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単身世帯急増時代の社会保障(1/3)

  • *本稿は、『週刊東洋経済』 2017年7月1日号(発行:東洋経済新報社)に掲載されたものを、同編集部の承諾のもと掲載しております。

みずほ情報総研 主席研究員 藤森 克彦

日本の社会保障の特徴は「家族」が大きな役割を果たしてきた点にある。たとえば介護だ。2000年に公的介護保険が導入されたとはいえ、要介護者のいる世帯に「主たる介護者」を尋ねると7割が「家族」と回答している。

他国を見ると、スウェーデンのように、主に「政府」による社会保障制度によって生活上のリスクに対応する国がある(図1)。また、米国では、「家族」でも「政府」でもなく「市場」から、本人が自己負担で介護サービスを購入して対応する傾向が強い。慶応義塾大学の権丈善一教授は、家族、政府、市場といった福祉の提供主体から福祉国家を三つに分類し、日本を「家族依存型」と指摘する。この分類は、日本の社会保障の特徴をわかりやすく示している。

日本では家族が大きな役割を果たしてきたため、政府が支出する社会保障給付費の支出規模は低い水準にある。一般に高齢化率が高い国は、社会保障費の規模も大きくなる傾向が見られるが、日本はそうなっていない。社会保障給付費よりもやや広い概念である「社会支出(対GDP〈国内総生産〉比)」と「高齢化率」をクロスさせてみると、日本の高齢化率はOECD(経済協力開発機構)33カ国中トップであるというのに、社会支出の対GDP比は全体的な傾向を示すラインを大きく下回っている(図2)。

ところが、日本の家族依存型の社会保障は現在、岐路に立たされている。世帯規模が小さくなって、世帯内の支え合い機能が従来よりも弱くなっている。その象徴が単身世帯の増加だ。単身世帯は、必ずしも家族のいない人ではないが、少なくとも同居人はいない。世帯内の支え合い機能が弱くなる中で、家族に依存してきた日本の社会保障は、どのような支え合い構造を築いていくべきか。単身世帯の増加の実態と単身世帯の抱えるリスクを見たうえで、求められる支え合い構造を考える。

図1 日本は福祉サービスを家族に依存
─福祉国家の3類型─
図1

(注)WF、WM、WGは、それぞれ家族、市場、政府が生産する福祉サービス
(出所)権丈善一(2017)『ちょっと気になる社会保障 増補版』(勁草書房)を基に一部筆者加工


図2 日本は高齢化率トップだが社会支出は少ない
─65歳以上人口比率と社会支出の対GDP比(2011年)─
図2

(出所)OECD Statを基に、みずほ情報総研作成

7人に1人が単身世帯「80歳以上」が最多に

まず、単身世帯の増加の実態を見ていこう。15年現在、日本では1842万人が一人暮らしをしており全国民の7人に1人(14.5%)が一人暮らしという状況だ(図3)。1985年は16人に1人強(6.5%)が一人暮らしだったので、この30年間で総人口に占める一人暮らしの比率は約2.2倍に高まった。

若者の一人暮らしならばさほど注目する必要はないだろう。しかし現在は、中年層や高齢者の一人暮らしが増えている。50代男性に占める単身者の割合は、1985年は5%だったが2015年には18%になった。今では、50代男性の5人に1人弱が一人暮らしだ。

一方、女性で単身世帯比率が大きく変化したのは80歳以上だ。80歳以上女性の一人暮らしは、1985年には9%だったが、2015年には26%に上昇した。実に、80歳以上女性の4人に1人が単身世帯になっている。

今後は2030年に1872万世帯が単身世帯になっていくとみられる。国立社会保障・人口問題研究所の将来推計(10年までの実績に基づく推計)の結果だ。15年比では1.6%増にすぎないが、社会に与える影響は決して小さくない。若者の一人暮らしが減少し、中年層や高齢者の一人暮らしが増えるからだ。

15年現在、最も多くの単身世帯がある年齢階層は「20代」だ。330万人が一人暮らしをしている(図4)。しかし、20代の一人暮らしは、少子化の影響を受け、30年までに2割ほど減る。

一方、30年になると、単身世帯の最多年齢階層は、「80歳以上」となる。334万人の80歳以上が一人暮らしとなっており、15年に比べて1.6倍に増えているとみられる。次に多い年齢階層が「50代」だ。30年には307万人の50代が一人暮らしとなり、15年の1.4倍になると推計されている。

図3 急増する単身世帯
─単身世帯の全体的動向・1970年からの長期的推移─
図3

(注)「2010年基準推計」は、総務省「平成22年国勢調査」など2010年までの実績値に基づく将来推計。このため、2015年実績値とは直接接続しない
(出所)2015年までの実績値は、総務省「国勢調査」。2015年以降の「単身世帯数」「総世帯数の推計」は、国立社会保障・人口問題研究所編「日本の世帯数の将来推計(全国推計)―2013年1月推計」、および同「日本の将来推計人口(2012年1月推計)」(中位推計)。上記資料により、みずほ情報総研作成


図4 80歳以上の1人暮らしが1.6倍に
─2015年と2030年の年齢階層別の単身世帯数の比較─
図4

(注)2015年は実績値。2030年は、国立社会保障・人口問題研究所による2010年を基準とした推計値。2015年は総務省「平成27年国勢調査」に基づき、筆者が年齢不詳分を按分。このため「国勢調査」の数値とは一致しない
(出所)国立社会保障・人口問題研究所「日本の世帯数の将来推計(全国推計)」(2013年1月推計)、総務省「平成27年国勢調査」より、みずほ情報総研作成

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