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自動運転が拓く未来社会とは(1/2)

  • *本稿は、『地銀協月報』 2017年1月号(発行:一般社団法人全国地方銀行協会)に掲載されたものを、同編集部の承諾のもと掲載しております。

みずほ情報総研 経営・ITコンサルティング部 築島 豊長

日本は人口減少、少子高齢化の一途を辿るなか、さらに若年層の自動車離れや高齢者による運転免許証の自主返納などから、自動車の需要が減少していると言われている。それでも、日本全体で見れば、私達の生活に欠かせない自動車であるが、自動車とその取り巻く環境は大きく変わろうとしている。自動車産業や利用環境などを見てみると、現在、自動車の未来を形作るであろう4つの大きなトレンドがあるようだ(図表1)。それぞれが無関係ではないが、この中でも、特に注目を集めているのが「自動運転」である。

2015年10月、安倍首相は、会見の中で2020年の東京オリンピックまでに自動運転車の実用化を目指すことを発表した。国のリーダーが大方針を掲げたわけだが、日本政府が自動運転に積極的な理由として、交通事故死者数の低減や交通渋滞の緩和による環境負荷低減、また、高齢者をはじめ、交通困難者の移動支援や地方の活性化といった社会課題の抜本的な解決策として期待しているという面がある。その背景として、最近、全国で高齢ドライバーによる交通事故が相次いで発生し、ニュースに取り上げられることも多くなってきたということがある。地域では、高齢者が身体的な負担から自動車の運転を控えようと思っても、代替となる公共交通手段がなく、高齢でも運転せざるを得ない実態などもある。このような実態に対して、自動運転関連技術の確立、高度化により、事故の抑制や自動運転バス等の登場による地方の交通不便地域の解消など、日本が抱える複数の社会課題が解決される可能性が高いと見られている。

また、日本政府は自動車産業の国際的な競争力向上や関連市場の拡大等の産業振興の面でも期待している。自動車産業は日本の中核産業の1つであることは言わずと知れたことであるが、GoogleやMicrosoftなどの大手IT企業が自動運転技術の開発に積極的なこともあり、当該産業が1つの転換期に来ていることは間違いない。一方、世界的に見ると先進国を中心に高齢化が進んでおり、日本の高齢化率は世界トップである。自動車産業の転換期の中、課題先進国である日本で、社会問題の解決策として自動運転技術や同技術が活用された社会システム・インフラを確立することができれば、同じく高齢化対策に取り組む必要のある先進諸国に対して、将来的に解決策として輸出できる可能性は高い。自動車を取り巻く環境が大きく変わる中で、「商機」をどう見極め、どのように「勝機」に繋げるか、日本全体として考えるタイミングに来ていることが窺える。

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図表1 自動車の未来に大きな影響を与えるトレンド
名称 内容
コネクテッドカー インターネットに接続しICT端末としての機能を有する自動車。車両の状態や周囲の道路状況などの様々なデータをセンサーにより取得し、ネットワークを介して集積・分析することで、新たな価値を生み出すことが期待されている。
EV関連技術 世界的なエコ意識の高まりや、中国や東南アジアの大都市を始めとする大気汚染問題等により、電気自動車の需要は近年世界的に増加傾向にある。ガソリンをエネルギー源としない電気自動車は、環境負荷の低減に貢献する。
シェアリングエコノミー これまでのように自動車を所有するのではなく、必要な時に安価に利用することが注目されている。所有者と利用者で共有することで、自動車の稼働率を向上することができ、社会全体のエコロジー化の要素も持つ。
自動運転 人間の運転操作を支援する、もしくは人間が運転を行わなくとも自動で走行できる技術やシステムが現在開発されている。自動運転といってもその機能にはいくつか段階があり、その段階によってシステムの呼称、機能や事故時の責任関係等が異なる。

(出典)首相官邸、総務省公表資料を参考に筆者作成

自動運転社会に向けた地方自治体、地方企業の関わり方とは

自動運転技術の実現に向けては、自動車の走行機能の3要素である「認知・判断・操作」の高度化が求められており、各目的に応じて、産官学共同で研究開発や実証実験が行われている。2016年だけでも日本全国で様々な目的の実証実験が行われ、その中で地方自治体や地方企業が関わったケースは数多くある(図表2)。具体的には、無人の自動運転バスやタクシーを走行させた場合、社会や利用者が受け入れられる素地があるのか、走行させる上でどのような点が問題となるかなど、社会受容性を含めた運用上の課題を確認するような実証実験が主となっている。自動運転技術や自動運転社会の実現に向けては、自動車メーカーなどの事業者はもちろん、地方自治体や地方企業、また大学の取り組み、参画は必要不可欠な状況である。

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図表2 実証実験に関する代表的な動き(2016年)
政府系プロジェクト
内閣府
  • 2016年11月、内閣府は、大規模実証実験の実施を発表。2017年9月~2019年3月にかけて、首都高や東名、新東名高速道路などの自動車専用道路、一般道、テストコースでの実証を行う予定。参加者は、国内自動車メーカー、部品メーカー、大学・研究機関、海外メーカー等(調整中)。
  • 2016年11月、内閣府は、秋田県仙北市(国家戦略特別区域)で、公道での自動運転バスの実証実験を実施(DeNAに事業委託)。また、無人運転バスへの試乗者を一般募集した。
自動車メーカー系
トヨタ、日産、ホンダ等
  • 2016年5月のG7伊勢志摩サミット、9月のG7交通大臣会合において、各社が自動運転車等を提供し、試乗デモを実施。
IT・新興企業系
DeNA
(ロボットタクシー等)
  • ロボットタクシーによる藤沢市での実証実験(2016年3月)や、G7伊勢志摩サミットでの試乗デモ(2016年5月)を実施。
  • 2016年8月、千葉県幕張のショッピングセンター内で、自動運転バス・ロボットシャトル(仏EasyMile 社製)を試行運転。
  • 2016年7月、九州大学、NTTドコモ、福岡市と共に、大学キャンパス内自動運転バスの走行実験実施を発表。
SBドライブ
  • 北九州市、八頭町、白馬村、浜松市等の自治体と協定を締結し、次世代モビリティサービス実用化に向けた取組開始。
大学・地方自治体等
愛知県
  • 2016年5月、県内15市町において自動運転の実証実験(アイサンテクノロジーに事業委託)を行うと発表。2016年6月の幸田町を皮切りに、2017年1月の安城市まで順次実証実験を実施中。
東北大学
  • 2016年8月、仙台市、宮城県、東北経済連合会と共同で、「東北次世代移動体システム技術実証コンソーシアム」を設立。東北大キャンパスや市内の過疎地域などで実証実験を実施予定。
金沢大学
  • 2016年9月、石川県珠洲市で2015年から実施している自動運転車の公道実証実験を公開。
輪島商工会議所
  • 2016年11月、石川県輪島市で自動運転による電動カート(ヤマハ製)の公道での実証実験を実施

(出典)首相官邸公表資料、各自治体発表より抜粋

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