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再エネ発電由来の価値が上昇 J-クレジット制度の概要と直近の動向

  • *本稿は、『環境ビジネスオンライン』 (日本ビジネス出版、2018年6月4日発行)に掲載されたものを、同編集部の承諾のもと掲載しております。

みずほ情報総研 環境エネルギー第2部 コンサルタント 内藤 秀治

温室効果ガス削減量を国がクレジットとして認証

2015年12月、フランス、パリで開催されたCOP21にて採択され、その翌年11月に発効された「パリ協定」を契機に、世界的に気候変動対策が加速している。日本においても気候変動対策を重要な経営戦略として捉え、積極的に取り組む企業が現れている。また気候変動対策として、省エネ設備や再エネ設備の導入、適切な森林管理による温室効果ガス排出量の削減・吸収が挙げられる。

J-クレジット制度は、省エネ/再エネ設備の導入や森林管理における排出削減・吸収量を、国がクレジットとして認証する制度であり、中小企業・自治体等の省エネ・低炭素投資等を促進し、クレジットの活用による国内での資金循環を促すことで環境と経済の両立を目指している。

日本政府は平成28年5年13日に閣議決定した地球温暖化対策計画において、J-クレジットを「分野横断的な施策」と位置付けており、各年度における認証量目標を定めている。なお、平成28年度までのクレジット認証実績が目標を大きく上回っていたことから、目標は平成29年度に下図の通り上方修正された。平成30年度以降は、毎年100万トン程度の認証を目標としている。

図表1

クレジットの創出の際、制度で定められた方法法論(平成29年6月現在、計61種類)に基づいて排出削減量が算定されるが、その算定において原則となる考え方が「ベースラインアンドクレジット」である。これはベースライン排出量(対策を実施しなかった場合の想定CO2排出量)とプロジェクト実施後排出量との差を排出削減量とする考え方であり、機器効率や燃料の排出係数の変化など設備投資によって発生する『追加的な』排出削減量を算定する方法である。

図表2

例えば、照明設備1,000個(消費電力40W)を、照度が同程度の高効率な照明設備(消費電力10W)に更新し、1日10時間・365日使用した場合、ベースライン排出量とプロジェクト実施後排出量は以下の図のように考える。(照明稼働時間は同じであると想定する。)

図表3

近年、クレジットの需要は増加傾向に

認証されたクレジットの売買は原則、相対取引で行われており、購入者は(1)温対法における調整後排出量/調整後排出係数の報告、(2)省エネ法における共同省エネルギー事業への報告、(3)カーボン・オフセット/CSR活動への活用、(4)ASSET事業の削減目標達成への利用、(5)CDP質問書への報告、(6)低炭素社会実行計画の目標達成等に活用することができる。

クレジットの無効化・償却量は近年大幅に増加しており、特に温対法における電力の排出係数調整への活用が加速している。これは、(1)平成27年11月以降、京都メカニズムクレジット(ERU、CER等)が温対法上、使用できなくなったことで、その代替としてJ-クレジットの需要が増加したこと、(2)平成28年度の電力小売全面自由化に際し、電力の排出係数の調整によるクレジット需要が増加したことに起因していると考えられる。

図表4

また上述した「CDP質問書への報告」も注目を集めている。CDPとは、企業の環境情報の収集、分析、公表を行う国際NGOであり、送付されたCDP質問書に対する各企業の回答を基に分析された企業の情報は、世界の機関投資家に多く利用されている。この質問書には再エネ調達に関する質問項目があり、そこに各企業は再エネ発電由来のJ-クレジットの活用を報告することができるようになった。更に、2018年2月に改定された環境配慮契約法では、再エネ発電由来のクレジットの電力相当量が、「再生可能エネルギーの導入状況」の中で評価される仕組みとなった。従って、クレジットの需要は今後も更に増加することが期待される。

なお、クレジットの調達は原則相対取引で実施されるが、J-クレジット制度事務局においても不定期でクレジットの入札販売を実施している。これまでに5回開催しており、第4回からは再エネ発電由来のクレジットとそれ以外(これまでの入札販売は全て省エネ由来)に分け販売を実施した。落札額の平均値は入札回毎に変動しているが、第4回・第5回の入札販売結果を見ると、再エネ発電由来のJ-クレジットの価値が高まっていることが分かる。

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入札回 開催時期 落札加重平均価格(税抜)
第1回 平成28年6月 510円/t-CO2
第2回 平成29年1月 1,594円/t-CO2
第3回 平成29年4月 908円/t-CO2
第4回 平成30年1月 再エネ発電
1,716 円/t-CO2
省エネ他
1,148 円/t-CO2
第5回 平成30年4月 再エネ発電
1,724円/t-CO2
省エネ他
1,395円/t-CO2

クレジット創出を通じた、効果的な気候変動対策のPRへ

J-クレジット創出のメリットとしてクレジット売却収益は言うまでもないが、クレジット売却を通じた気候変動対策への取組みをPRすることや、販売先と新たなビジネスを始めるきっかけになることも大きなメリットと言えよう。例えば、自社周辺のクレジットを購入した企業が、購入したクレジットの紹介と共に地域貢献やクレジットの地産地消支援をPRすることで、クレジット創出者の気候変動対策への取組みが間接的にPRされることになる。

更に、これまでクレジットを購入していた企業が、自らクレジットを創出する事例も増えつつあり、J-クレジット制度への参加者も多様化している。

どのような種類のクレジットであったとしても、「1t-CO2」という環境価値は変わらない。ただし、クレジット創出者・購入者が連携することで上述した更なるPRも可能であり、クレジットの需要増加と併せて、クレジット創出者が増えることを期待したい。

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