産省(平成27年)肥料をめぐる事情

3.肥料原料の輸入実態・国際市況

これらの肥料のうち、化学肥料の原料は、窒素(N)は化石燃料(原油、天然ガス)であり、りん酸(P)や加里(N)は鉱物資源(りん鉱石、加里鉱石等)であり輸入に依存している。したがって肥料価格はこれらの原料の国際市場における価格と輸送コストに影響される。特にりん鉱石や塩化加里についてはほぼ全量を輸入しているが、世界的に資源が偏在しており、りん鉱石は中国、ヨルダン、りん安はアメリカ、中国、塩化加里はカナダがといったように輸入相手国も偏在していることから、原料供給国の価格支配力が非常に大きい。

肥料原料の国際市況を見ると平成20年に原料供給の逼迫感を背景に高騰したものの、その後は価格が安定、平成22年秋頃から肥料需要の回復もあり再び穏やかに上昇基調であったが現在では横ばい傾向で安定している。図2には示されていない平成27年1月時点の傾向にも大きな変動は見られていない。

次にこれらの資源の枯渇状況について考えてみよう。原油で40年、りん鉱石で約300年、塩化加里で約370年であり毎年新たな資源が見つかっている状態であり、この点では問題ない。しかし、原料価格に影響を与える要素としてカナダ、ロシア等における塩化加里の生産者、輸出者の寡占化がある。寡占化が進むと供給量のコントロールによる価格支配力が高まる。例えば、塩化加里の最大供給国であるカナダは生産企業がPCS等の3社、輸出会社はCanpotexの1社であり、カナダへの輸入依存度が69%の日本としては大きな影響を受ける可能性がある。


図1 わが国の肥料原料の輸入相手国(平成26年)
図表1
出典:農林水産省(平成27年)肥料をめぐる事情


図2 肥料原料の国際市況及び肥料の小売価格の推移(指数)
図表1
出典:農林水産省(平成26年)肥料をめぐる事情

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