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急激に市場成長が進むVOC対策を例に

第13次五カ年計画期の中国環境対策ビジネス動向(1/2)

  • *本稿は、『MIZUHO CHINA MONTHLY』2017年5月号(発行:株式会社みずほ銀行)に掲載されたものを、同社の承諾のもと掲載しております。

みずほ情報総研 環境エネルギー第2部 佐藤 智彦

1. はじめに

PM(微小粒子状物質)報道といった騒動により、中国の環境問題がグローバルレベルで顕在化して久しい。中国政府は、深刻化の一途をたどる環境問題解決に向け、2014年に環境保護法を25年ぶりに改正し、環境汚染事業者に対する罰則を強化すると共に、その管理監督を担う役人に対しても昇進条件に環境問題の解決を盛り込み、環境対策に取り組まざるを得ない状況を作り出してきた。また、オンラインモニタリング等の環境汚染物質の監視技術の導入も上海・北京等の直轄市を中心に徐々に始まっている。

2016年から2020年までの第13次五カ年計画は、環境規制の変革期を経て実効性が高まった状況の中スタートを切ることとなり、大気汚染対策分野のVOC(揮発性有機化合物)対策を中心に水汚染対策分野、土壌汚染対策分野へと次々に対策が進められて行くと予想される。特にVOC対策は、中国で最も実効性の高い管理が進められており、いずれは水・土壌汚染対策分野も同様の管理を受けると予想される。本稿では、VOC対策の状況を概観し、これを通して第13次五カ年計画期の中国環境対策ビジネス動向について解説する。

2. 中国の大気汚染対策の変遷

図表1 各大気汚染物質の国家基準達成状況
図表1

出所:環境保護部「環境状況報告2014年、2015年」より作成

中国の大気汚染と聞くと真っ先に連想されるのは、PMにより、数十メートル先すら見えなくなっている北京市の報道ではないだろうか。目に見える形で大気汚染が顕在化し、国民が中国の環境汚染の深刻さを認識したことにより、中国の環境対策の本気度が増したことは間違いないであろう。そのため、中国政府は、PM問題の解決に注力しており、人為起源のPM2.5、PM10の原因物質であるSO2(二酸化硫黄)、NO2(二酸化窒素)、VOC、煤(粉)塵等の削減を目指している。

中国の上記原因物質への対策は意外と早くから実施されており、SO2への本格規制は2006年から、NO2は2010年から、VOCは2016年から、それぞれスタートしている。それぞれが、中国の五カ年計画の大気汚染対策の最重点項目と位置付けられてきた。

図表1には、2014年および2015年の各大気汚染物質の国家基準達成状況を示す。円グラフは、中国の都市において観測された各物質の年平均濃度(μg/m3)が国家基準値を満たしているか否かを示している。2014年と2015年との状況を比較すると、SO2とNO2の達成率の上昇に比例し、PM2.5、PM10の達成率も上昇傾向にあることが分かる。しかしながら、PM2.5、PM10共に依然として未達成の割合が約8割を占めており、他の原因物質に対する対策が急務となっている。これが、昨今VOC対策が急速に進められている背景である。

3. VOCへの対策方法

VOCとは、その和訳、揮発性有機化合物が示す通り、工場等の排気口から大気中に排出され、また飛散したときに気体である有機化合物のことである。ガソリンスタンドに行ったことのある人であれば、そこで嗅いだ事のある独特な刺激臭の原因物質(ガソリンベーパー)がVOCの分かり易い一例であろう。ただし、一言でVOCといっても、該当する有機化合物は数百に及び、産業分野によっても用いられる物質が異なるという特徴がある。そのため、日本企業を含む外資企業の高度な技術の導入可能性が高い。VOCには大きく3つの対策方針がある。第1にVOC排出の少ない溶剤・塗料への変更、第2に溶剤等の回収・精製・再利用処理、第3に分解処理である。第1の項目は、塗着性の高い塗料や水性塗料等への代替を中心に対策が進められている。他方、第2、第3の項目は、装置を導入し排気されたVOCに対して末端処理を行う。その処理の方法は多岐に渡り、処理したいVOCの性状により最適解が決まる(図表2)。中国の製造業は、政府から短期間でVOC対策に取り組み成果を上げることを求められていることもあり、処理装置に対するニーズが高まっている。

図表2 VOC処理技術の全体像
図表2

出所:各種資料より作成

4. VOC関連政策

中国全体を対象としたVOC規制は、2016年1月1日施行の「大気汚染防止法(改正版)」においてVOCの規制・監視が定められたことから本格化した。これにより、各地方政府から次々とVOC関連政策が打ち出されることとなった。特に上海市では、対策に取り組まなければならないVOC排出企業を指定した上で、導入推奨技術、規制制度、監視体制、支援制度を整え、VOC排出企業が対策を講じざるを得ない状況を創出するという先導的な取り組みがなされた。上海市の政策が優れている点は政策の包括性のみならず、中央政府の打ち出した大方針の政策に対応した地方政策をタイムリーに準備し、「大気汚染防止法(改正版)」の施行時点でVOC対策の準備を整えている点である(図表3)。

図表3 中央政府および上海市のVOC関連政策
図表3

出所:中央政府、上海市の政策文書より作成

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