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単身世帯の増加と金融機関に期待される役割(1/4)

  • *本稿は、『季刊 個人金融』 2016年夏号(一般財団法人ゆうちょ財団、2016年8月発行) に掲載されたものを、同編集部の承諾のもと掲載しております。

みずほ情報総研 主席研究員 藤森 克彦

【要旨】

今後日本では、50代・60代の単身男性と80歳以上の単身女性が急増するとみられている。特に、2030年の80歳以上の単身女性は、2010年の2倍になり、256万人と推計されている。また、未婚の一人暮らし高齢者も急増していく。


高齢単身世帯の増加は、経済的に困窮する人の増加、介護需要の高まり、社会的に孤立する人の増加、判断能力が不十分な身寄りのない高齢者の増加、などをもたらして社会に大きな影響を与えるだろう。また、平均的にみて高齢世代は現役世代よりも金融資産を有しているので、高齢単身世帯の増加によって、金融機関も大きな影響を受ける。こうした中、金融機関に期待される役割としては、単身世帯に対する家計・資産のアドバイザリー機能の強化、判断能力が低下した高齢者の財産保護、単身世帯の介護・生活リスクに対応できる金融商品の開発、などがあげられる。


今後の課題の一つとしては、金融機関が地域の他の機関と連携しながら、どのように高齢単身世帯への見守り機能を果たすかという点があげられる。

はじめに

日本では、単身世帯が増加している。増えているのは、若者の一人暮らしではない。配偶者と死別した高齢者の一人暮らしや、未婚の中高年男性の一人暮らしが増加している。

結婚をして同居家族がいることを「標準」としてきた日本社会において、単身世帯の増加は、社会に大きな影響を与えていくと考えられる。これは個人の生き方や家族のあり方が多様化したことの反映であり、けしてネガティブな面ばかりではない。しかし一方で、これまで同居家族の助け合いが生活保障の大きな役割を果たしてきたので、単身世帯の増加に伴って、生活面のリスクに社会としての対応を考えていく必要がある。また、平均的にみて高齢世代は現役世代よりも金融資産を有しているので、高齢単身世帯の増加は、金融機関にも大きな影響を与えることが考えられる。換言すれば、高齢単身世帯の抱えるリスクに対して、金融機関に期待される役割も大きい。

そこで本稿では、単身世帯の増加の実態とその要因を見た上で、単身世帯の増加が社会に与える影響として、経済的困窮者の増加、介護需要の高まり、社会的に孤立する人の増加、判断能力が不十分な身寄りのない高齢者の増加、といった点をみていく。その上で、金融機関に期待される役割を考察していく。

1. 単身世帯の増加の実態と将来予測

まず、単身世帯(一人暮らし)の増加の実態と将来推計をみていこう。2010年現在、全国の単身世帯数は1678万世帯にのぼり、総人口の13.1%、全世帯数の32.4%を占めている(*1)。「標準世帯」といわれる「夫婦と子供からなる世帯」の全世帯に占める割合が27.9%なので、「単身世帯」は「夫婦と子供からなる世帯」を抜いて、構成比の最も高い世帯類型となった。

そして2030年になると、単身世帯数は1872万世帯(2010年対比で11.6%増)となり、総人口の16.1%を占めるとみられている。全世帯に占める単身世帯の割合は36.5%となり、「夫婦と子供からなる世帯」の割合(24.0%)を大きく上回っていくと推計されている(*2)

注目すべきは、今後、年齢階層ごとの単身世帯数の増減が大きい点である。具体的には、2010年現在、男性で最も多くの単身世帯を抱えているのは20代である(図表1)。20代で単身世帯が多いのは、進学や就職などを機に親元を離れて一人暮らしを始める若者が多いためだ。そして30代以降、年齢階層があがるにつれて、単身世帯数は減少していく。これは、結婚をして二人以上世帯となるためである。

一方、女性をみると、20代のみならず70代でも単身世帯が多い。70代で単身世帯が多いのは、女性の平均寿命が男性よりも長いので夫と死別して一人暮らしをする女性が増えるためである。

しかし、2030年の男女別・年齢階層別の単身世帯数は、2010年の状況とは一変する。具体的には、2030年の20代の単身世帯数は、少子化の影響を受けて男女共に大きく減少していく。その一方で、2030年に男性で最も多くの単身世帯を抱える年齢階層は50代となる。また、女性で単身世帯が最も多いのは80歳以上であり、256万世帯にもなる。80歳以上の単身女性数は、2010年の2倍の水準にのぼるとみられている。

図表1 男女別・年齢階層別の単身世帯数
図表1
(資料)2010年は総務省『国勢調査』(実績値)。2030年は国立社会保障・人口問題研究所『日本の世帯数の将来推計(全国推計)』(2013年1月推計)による将来推計に基づき、筆者作成。

2. なぜ単身世帯は増加していくのか

では、なぜ50代男性や80歳以上女性で単身世帯が増加していくのか。50代男性で単身世帯が増加していく最大の要因は、未婚化の進展である。50歳時点で一度も結婚をしたことのない人の割合を「生涯未婚率」と呼ぶが、男性の生涯未婚率は85年まで1~3%台で推移した後、90年以降、急激に上昇を始め、10年には20.1%となった。そして30年になると、男性の生涯未婚率は27.6%になると予測されている。ちなみに、女性の生涯未婚率も上昇しているが、男性ほど高い水準ではない。女性の生涯未婚率は10年の10.6%が2030年には18.8%になると推計されている(*3)

一方、80歳以上の高齢女性で単身世帯が増加していくのは、2030年に「団塊の世代」が80歳以上になり、80歳以上人口が増加することと長寿化の影響が大きい(*4)。また、配偶者と死別した高齢女性が子供と同居しない傾向が続くことも一因と考えられる。実際、夫と死別した80歳以上女性のうち、子供と同居する人の割合は、95年の69.7%から2010年には52.4%まで低下した(*5)。たかだか15年間で、配偶者を失った老親と子の同居率が17%ポイントも低下している。今後もこの傾向は続くことが予想される。

そして、中高年の未婚化の進展に伴って、今後未婚の高齢者の増加も予想される。具体的には、65歳以上の未婚者は、2010年の120万人が2030年には314万人になるとみられている。実に2.63倍の増加である。特に、高齢男性で未婚者の増加が著しく、3.56倍にもなる(図表2)。こうした未婚の高齢者の多くは、一人暮らしになる可能性が高い。未婚の高齢単身者は、配偶者と死別した高齢単身者とは異なり、配偶者のみならず子供もいないことが考えられる。老後を家族に頼ることが一層行いにくくなることが予想される。


図表2 男女別にみた高齢単身者数と高齢未婚者数の増加―2010 年と2030 年の比較

(単位:万人)
  男性 女性
2010年 2030年 倍率 2010年 2030年 倍率
65歳以上人口[1] 1,247 1,578 1.26倍 1,692 2,107 1.24倍
  単身者数[2]
([2]/[1] %)
146
(11.6%)
243
(15.4%)
1.66倍 352
(20.8%)
486
(23.1%)
1.38倍
単身者数[3]
([3]/[1] %)
50
(4.0%)
178
(11.3%)
3.56倍 70
(4.1%)
137
(6.5%)
1.96倍

(資料)2010 年は総務省『国勢調査』(実績値)。2030 年は国立社会保障・人口問題研究所『日本の世帯数の将来推計(全国推計)』(2013 年1 月推計)による将来推計に基づき、筆者作成。

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