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事業からの排出をゼロに「SBT」目指し再エネを活用

[連載]グローバル企業の温暖化対策 第3回:BMW

  • *本稿は、『日経エコロジー』 2017年6月号 (発行:日経BP社)に掲載されたものを、同編集部の承諾のもと掲載しております。

みずほ情報総研 環境エネルギー第2部 コンサルタント 大田 草佑

2015年 再エネ比率 42%
【BMWの温暖化対策】
1.2020年に生産拠点の排出を2015年比で20%削減
2.ほぼすべてのスコープ1、2排出量を2050年までにゼロ
3.製品の使用時排出量を2020年に2008年比で25%削減

この連載では、グローバル企業における温室効果ガスの削減目標と再生可能エネルギーの導入施策について、「CDP気候変動質問書2016」への回答を基にまとめる。第3回は独BMWを取り上げる。


「DJSI銘柄」の常連

BMWは、ドイツミュンヘンに本拠を置く自動車、自動二輪車、エンジンメーカーである。BMWの他にロールスロイス、ミニといったブランドも所有している。2016年には世界におけるグループ全体で約237万台の自動車を販売し、その売上高は約940億ユーロに上った。

BMWは環境に関して、長期的な責任ある行動を取ることを規範とし、持続可能性や資源の保全などを企業としての戦略の1つに位置付けている。その結果、「ダウ・ジョーンズ・サステナビリティ・インデックス(DJSI)」に1999年から継続して掲載されている唯一の自動車メーカーとなっている。自動車業界の中でも温暖化対策を含む環境問題に積極的に対応している企業といえる。

BMWの2015年の温室効果ガス排出量のうち、スコープ2排出量を「ロケーションベース」と「マーケットベース」の2種類で表に示した。前者は、企業が電力を消費している地域のグリッド(電力網)平均の排出係数に基づいて算出する手法である。また後者は、自社が実際に購入契約を結んだ電力の排出係数に基づいて算出する手法で、再エネ電力を調達している場合の排出量はゼロであると見なされる。

ドイツを中心に、ロケーションベースとマーケットベースの排出量の値に差が出ている。このことから、BMWが、外部からの再エネ調達によってスコープ2排出量を減らしていることが分かる。

次に電力の消費量と再エネ電力の導入比率を参照してほしい。表に示す通り、再エネ電力の消費量は総電力消費量の42%を占めている。グラフに示す通り、この再エネ電力消費で大半を占めるのは「証書の購入」による再エネ電力の調達である。自社の事業所における再エネ発電による電力の消費も約5000万kWhで、決して少ない量ではないが、BMWの再エネ電力消費量全体の4%程度である。自前の再エネ発電設備を導入すると投資が必要になる上、大規模に調達することは難しく、時間もかかる。一方、再エネ証書や、外部の再エネ発電設備との電力購入契約は、大規模な再エネ電力調達の可能性を大きく広げることが分かる。

なぜこのように再エネを大規模に導入しているのだろうか。BMWの温室効果ガス削減目標について見ていこう。

BMWは3つの温室効果ガス削減目標を表明している。1つはスコープ1、2の大半を占める生産拠点からの排出量を、2020年までに2015年比で20%削減する目標である。この範囲に相当する2015年の排出量は約126万tで、20%削減するためには排出量を100万t程度に減らす必要がある。

2つ目の目標は、社用車などの利用による排出を除くすべてのスコープ1、2排出量を、2050年までにゼロにするという壮大な内容である。

徹底した再エネ電力の利用を進めるだけでなく、バイオガスの活用などで社内における燃料利用による排出もゼロにすると発表している。2050年という長期の目標ではあるが、自動車業界という今後も成長が見込まれる産業において排出量ゼロを表明していることは、大きな意義がある。

3つ目の目標は、販売した製品の使用段階の排出量を2020年までに2008年比で25%削減することである。これは、自動車の燃費の改善や、電気自動車や燃料電池車といった「ゼロエミッション車」の開発や生産を拡大することで達成を目指す。なお、使用段階の排出量は「テールパイプ」からの排出を対象としており、燃料の採掘といった上流段階の排出は含まない。

左右スクロールで表全体を閲覧できます

BMWのスコープ2排出量と電力消費量(2015年)
国・地域 スコープ2排出量 エネルギー消費量
ロケーション
ベースで計算
マーケット
ベースで計算
総量 再エネ比率
ドイツ 81万5176t 37万1576t - -
その他 65万7261t 55万1737t - -
合計 147万2437t 92万3313t 27億9748万2000kWh 42%

出所:BMWによる「CDP気候変動質問書2016」への回答

BMWによる再エネ電力の調達方法
図1

「SBT」に再エネで挑む

BMWの目標の特筆すべき点は、1つ目と2つ目の目標で総量での削減目標を表明している点だ。世界の自動車生産台数は拡大基調が続くと考えられ、BMWの生産量も右肩上がりである。このような状況下で原単位の目標ではなく、総量で最終的にゼロにするという目標を発表したことは、非常にチャレンジングだといえる。

また、CDPへの回答によれば、2つの目標は科学に整合した目標(SBT=Science Based Targets)だという。CDPと国連グローバルコンパクト、世界資源機関(WRI)、WWFが共同で実施する「SBTイニシアティブ」では今のところ、BMWの目標はSBTであると認められていないが、少なくとも2050年に向けて排出量ゼロを目指す姿勢はSBTを意識して設定したものであること、そして、1つ目の2020年の目標は2050年目標の達成に向かう中間目標として位置付けていることがうかがえる。

加えて再エネ導入目標も定めている。現状の42%の再エネ導入量を2020年までに67%に増やす目標である。BMWは再エネ100%を目指す国際的な取り組みである「RE100」にも加盟した。具体的な目標年は公表していないものの、将来の再エネ導入率100%を目指すと約束している。2050年に排出量ゼロという意欲的な目標の達成に向けて、積極的に再エネ導入量を増加させるストーリーが浮かび上がってくる。

世界の自動車販売量は今後も拡大が続くと見込まれ、低燃費車や電気自動車、燃料電池車などのゼロエミッション車の普及は重要な課題である。そうした中、製造段階での排出削減を大きく打ち出す自動車メーカーも現れた。BMWはその中でも、先進的な事例といえる。

(この記事で取り上げるCDPに対する企業の報告は、事前にCDP日本事務局の許諾を得て引用・参照している)

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