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残り5年で「再エネ100%」へ アジア拠点向けの調達が鍵

[連載]グローバル企業の温暖化対策 第4回:フィリップス

  • *本稿は、『日経エコロジー』 2017年7月号 (発行:日経BP社)に掲載されたものを、同編集部の承諾のもと掲載しております。

みずほ情報総研 環境エネルギー第2部 コンサルタント 森 史也

2015年 再エネ電力比率 56%
【フィリップスの温暖化対策】
1.2020年に使用電力量に占める再エネ電力の比率を100%に
2.再エネ電力のほぼすべてを社外からの調達で賄う

この連載では、グローバル企業における温室効果ガスの削減目標と再生可能エネルギー導入施策について、「CDP気候変動質問書2016」への回答を基に紹介している。今回はオランダのフィリップスを取り上げる。なお、今回参照したCDP気候変動質問書2016への回答は、フィリップスとフィリップスライティングの2社の情報がまとめて開示されている。温室効果ガス排出量などのデータも2社の合計値となっている。


再エネ電力比率を急拡大

フィリップスは、オランダを本拠としてヘルスケア製品、照明、家電など多岐にわたる製品を扱う世界有数のメーカーである。100カ国以上で製品やサービスを提供しており、2015年のグループ全体の売上高は約24億ユーロだった。

フィリップスは経営戦略において「サステナビリティ(持続可能性)」を重視している。特徴的な取り組みが、同社独自の基準に基づく環境性能に優れた製品「グリーンプロダクト」の拡販だ。

エネルギー効率や包装、有害物質の含有量、重量、リサイクルと廃棄、寿命信頼性という6分野に着目し、1つ以上の分野で既存製品や競合製品の環境性能を10%以上、上回ったり、環境法規制で定められた基準よりも優れたりしている製品をグリーンプロダクトに認定している。

2015年に同社の全事業売り上げの54%を占めたグリーンプロダクトの販売を、2020年に70%に拡大する目標を掲げている。達成のために研究開発などのイノベーションに対し2010年からの4年間で20億ユーロを投資するなど、事業を通じた環境貢献に注力していることがうかがえる。

フィリップスの温暖化対策、特に再エネ電力の導入状況を見ていこう。

表に、フィリップスの温室効果ガス排出量のうちスコープ2のCO2排出量を、「ロケーションベース」と「マーケットベース」の2つの方法で示した。前者は地域のグリッド(電力網)平均のCO2排出係数に基づいて算出する手法である。また後者は、自社が実際に購入契約を結んだ電力の排出係数に基づいて算出する手法である。再エネ電力を調達している場合、排出量はゼロであると見なされる。スコープ2は、電力会社など外部から購入した電力や熱の使用に伴うCO2排出量を示す。

表によれば、ロケーションベースとマーケットベースの排出量に、明らかな差が生じている。同社が、市場から再エネの電力を調達することで、スコープ2排出量を大幅に削減していることが分かる。

再エネ電力の調達実績を確認すると、2008年には電力消費量に占める再エネ電力の導入比率は8%にすぎなかった。これが2015年に56%に高まった。再エネ電力の積極的な導入拡大に成功している。

2015年の再エネ電力の調達方法をグラフで示した。すべて外部から調達している。電力購入契約による調達が約6割、再エネ電力証書の調達が約4割となっている。

同社は再エネ発電設備を保有しており、2015年には186万4000kWhの発電実績がある。しかし、発電した電力はすべて電力会社に売電し、自社の電力消費を賄った再エネ電力の調達量には算入されていない。再エネ導入拡大には、投資が必要になる自家発電設備の導入ではなく、外部からの再エネ電力調達が大きな可能性を持つといえる。

フィリップスは、2020年までに再エネ電力の導入比率を100%にすると宣言している。2015年の再エネ比率が56%だったので残る44%分を5年ですべて、再エネ電力で賄えるようにするという。これは、非常にチャレンジングな目標と言える。電力消費量の100%を再エネ電力で賄うことを目指す企業の国際プログラム「RE100」に参加している。

「科学と整合した目標(Science Based Targets=SBT)」を今後、設定することも約束している。企業独自に取り組んで宣言するだけでなく、RE100やSBTといった国際的なプログラムに参加していることから、2020年に目標達成しようという意欲の高さがうかがえる。

左右スクロールで表全体を閲覧できます

フィリップスのスコープ2排出量と電力消費量(2015年)
スコープ2排出量 エネルギー消費量
ロケーション
ベース
マーケット
ベース
総量 再エネ比率
インド 4万7585t 4万2470t - -
インドネシア 2万304t 2万304t - -
オランダ 7万5487t 3733t - -
中国 7万6837t 7万6837t - -
ドイツ 1万7931t 1436t - -
米国 11万4748t 4万7776t - -
ポーランド 7万6184t 990t - -
その他 6万7416t 4万2863t - -
合計 49万6492t 23万6409t 9億3175万kWh 56%

インド、インドネシア、中国ではロケーションベースとマーケットベースの排出量に差が無いため、再エネ電力をほとんど調達できていないことが分かる
出所:フィリップスによる「CDP気候変動質問書2016」への回答

再エネ電力の調達方法
図1

難しいアジアでの再エネ調達

しかしながら、再エネ100%の目標達成は、一筋縄ではいかないようだ。地域別にスコープ2排出量を見ると課題が見つかった。

欧米の拠点では、ロケーションベースとマーケットベースのスコープ2排出量に明らかな差がみられる。欧米では再エネ電力の活用が著しく進んでいることが分かる。一例として同社は米国テキサス州にある風力発電事業者との間で「PPA(Power Purchase Agreement)」と呼ぶ、15年間にわたる電力購入契約を直接結んでいる。毎年の調達量は2億5000万kWhに及び、北米にある同社の拠点の電力消費量をすべて賄っている。

ところが中国やインド、インドネシアといったアジアの国々における2つの排出量を比べると、再エネ電力をほとんど調達できていないことが分かる。

いずれも再エネ電力を市場で調達することが難しい国だ。今後はこうした地域での再エネ電力の調達が同社の課題となる。日本企業もアジアに多く進出している。今後、日本企業がアジアで再エネの利用を拡大するなら、同じ課題に突き当たることは明らかだ。2020年の目標達成に向けてフィリップスがどのように課題を解決するか、注視することが重要になるだろう。

(この記事で取り上げるCDPに対する企業の報告は、事前にCDP日本事務局の許諾を得て引用・参照している)

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