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事業実績と各拠点のマネージャーによる取組事例をふまえて

プロフェッショナル人材事業のこれまでの歩みと今後の展開について(1/3)

  • *本稿は、『しんくみ 2017年9月号』(一般社団法人 全国信用組合中央協会、2017年9月発行)に掲載されたものを、同協会の承諾のもと掲載しております。

みずほ情報総研株式会社 シニアコンサルタント 兼
プロフェッショナル人材戦略全国事務局 統括マネージャー 田中 文隆

地方創生関連施策として、政府は地域企業の成長と都市圏のプロフェッショナル人材の地方還流の拡大の実現を目的に、各道府県に「プロフェッショナル人材戦略拠点」を整備している。地域に密着し、地域企業の身近な存在である信用組合との親和性も高く、両者の連携による相乗効果が期待されるところである。

本稿では、プロフェッショナル人材事業のこれまでの歩みと今後の展開について言及するとともに、各拠点のマネージャーによる取組事例についても紹介したい。なお、本事業実施の詳しい背景については、本誌平成28年(2016年)9月号に掲載の「プロフェッショナル人材戦略拠点の概要と活動状況について」(内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局参事官補佐 熊倉俊男、14頁)をご参照いただきたい。

1.プロフェッショナル人材事業の実施の背景とスキームについて

(1)プロフェッショナル人材事業の実施の背景

本事業は、「しごと」が「ひと」を呼び、「ひと」が「しごと」を呼ぶ「ひと」と「しごと」の好循環を創ることを目的に実施されている。

我が国では、若年層を中心に、地方圏から1都3県への転入者が転出者を20年連続で上回るなど大都市圏への人口流入が続いている(総務省「住民基本台帳人口移動報告」平成27年(2015年))。これは、地方における単なる人口減少問題だけでなく、地域経済を牽引する地域企業の成長のための担い手不足という面でも問題となる。地方圏では多くの中小企業が地域経済を支えているが、300人未満の企業の大卒求人倍率をみると4倍を超えており、人材不足が顕著となっている(リクルートワークス研究所「第33回ワークス大卒求人倍率調査(2017年卒)」)。

一方、企業規模はさらに小さくなるが30人未満の事業所では、せっかく就職しても大卒者が2年以内に4割程度離職している現状がある(厚生労働省「新規学卒者の事業所規模別・産業別離職状況」)。地域企業にとっての人手不足は、若者からみれば、地方に魅力的な職場や「しごと」が不足しているという評価ともいえるだろう。

このような「地域しごと問題」に対して、「攻めの経営」への転換を決断、実行して若者の注目、ひいては地域の経営者からの注目を集めている企業がある。本事業のモデルとなった事例でもある。

中国地方にある液晶パネルの製造会社、オオアサ電子株式会社は、リーマン・ショックの影響を受け、当時売上の約8割を占めていた大口企業との外注ビジネスがゼロになってしまう危機に直面した。これをきっかけに、同社は下請け構造から脱却して自社製品の製造・販売に挑戦することを決意し、蓄積してきた技術をもとに高級スピーカーの開発に乗り出した。

不得手であったマーケティングや販路開拓については、大手電機メーカーで国内営業部の役員をしていた50代後半の人材を営業部長として招くなど、経営の大きな舵(かじ)を切った。同社の商品は、当該プロフェッショナル人材の経験や人脈が奏功し、大手量販店での販売が決まるなどビジネスチャンスを拡げている。

経験豊かなプロフェショナル人材が同社を選んだのは、大手のメーカーでは味わうことができない商品開発の企画から携わることに魅力を感じたからだという。その後、同社では新卒者等の獲得も順調に進んでいる。経営者自らが「攻めの経営への転換」を発信、取り組むべきミッションをクリアにすることで優秀な人材を獲得し、魅力的な事業(しごと)が若者を呼び寄せたといえるだろう。

(2)プロフェッショナル人材事業のスキームの特徴

本事業では潜在成長力のある地域企業に対し、プロフェッショナル人材の採用支援活動を行う「プロフェッショナル人材戦略拠点」を各地域に設置し、平成28年1月ごろから本格的に活動を開始した。各拠点は、地域企業の経営者を対象に、成長戦略や人材戦略への関心を引きつけるセミナー等の活動を展開しつつ、成長が期待される企業に個別に接触し、経営者に「攻めの経営」と新たな事業展開を促すことで、プロ人材に対する有望かつ明確なニーズを発掘し、人材市場に発信する。発信された求人情報は、拠点に登録されている人材紹介事業者を通じてマッチングされる。拠点は、地域金融機関や各種支援機関等とも、有望企業の発掘、アプローチなどで積極的に連携を行っている。

また、本事業ではプロフェッショナル人材の地域還流は多様な形態で実現されうることを意識して、大企業等からの出向・研修や兼業・副業等による人材還流にも着手した。さらなる打ち手として、地域企業の求めを起点とすることを条件として、都市部大企業等と連携した人材交流(出向・研修)施策も新たに開始している。2017年6月時点ですでに15社とパートナーシップを結んでおり、役職定年前後の人材や中堅の経験蓄積、親の介護等支援などの多様な活用が期待されている。

ロート製薬の「社外チャレンジワーク制度」など大手メーカーを中心に兼業・副業等を認める動きがあるように、場所に関係なく東京でも地方でも、その経験とスキルは活用されるようになるはずだ。国も「働き方改革実現会議」において、兼業・副業をアジェンダとして設定して、経済産業省を中心として実態調査を行ったほか、普及策等について議論を深める動きをみせている。

図1 プロフェッショナル人材事業のスキーム
図表1
出所:プロフェッショナル人材戦略ポータルサイト

図2 プロフェッショナル人材戦略拠点とパートナーシップ締結した都市部大企業等
図表2
出所:プロフェッショナル人材戦略ポータルサイト

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