ページの先頭です

IoTは金融業界を変える?人と物のデータがFinTechを深化させる(1/2)

  • *本稿は、『The Finance』(株式会社セミナーインフォ、2016年8月24日発行)に掲載されたものを、同編集部の承諾のもと掲載しております。

みずほ情報総研 経営・IT コンサルティング部 マネジャー 武井 康浩

近年、FinTechが大きな注目を集める中で、金融分野におけるIoTの活用は、現在、それほど進んではいない。しかし「ヒトとモノの物理的な事象に関わるデータ」を取得し活用するIoTは、大きなインパクトを金融業界に与える潜在的な力を持つ。本稿では、「IoT×金融」の理解を助けるわかりやすい事例を用い、その姿と可能性に迫る。

IoTの最大の特徴

物理的な事象のデータを活用し、人の行動や状態を変える

これまでなかった「ヒトやモノの物理的な事象に関わるデータ」を取得・活用することで、新たな付加価値の創出に向けた試みが生まれ始めている。その多くは、ヒトやモノと関わりの深い、ものづくり分野や小売・サービス分野などを中心とした事例である。

IoT活用のわかりやすい事例:スマートロックシステム

まずここでは、その試みをイメージしやすい、代表的な事例として、スマートロックシステムを紹介したい。

例えば、株式会社フォトシンスは、多人数が出入りするオフィス・事務所向けのスマートロック製品「Akerun Pro」を提供している。Akerun Proは、スマートフォンの専用アプリと連携し、サムターン付きドア錠を開閉できるスマートロックデバイスである。

このスマートロックデバイスを装着したオフィス・事務所などへ入室する時には、専用アプリからデバイスに接続することで鍵を解錠できる。また、退室時にはデバイスに触れるだけで鍵が開き、外に出ると自動で閉まる仕組みである。

このデバイスは、ネットワーク経由で他システムと連携することも可能である。例えば「入退室に合わせて室内照明を制御してくれる」「オフィスの全員が退出すると掃除ロボットが動き出す」など、オフィスなどの効率化や生産性向上につながる使い方が可能となる。

さらに、施錠・解錠したのが誰なのかをデータとして記録可能であるため、それらデータを活用することで、勤務管理の効率化、室内セキュリティの強化にもつなげられる。


スマートロックの概要整理
図表1

上記はまさに、IoTを活用したサービスの代表事例である。今まで見過ごしてきた「鍵を開ける」というヒト・モノの物理的な事象に関わる情報をデータとして取得し、そのデータに基づき分析・提示される結果(例えば、室内照明の制御など)により、ヒト・モノの行動・状態変化(例えば、入室者に合わせた室内環境の自動設定)につなげることに、この仕組みの付加価値がある。

散在した金融データを活用するFinTech

金融分野では、昨今注目を集めるFintechの流れの中で、ITを活用した新サービスが次々と生まれている。ここでも注目されている事例をいくつか紹介したい。

P2P型国際間送金サービス「TransferWise」

例えば、P2P型の国際間送金サービスである「TransferWise」は有名な事例である。2011年に、英国で創設されたサービスであり、送金手数料を抑え、為替手数料ゼロを実現している。具体的には、A国からB国に送金したいユーザーと、B国からA国に送金したいユーザーとの間でP2Pによるマッチングを行い、公定為替レート(中値)による送金を可能としている。

つまり、別々の国にいる海外送金希望者間で、互いが希望する通貨、金額をマッチさせ、海外送金ではなく国内取引によって決済することで、実質的に為替手数料が発生しない海外送金の仕組みを実現している。

クラウド型会計ソフト「MFクラウド会計」

また他の注目事例として、マネーフォワードの試みがある。同社は、クラウド型会計ソフト「MFクラウド会計」などの企業ユーザー・データを活用し、企業が従来よりも少ない手間と短い時間で、金融機関からの資金調達を可能にする新サービス開発を目指している。

金融機関にとっても、同サービスを通じ、従来は活用が難しかったリアルタイム性の高い日次財務データ・入出金データ・請求データなどに基づく、新しい審査モデルの開発が可能となる。そして、延いては資金提供先の拡大が可能になる。

上記のサービス例は、革新的な金融サービスのほんの一例である。各国で散在する海外送金者の情報、事業者ごとに蓄積されている日次財務・入出金・請求等データなど、従来は有効に活用されていなかった金融に関連するデータをつなぎ合わせて分析・活用することで、新たな付加価値を創出する試みである。


FinTech分野の各領域
適用分野 サービス種別 概要
個人向け
資産管理
ロボアドバイザ AI等の計算技術を用いて、顧客から受託した資産の最適な運用方法を提案・執行
家計管理・アドバイス提供(PFM) 銀行口座等と接続し、家計管理を行うほか、資産負債状況に応じたアドバイスを自動で提供
金融取引の利便性向上サービス 銀行代理店の形態による高度なオンラインバンキング機能の実装、カード不適切利用の警告等、金融取引に付随する各種サービス
ソーシャルトレーディング サービス利用者間で、自己のポジションを公開し、各利用者は高パフォーマンスとなる方法を共有・模倣
決済・送金 オンライン決済手段提供 企業が提供するアカウント(デジタルウォレット)を通じたオンライン決済事業および決済代行事業で構成
オンライン海外送金 主に海外出稼ぎ労働者から本国への仕送りニーズに応えるサービスが中心
リアル決済手段提供 モバイルに付属させるドングルでのカード決済サービスのほか、事業者と顧客間のマッチングサービスも含む
ビットコイン関連 ビットコインの(法定通貨での)売買、送金、等
保険 保険購入アドバイス 保険商品の比較、専門スタッフによる相談サービス等により、保険購入時の判断を支援
P2P保険 保険者を知り合い同士など少人数のプールに限定することによりカスタマイズされた保険を割安に提供
センサーを活用した保険 各種の家電と連携させるための通信機能を搭載したセンサーの製造・販売
個人向け
融資
融資(自己資金) 事業者自身の資金を個人に対して融資する。手続きはすべてオンラインで完結
融資仲介プラットフォーム 資金運用したい個人と融資を受けたい個人をマッチングさせるサービス(融資型クラウドファンディング)
有担保融資 オンラインでの質屋
経理支援 経理ソフト クラウドベースでの経理・給与支払ソフトの提供
法人向け
融資
融資(自己資金) 事業者自身の資金を個人に対して融資する。手続きはすべてオンラインで完結
融資仲介プラットフォーム 資金運用したい個人・法人と融資を受けたい法人をマッチングさせるサービス(融資型クラウドファンディング)
低流動性資産売買プラットフォーム 自社プラットフォーム上で売掛債権や優先株の売買が可能
資本調達 クラウドファンディングでの出資仲介 投資したい個人と出資を受けたいベンチャー企業をマッチングさせるサービス(株式型クラウドファンディング)
トレーディング 投資関連メディア 投資家等、運用業界関係者に特化した(SNSを含む)メディア
ビッグデータ解析サービス 顧客または自社のビッグデータを解析する事業者

(出所)経済産業省「産業・金融・IT融合(FinTech)に関する参考データ集」より作成

関連情報

この執筆者はこちらも執筆しています

ページの先頭へ