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静脈産業における業界再編(1/4)

  • *本稿は、『INDUST』2017年10月号(発行:公益社団法人全国産業廃棄物連合会)に掲載されたものを、同編集部の承諾のもと掲載しております。

みずほ情報総研 環境エネルギー第1部
森口 健生、秋山 浩之

近年では、廃棄物処理・リサイクル業を中心とする我が国の、いわゆる“静脈産業*1において、企業の業務提携やM&Aの動向が新聞でも取り上げられるようになっている。 我が国の静脈産業は大手企業を中心に、従来の廃棄物処理事業からリサイクル事業、再生可能エネルギー事業等へと事業の多角化を進めてきた。さらに、国内だけではなく、近年では積極的に海外へ事業展開する企業も出てくるようになった。 しかし、我が国の静脈産業は、海外の静脈産業メジャーと呼ばれる廃棄物処理・リサイクル業を中心とした、グローバルに事業展開している巨大企業に比べると、設備・装置系の企業を除けば、中小規模の企業が大多数であり、静脈産業メジャーに匹敵する規模の企業は存在しない。その一方で、近年では静脈産業メジャーに対抗できる企業を目指し、業務提携やM&Aにより、企業規模の拡大を図る動きもみられる。 本稿では我が国における静脈産業、特に産業廃棄物処理業を取り上げ、その業界構造と近年の業務提携、M&Aの動向から、今後の業界再編の方向性について考えてみたい。

産業廃棄物処理業の業界構造

(1)許可事業者数は11万者と多いが、主業者数は1割に満たない

産業廃棄物処理業の許可を持っている事業者は約11万者と非常に多いが、実際に業を行っている事業者数(アクティブ数)は約6.4万者と全体の6割程度である。さらに、産業廃棄物処理業を主業(産業廃棄物業の売上高割合が50%以上)とする事業者数は約1.2万者と推計されており、許可事業者数の1割程度とみられている。なお、通常の許可基準よりも厳しい基準に適合した優良な産廃処理業者として都道府県・政令市が審査して認定した優良認定業者は、約1千者となっており、主業者数の1割に満たない状況である。

図1 産業廃棄物処理業の事業者数
図表1

(出典)環境省・産業廃棄物処理業の振興方策に関する検討会「産業廃棄物処理業の振興方策に関する提言(概要版)」

また、業種別にみると、図2の通り、収集運搬業においては約半数が非アクティブなのに対して、中間処理業者や最終処分業の9割超がアクティブな事業者であることに比較すると、大きなかい離がみられる。これは収集運搬業を本業である建設業や運送業等に付随して、必要性に応じて収集運搬業の許可を取得した事業者等も含まれているためとみられる。

図2 産業廃棄物処理業の事業者数(業種別)
図表2

(出典)環境省・産業廃棄物処理業の振興方策に関する検討会「産業廃棄物処理業の振興方策に関する提言」(一部、図を修正)

さらに、兼業の割合が高い事業者が多いこともこの業界の大きな特徴であり、環境省の調査*2によれば、事業者における産業廃棄物処理業の売上高割合は、表1の通りであり、いずれの業種でも、産業廃棄物処理業の売上高割合よりも他事業の売上高割合が高くなっている。具体的には、兼業している事業者のその他の業務としては、建設業30%、製造業29%、運送業郵便業10%、一般廃棄物処理業4%となっている。

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表1 産業廃棄物処理業の売上高割合
業種 産業廃棄物処理業の売上高割合
全体 11.4%
収集運搬のみ 3.1%
中間処理 13.0%
最終処分 19.1%
中間処理及び最終処分 36.0%

(データ出典)環境省「平成23年度産業廃棄物処理業実態調査業務報告書」より作成

(2)産業廃棄物処理業の市場規模は5.3兆円、廃棄物処理・リサイクル業全体の市場規模は12兆円

産業廃棄物処理業の市場規模は、環境省の調査*3によれば、図3の通り、5.3兆円程度と推計されている。さらに、産業廃棄物処理だけでなく、廃棄物処理・リサイクル業全体として、一般廃棄物処理業や、再生資源卸売業、素材系産業における再生資源利用等までを含めると、12兆円*4を超える規模という推計もされている。この市場規模はコンビニエンスストア11兆円、スーパー13兆円*5と同規模であり、他の産業と比較しても遜色がない。

図3 産業廃棄物処理業の推定市場規模(平成22年度)
図表3

(データ出典)環境省「平成23年度産業廃棄物処理業実態調査業務報告書」より作成

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