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「単身急増社会」を考える(1/3)

  • *本稿は、『生活協同組合研究』 2017年3月号(発行:公益財団法人生協総合研究所)に掲載されたものを、同編集部の承諾のもと掲載しております。

みずほ情報総研 主席研究員 藤森 克彦

単身世帯(一人暮らし)が増加しており、今後も増えていくことが予想されている。増えているのは、若者の一人暮らしではない。中高年男性の一人暮らしや、高齢者の一人暮らしが急増している。

これまで結婚をして同居家族がいることを「標準」としてきた日本社会において、一人暮らしの増加は、社会に少なくない影響を与えていくであろう。ライフスタイルの選択肢が多様になる一方で、貧困のリスク、要介護となった場合のリスク、社会的に孤立するリスクなどが高まっていくと考えられる。こうしたリスクに社会としての対応が求められている。

本稿では、まず単身世帯の増加の実態とその要因をみていく。その上で、単身世帯の増加が社会に与える影響とその対策について考察する。

1.単身世帯の現状と将来推計

まず、単身世帯の現状をみていこう。 2015年現在、日本では1842万人が一人暮らしをしており、全人口の14.5%にあたる(図表1)。全国で7人に1人が一人暮らしという状況だ。2010年の単身世帯数は1678万世帯(全人口の13.1%)だったので、2010年から2015年までの5年間で単身世帯は164万世帯、9.8%増加した。

ちなみに、国立社会保障・人口問題研究所が2010年の総務省『国勢調査』を基準に行った将来推計(2010年基準推計)では、2015年の単身世帯数は1764万世帯、2020年は1827万世帯と推計されていた1)。つまり、現実の2015年の単身世帯数(1842万世帯)は、同研究所の2015年の単身世帯数推計値(1764万世帯)を大きく上回り、2020年に到達すると推計された1827万世帯さえも超えている。言い換えれば、2015年の単身世帯数実績値は、2010年基準推計の値よりも5年分前倒しで進んでいる。

図表1 単身世帯の全体的動向―1970年からの長期的推移
図表1

(資料)2015年までの実績値は,総務省『国勢調査』。2015年以降の「単身世帯数」「総世帯数の推計」は、国立社会保障・人口問題研究所編『日本の世帯数の将来推計(全国推計)─2013年1月推計』。また,2015年以降の「総人口」の推計は、国立社会保障・人口問題研究所編『日本の将来推計人口(2012年1月推計)』(中位推計)。上記資料により、筆者作成。

2.2030年の単身世帯

今後の単身世帯数について、国立社会保障・人口問題研究所の将来推計(2010年基準推計)をみると、2030年の単身世帯数は1872万世帯になるとみられている2)。2030年の単身世帯数は、2015年から1.6%の増加にすぎない。今後、単身世帯数はほとんど増えないので、社会に与える影響は小さいと思われるかもしれないが、そうではない。なぜなら、若者の一人暮らしが減少し、中高年者や高齢者の一人暮らしが増えるなど年齢階層による増減が大きいからである。このため、マクロでみた増加率よりも社会に与える影響は大きい。

具体的には、2015年現在、男性で最も多くの単身世帯を抱えているのは20代である(図表2)。20代で単身世帯が多いのは、若者が進学や就職などを機に親元を離れて一人暮らしを始めるためだ。そして30代になると、結婚して2人以上世帯になる人が増えるので、20代から30代にかけて単身世帯数は減少していく。

一方、30代から60代にかけての単身男性数には凸凹がある。これは、30代以降、結婚のために「未婚」の単身世帯が減少する一方で、40代~60代にかけて「離別」した単身世帯が増加していくためである。また、40代と50代では、単身赴任によって一人暮らしとなる人が増えている。そして70代以降は、妻と「死別」した単身男性の比率が高まるが、女性の寿命が男性よりも長いので、男性の単身世帯数は減少していく。

女性をみると、20代から50代にかけて単身世帯数が減少していくが、60代から70代にかけては逆に増加に転じる。20代と70代を頂点とする2つのコブがあり、男性とはグラフの形状が異なる。単身女性が60代以降で増加に転じたのは、夫と死別して一人暮らしになる女性が増える影響が大きい。

ところが2030年になると、年齢階層別の単身世帯数は一変する。20代~40代の単身世帯数は、少子化の影響を受けて男女共に減少していく。その一方で、2030年に男性で最も多くの単身世帯を抱える年齢階層は50代となり、2015年の1.3倍になる。また、80歳以上男性、70代男性も、各々2015年の1.7倍、1.2倍になっていく。

女性をみると、2030年には80歳以上女性が最も多くの単身世帯を抱え、256万人にのぼる。2015年の1.5倍に増えていく。また、50代女性も、2015年の1.5倍になっていく。

このように、20代~40代の単身世帯数が減少する一方で、中高年や高齢者の単身世帯数が増えるので、社会に与える影響は大きい。

図表2 男女別・年齢階層別の単身世帯数の将来推計
図表2

(注)

  1. 2015年は実績値。2030年は,国立社会保障・人口問題研究所による2010年基準推計。
  2. 2015年は,総務省『平成27年国勢調査』に基づき,筆者が年齢不詳分を按分。このため,「国勢調査」の数値と一致しない。

(資料)国立社会保障・人口問題研究所『日本の世帯数の将来推計(全国推計)』(2013年1月推計),総務省『平成27年国勢調査』により、筆者作成。

3.なぜ単身世帯は増加するのか

では、なぜ2015年から2030年にかけて、80歳以上の男女、70代男性、50代の男女で単身世帯が増加していくのか。

80歳以上で単身世帯が増加していくのは、長寿化の影響と「団塊の世代」が80歳以上になることが主因である。年齢階層ごとに一定の割合で単身世帯がいるとした場合、その年齢階層の人口が増えればそれに伴い単身世帯数も増えていく。

一方、70代男性で単身世帯が増加していくのは、ライフスタイルの変化が主因と考えられる。具体的には、未婚化の進展や、妻と死別した高齢男性が子供と同居しない傾向が一因と考えられる。例えば、妻と死別した70代男性のうち、子供と同居する人の割合は、1995年の57.3%から、2010年には40.4%まで低下した。たかだか15年間で、同居率が17ポイントも低下した3)。今後も、この傾向が続くことが考えられる。

また、50代で単身世帯が増加していく最大の要因も、ライフスタイルの変化が主因である。具体的には、男性を中心とした未婚化の進展である。未婚者は、配偶者がいないので、単身世帯になりやすい。ちなみに、50歳時点で一度も結婚をしたことのない人の割合を「生涯未婚率」と呼ぶが、男性の生涯未婚率は85年まで1~3%台で推移した後、90年以降、急激に上昇を始め、2015年には23%となった。そして30年になると、男性の生涯未婚率は28%になると推計されている。女性の生涯未婚率も、2015年の14%が30年には19%に高まるとみられている4)

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