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低金利局面下で「勝てるBPR」を実践する

BPRを成功に導くために(1/2)

  • *本稿は、『リージョナルバンキング 2017年5月号』(一般社団法人第二地方銀行協会、2017年5月発行)に掲載されたものを、同協会の承諾のもと掲載しております。

みずほ情報総研 ソリューション第4部 主席コンサルタント 田中 智之

1.本稿での狙い

地銀各行の中期経営計画などを見ると、業務革新、事務革新など、主に営業体力捻出を狙いとした取組みとしてBPRを掲げているケースが多い。

一方で、私共が実際ディスカッションを行うと、「集中化やシステム化」を進めたが、現場(営業店)の事務解放感が醸成されていない、あるいは、施策を完遂することが目的化しBPRを行ったうえでの金融機関としてのグランドデザイン(担い手ミッション整理、営業店体制、店舗体制見直しなど)が描かれていないケースにしばしば遭遇する。

当社は、この4年間で、全国地銀および一部信用金庫との間でディスカッションを行い、のべ57金融機関からBPRコンサルティングの機会を得た。

本稿では、私共が認識している地銀各行の共通課題を公約数的に括り出し、当社が提唱する投資を伴わない「簡素化」をキーワードとした適正化BPRの骨子について展開を行う。読者の中で、本稿のBPR推進上の課題や対応のポイントは既に熟知しておられる場合はご容赦願いたい。

2.BPR着手時の留意点

金利対応収益低下局面で、役務収益拡大へ向けた営業体力捻出は金融機関共通の課題である。課題解決へ向けたBPR着手時における重要なポイントは、「効果実現のスキーム設計」と「狙いとする効果の定量化」の2点と考える。

(1)効果実現のスキーム設計

体力捻出を狙いに総花的に施策を積み上げても、施策を企画推進する本部体力が想定以上となり、「労多くして益少なし」の懸念がある。

機械化・システム化進展の中、単体施策で単位人数の合理化実現は稀で、施策が総花的になれば、効果が実現する担い手が分散してしまう。

主に後方事務を対象に効果がある場合、直接的に営業体力捻出には結びつかない。実現効果として事務職(または総合職の事務担い手)を店内で係替えをし、営業担当者を増員することは、個人の素養的にフィットすることはあっても総じて成果はあがらない。

一般職(事務職)採用のない金融機関で、採用要件上営業へコンバートできても、直近まで店内事務を主業務にしていた人員を営業担当者として戦力化することは難しく、これが一般職の場合は、総合職(営業職)との処遇の違いと目標負荷によりモチベーションやES低下、さらには、定着率も劣化することがある。

一般職の定着率が相対的に低い場合、当該ケースが要因のひとつになっていることも多い。

この場合のスキームは、定員見直しによる事務職採用抑制やパートタイマーへの担い手変更を行い、「真水」で営業担当の採用を増やすことを考える。一見時間がかかるように思えるが、事務担い手の営業へのコンバートに比べ長い目で見て効果がある。また、融資BPRも並行させ業務を簡単にしたうえで、預金為替事務の担い手を、融資の収益に直結しない在店事務の担当にシフトすることも、融資担当者生産性向上に寄与するスキームである。

一方、営業担当者をターゲットにした施策の場合、単位人数以下の省力化効果でも営業体力捻出に寄与するはずだが(例:1日1人当たり1時間捻出)、施策展開後の刈り取りタイミングを逸すると効果は消滅してしまう。BPRの企画推進部署は事務部門や審査部門であったりするが、収挙できた効果を、即、営業に結びつける営業推進部署との連携が必須となる。

(2)狙いとする効果の定量化

定量化も重要で何人分の営業体力捻出を狙うのか計量目標は必須であり、BPR施策が「システム化」や「集中化」を伴うものであると、投資、経費が先行して、低金利局面下OHRは悪化し想定効果とのバランスがとれない事態となる。

3.BPRの起点となる営業店における課題整理

BPRは、金融機関の営業店で多くの人員を配置している預金為替分野にフォーカスがあたる。その効果は、直接的に店頭での営業体力捻出や、営業への人材(人財)シフトを想定するが、広く金融機関共通項として認識される課題解決へつなげることも視野に入れるべきである。ここでは、この共通課題について整理をしてみる。

(1)営業店体制と課題の総括

営業係、融資係、預金為替係の3課体制が圧倒的で係別の傾向・課題を総括すると<図表1>となる。

※ 営業係は渉外係、預金為替係は内務係や受信係とも呼称されるが、本稿では上記に統一。

左右スクロールで表全体を閲覧できます

図表1 営業店体制にみる傾向・課題
  傾向・共通課題


  • 地域単位に担当者を割り振り、事業先、個人顧客双方を担当する法個人混在型が太宗。
  • 個人営業にウェイトが移り事業先営業体力捻出に課題
  • 営業係の中で事業先と個人の担当を分離しているケース(担当者分離型)は少数。
  • 極稀に事業先と個人営業の係を分離(課分離型)が存在。


  • マス個人を対象とした店頭個人ローン顧客(条件変更も含む)と営業担当者が持ち込む事業先融資案件や、恒例業務の信用格付資産査定を担当。
  • 店内の業務中心で、事業先資金ニーズ発掘のための外訪時間は少ない。




  • 来店客数減少に加え、OCRや営業店端末など機械化の進展で、事務処理は簡単になり客待ち時間も全体としては短縮化。
  • 一方で、諸届や相続などの発生頻度は少ないが1件あたり時間を要する事務が残存し、相続は基本役席対応となっている金融機関もある。
  • 事務処理は簡単になっている一方で、役席検印が多いのも特徴。
  • 期待される店頭営業については、ローカウンターでの「諸届」「相続」への対応もあり必ずしも十分とは言えない。

(2) 預り資産営業強化と事業先営業体力のクラウディングアウト

  • 役務収益増強トレンドから、投資運用商品拡販に注力している。
  • 一方、顧客保護の観点から投資運用商品契約手続重厚化により負担感が大きい。
  • 営業ウェイトが個人にシフトしているため、実績結実まで期間を要する事業先への訪問頻度が下がり、資金ニーズ発掘などのスキルが低下傾向にある。
  • 事業先接点体力が捻出できず押し出された状態(クラウディングアウト)にあり、消化不良にある事業先営業を支店長や役席が「これまで培った力量」で補完している。
  • こうした支店長・役席が3~5年後、所謂「預り資産営業世代」に交代するため、「事業性評価」の目を求められる中、今後の事業先営業体制について危機感を持っている金融機関もある。

(3)BPRが遅れがちな融資分野

  • 融資契約、実行回収事務も含めて本部業務所管が「審査」部門となっているケースが殆どで、預金為替領域と異なり「なくす」「ゼロベース」で各業務項目の必要性を検討する取組みが遅れる傾向。営業店融資担当者の在店業務時間は総じて長い。
  • 具体的には、極端な例かもしれないが、約定書の検印が支店長であったり、そもそも約定書面の種類が多く、ベテランでないとこれら約定書類を正確に取得できないケースも見受けられる。
  • また、与信判断後の純粋事務、定型的類型的業務、店頭のローン顧客対応などの窓口業務に総合職融資担当者が忙殺されているケースも多く融資業務の中の事務を括り出し合理化する取組事例は少ない<図表2>。

図表2 営業・融資業務における共通課題
図表2

(4)効果実現の難易度が高いチャネルシフト

  • 預金為替分野では従来の後方レスに加え、昨今は窓口から根こそぎ他のチャネルに事務をシフトする方策としてダイレクトバンキングメニュー拡大、セルフ端末の導入、さらには、TV電話でリモートチャネルへ相続やローン条件変更事務を集約する取組みがある。
  • 成功すれば合理化効果絶大な施策だが、いきなり「そこ」に飛びつくと、セルフ率が伸びない、相続などTV電話での応対が長くかつ手続きが完結せず顧客からも不評で稼働率低迷といった現象がおこる。
  • 結果として、これら先進的仕組みが十分活用されず、先行した投資の回収が著しく遅延する。
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