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金融分野におけるマイナンバーの取扱い

[連載]マイナンバーが企業活動・金融を変える 最終回(1/2)

  • *本稿は、『近代セールス』 2016年3月15日号(発行:近代セールス社)に掲載されたものを、同編集部の承諾のもと掲載しております。

みずほ情報総研 経営・ITコンサルティング部 上席課長 近藤 佳大


金融分野における個人番号・法人番号の取扱いは、番号の提供が法令で義務付けられているかどうかなどにより、4種類に分けることができるだろう(図表1)。まずは、この4種類の取扱いからみていく。

番号制度を活用することで非課税制度等の自由度が拡大

(1)告知義務等がある取引

最初の種類は、金融機関の顧客に、番号の告知義務等があるものである(図表1の区分A)。NISA(少額投資非課税制度)、特定口座等の口座を新規に開設する際には、顧客は金融機関に番号を告知する必要がある。

例えば、NISAの口座を新たに開設する場合、租税特別措置法第37条の14第7項において、「氏名、生年月日、住所及び個人番号を告知し、当該告知をした事項につき確認を受けなければならない」と定められている。

そして、その情報は、e-TAXを用いて金融機関から税務署に提出される。税務署では、重複した申請がないかどうか確認し、重複がない場合には「非課税適用確認書」を発行する。

金融機関から税務署に提出する住所については「都道府県名を省略してはならない」「都道府県、市町村、字等間にスペースや句読点等を記録しない」などのルールが定められている。こうしたルールは、重複した申請がないかどうかの確認を容易にするためだと考えられる。

個人番号があれば、同一人物から重複した申請があるかどうかを氏名・住所からではなく個人番号を用いて容易に確認することができるようになり、こうしたルールも不要となる。

実際、昨年12月24日に閣議決定された「平成28年度税制改正の大綱」においては、「国内の住所の記載及び当該住所を証する書類の添付を不要とする」とされている。また、「これに伴い、平成30年以後の勘定設定期間を、平成30年1月1日から平成35年12月31日までとする」とされている。

現在、NISAの勘定設定期間は、平成30年1月1日から平成33年12月31日までの第2期間と平成34年1月1日から平成35年12月31日までの第3期間に分けられている。これらの期間が合わさって、一つの勘定設定期間となるのである。

そもそも勘定設定期間が最長4年となっていたのは、住民票の除票の保存期間が5年であり、5年以上前に住んでいた場所の住民票(除票)を取得することはできないためだと思われる。基準日の住民票の添付が不要となることで、勘定設定期間の制約がなくなるのである(図表2)。

このように、個人番号の利用により対象者の特定が容易になることで、制度の自由度が拡大する。現在は複数の金融機関にNISA口座を同時に開設することはできないが、個人番号を用いれば複数口座の限度額を集計することも容易であることから、将来の非課税制度においては、異なる金融機関の利用ができるようになる可能性もあると期待される。

今年から始まったジュニアNISAでは、制度開始当初から基準日における住民票の写しは不要となっており、勘定設定期間の分割などは当初から行われていない。

図表1 金融分野におけるマイナンバーの取扱いの分類
区分 顧客→金融
機関の告知・
提出義務規定
金融機関→
行政の
提出義務
猶予
規定
取引の例
区分A 有り 有り 無し 特定口座開設、NISA・ジュニアNISAの口座開設、マル優・マル特の口座開設、財形住宅・財形年金の手続き、投資信託・債券・株式等の取引における住所・氏名・番号の変更
区分B 有り 投資信託・債券・株式等の支払い、特定口座取引、NISA等取引、先物・オプション等取引、外国送金
区分C 無し 無し 生命保険契約等の一時金の支払い、生命保険契約等の年金の支払い、損害保険契約等の満期返戻金等の支払い
区分D 無し - 預貯金取引

図表2 マイナンバーの利用による勘定設定期間の制約からの解放
図表2

告知猶予の有無を適切に判断して手続きを進める

(2)番号が必要な書類の縮小

図表1の区分Aには、財形住宅・財形年金の手続き、マル優・マル特口座開設を挙げているが、これらの手続きにおいては、個人番号の記載が不要となる方針が閣議決定されている。

具体的には、非課税貯蓄申込書、財産形成非課税住宅貯蓄申込書、財産形成非課税年金貯蓄申込書等の書類に、個人番号を記載する必要がなくなる。平成28年4月1日から不要となる予定である。

個人番号が不要とされるのは、これらの書類は税務署長等には提出されない書類であって、提出者等の個人番号の記載を要しないこととした場合であっても、所得把握の適正化・効率化を損なわないと考えられるからである。

(3)3年間の告知猶予がある取引

投資信託、債券、株式等を売却したり(金融機関が買い取ったり)、配当を受け取ったり(金融機関が配当を支払ったり)するにあたっては、顧客は金融機関に、住所、氏名、個人番号を告知する必要がある。

ただし、すでに昨年までに住所氏名を告知している顧客は、個人番号の告知に3年間の猶予期間が設けられている。例えば、投資信託については、所得税法施行令の改正令の附則において、「信託受益権の譲渡の対価の支払を受けるものは、三年経過日以後最初に当該各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める信託受益権の譲渡の対価の支払を受ける日までに、金融商品取引業者等の営業所の長に、その者の確認書類を提示し、又は署名用電子証明書等を送信して個人番号又は法人番号を告知しなければならない」と定められている。これらの取引が、図表1の区分Bに当たるものだ。

このように告知に猶予期間が設けられている場合、金融機関は番号の告知を受けるまで支払調書、年間取引報告書等に番号を記載する必要はない。

ただし、猶予期間中であっても、住所・氏名・個人番号の変更があった場合には、顧客は金融機関への告知が必要となるので注意が必要だ。

また、新期の顧客で以前に告知を受けていなければ、3年の猶予期間はないため、通常の定めに従って告知を受ける必要がある。

このように、金融機関は、告知の猶予がある手続きか否か、また猶予がある顧客かそうでないかについて適切に判断して事務を進める必要がある。3年の猶予があるとしても、期限ぎりぎりに個人番号の告知を求めた場合、提出を受けられないリスクも高いと考えられるので注意が必要だ。

そのため、金融機関は様々な機会に顧客に個人番号の告知・提供を求めることになるだろう。

これらの依頼の中には、個人番号の提供を受けられなくても取引を継続して問題ない場合と、氏名・住所変更のように、個人番号の告知を受けられないと手続きを継続することに問題がある場合がある。こうした違いに留意して、金融機関はマイナンバー制度への対応を進めていく必要がある。

窓口対応などの機会をとらえて告知を依頼するためには、窓口ですでに個人番号を告知してもらっている顧客かそうでないかを把握できるようなシステムを構築しておくことも必要になる。

その際に、個人番号が閲覧できては、安全管理として問題がある。個人番号の告知を受けているか否かのみが確認できるようにしておく必要がある。

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