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「カーボンポジティブ」目指し 製造工程でバイオマスを活用

[連載]グローバル企業の温暖化対策 第2回:ユニリーバ

  • *本稿は、『日経エコロジー』 2017年5月号 (発行:日経BP社)に掲載されたものを、同編集部の承諾のもと掲載しております。

みずほ情報総研 環境エネルギー第2部 コンサルタント 谷 優也

2015年 再エネ比率 41.7%
【ユニリーバの温暖化対策】
1.2030年までに自社のエネルギー消費を100%再エネにする
2.2020年には購入する電力の100%を再エネに
3.蒸気や熱の燃料も段階的にバイオマスに切り替え

この連載では、グローバル企業における温室効果ガスの削減目標と再生可能エネルギー導入施策について、「CDP気候変動質問書2016」への回答を基にまとめる。第2回は、英蘭ユニリーバを取り上げる。

ユニリーバは、日用品や食料品を製造・販売する世界有数の一般消費財メーカーで、世界67カ国に製造拠点を抱えるグローバル企業である。同社製品は190以上の国で販売され、毎日2億人もの消費者によって使用されているという。


「他者の削減に貢献する」

2015年、同社は気候変動への対応として、2030年までに“カーボンポジティブ”を実現する壮大な目標を打ち出した。

彼らの言うカーボンポジティブとは、自社で消費する電力や熱などのエネルギー由来のCO2排出量をゼロにし、さらに再エネによる電力を供給することで、他者の温室効果ガスの削減に寄与することである。

2030年までに自社で用いるエネルギーの100%を、再生可能な資源に由来する電力や熱に切り替える。それに加えて、社会におけるさらなる再エネ発電の拡大を支援し、そこで発電した電力を、ユニリーバが事業活動を展開する市場や地域に供給していく計画である。

また、この実現に向けて、2020年までに、(1)系統から調達するすべての電力を再エネ電力に切り替える、(2)ユニリーバが消費する燃料(エネルギーミックス)から石炭を排除する―などの目標も掲げている。

こうしたユニリーバの気候変動対策は、どのように進められているのだろうか。

次の表に、ユニリーバの地域別スコープ2排出量を、「ロケーションベース」と「マーケットベース」の2種類で示した。前者は、企業が電力を消費している地域のグリッド(電力網)平均の排出係数に基づいて算出する手法である。また後者は、自社が実際に購入契約を結んだ電力の排出係数に基づいて算出する手法で、再エネ電力を調達している場合、排出量はゼロであると見なされる。

左右スクロールで表全体を閲覧できます

ユニリーバによる世界全体のスコープ2排出量と再エネの活用(2015年)
国・地域 スコープ2排出量 エネルギー消費量
ロケーション
ベースで計算
マーケット
ベースで計算
総量 再エネ比率
欧州 39万2533t 11万6535t 11億2176万kWh 60.6%
北米 25万3611t 283t 4億2734万kWh 105.8%
中南米 11万5167t 9万9241t 5億1421万kWh 34.1%
その他 76万9357t 76万9357t 11億7154万kWh 3.5%
合計 153万669t 98万5417t 32億3485万kWh 41.7%

図1

出所:英蘭ユニリーバによる「CDP気候変動質問書2016」への回答
注:「北米」の再エネ比率が100%を超えていたり、「その他」のスコープ2排出量が2つの算定方法で同じ値であるにもかかわらず再エネ比率がゼロでないことから、再エネの自家発電を、「再エネを調達した量」として計上している可能性がある。「再エネ比率」は、同社がCDPに回答した再エネ調達量と総量を基に計算した

自前の再エネ電力は3%

欧州、北米、中南米では、ロケーションベースとマーケットベースの排出量を比較すると、マーケットベースの排出量の方が小さくなっている。これは、排出量ゼロと見なせる再エネ由来の電力や蒸気、冷温熱を、契約や証書などの手段によって外部から調達できたためと考えられる。

ここで、ユニリーバによる再エネ電力調達の手段を示す、上の円グラフをご覧いただきたい。

ユニリーバが自ら設備投資した再エネ発電設備からの電力供給は、遠隔地に自前で設置した再エネ設備(系統に接続)から供給される3%のみだ。

残る97%は、契約によって外部から再エネ電力を調達したことが分かる。契約による外部調達は、電力調達価格に加えてプレミアムコストが必要になるが、再エネ電力を大規模に、すぐに調達できるため、同社の目標を達成するための重要な手段である。

下のグラフに同社が製造段階で用いる燃料種とその割合を示した。この燃料の利用に伴うCO2排出量は同社のスコープ1排出量に当たる。燃料消費量のうち14.9%がバイオマス由来の燃料に切り替わっている。

ユニリーバが製造段階で用いる燃料の種類(2015年)
図2

注:四捨五入のため合計しても100にならない場合がある。
これらの燃料の使用に伴うCO2排出量はスコープ1排出量に相当する

蒸気や熱をバイオマスで

ユニリーバは、エネルギー消費の100%を再生可能な資源に切り替える2030年目標のために、バイオマスボイラーへの投資を進めている。その結果、2015年は38カ所の製造拠点でバイオマス燃料を利用した。石炭で同量のエネルギーを得る場合と比べて、23万tものCO2を削減できたという。

また、単にバイオマス資源であれば良いというものではない。ユニリーバは、食料品との競合を避けるため、廃棄段階のバイオマスのみを燃料として用いているという。食料品との競合は、食料不足や価格高騰を招き得るため、意図せずに持続可能性を損ない、不当な評価を得る可能性もあるからだ。ユニリーバの中国の新工場では、竹、廃木材、もみ殻、ピーナッツ殻などの廃棄物系バイオマスからエネルギーを生成している。廃棄物系バイオマスの利用は、ユニリーバが掲げる別の目標「製品製造段階で生じる廃棄物の削減」の実現にも、寄与している。

先月号の第1回で取り上げた米アップルは、再エネ電力の利用によるスコープ2排出量削減の先進的な事例であった。今回取り上げたユニリーバは、自社で使う蒸気や冷温熱など向けの燃料を、再エネ資源に切り替えることでスコープ1排出量の削減も試みる点で、先進的な事例である。

製造段階で熱源としてのエネルギーを必要とする企業にとって、参考となる取り組みだろう。

(この記事で取り上げるCDPに対する企業の報告は、事前にCDP日本事務局の許諾を得て引用・参照している)

関連情報

[連載]グローバル企業の温暖化対策

2017年4月
[連載]グローバル企業の温暖化対策 第1回:米アップル
― スコープ2排出量をゼロに 電力の「100%再エネ」を目指す ―

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2016年12月13日
「2℃目標」に整合した企業であるために
― 再エネ利用の可能性―
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