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化学物質の危険性のリスクアセスメント支援について(1/2)

  • *本稿は、『セイフティエンジニアリング』 vol.188 (公益財団法人総合安全工学研究所、2017年9月1日発行)に掲載されたものを、同編集部の承諾のもと掲載しております。

みずほ情報総研 環境エネルギー第1部 コンサルタント 貴志 孝洋

1.はじめに

改正労働安全衛生法の改正に伴い、2016年6月1日から労働安全衛生法施行令第9に掲げる663の化学物質及びその製剤(以降「663物質」という)について、製造あるいは取り扱うすべての事業者に対し、危険性(化学物質に起因する発火、爆発、火災等)または有害性(毒性に起因する健康影響)のリスクアセスメントを実施することが義務付けられた。ここでの大きなポイントは、[1] 危険性、有害性どちらか一方のリスクアセスメントの実施だけでよいという意味ではないこと、[2] 事業者の規模や業種の限定はなく、663物質の製造、取り扱いを行うすべての事業者がリスクアセスメントの実施を求められていることにある。つまり、製造業の事業者だけではなく非製造業(建設業、清掃業、卸売・小売業、飲食店、医療・福祉業など)であっても、663物質を取り扱う事業者はリスクアセスメントを実施することが求められている。

現在、厚生労働省では、事業者による労働安全衛生法に基づくリスクアセスメントの実施を支援するため、「爆発・火災等のリスクアセスメントのためのスクリーニング支援ツール」(危険性)および「コントロール・バンディング」(有害性)などを「職場のあんぜんサイト」にて公開している。ここでは、前者の支援ツールについて簡単に紹介するとともに、その他公開されている危険性のリスクアセスメントを支援するツール等についても触れることとする。

なお、これまで労働安全衛生法施行令第9に掲げる化学物質は640物質であったが、2017年3月1日に、27物質及び物質群が追加され、合計663物質が対象となった1)(一部重複等があり、667物質ではなく663物質であることに注意)。

2.爆発・火災等のリスクアセスメントのためのスクリーニング支援ツール

本支援ツールは、みずほ情報総研株式会社が厚生労働省委託業務の一環で開発したチェックフロー形式の簡易なリスクアセスメント手法であり、危険源ごとに災害事例を併せて提供することで、災害に至るシナリオ作成を支援するツールである。これは、指針(化学物質等による危険性又は有害性等の調査等に関する指針)の「災害のシナリオから見積もる方法」に対応している。2016年は、当該ツールのドキュメント版が公開されていたところであるが、2017年2月に、コントロール・バンディング同様、職場のあんぜんサイト上で使用可能なWebシステム版が公表された2)

(1)チェックフローの例

本支援ツールは、[1] 化学物質の危険性、[2] 作業・プロセスの危険性、[3] 設備・機器の危険性、[4] リスク低減措置の導入状況の4つの観点から取り扱う化学物質や作業に潜む危険性やリスクの大きさを簡易に「知る」ことを目的としたツールである。

図1に、作業・プロセスの危険性のチェックフローを示しているが、原則として「はい」か「いいえ」で答えるだけで代表的な危険性や事例を知ることや、リスク低減措置の導入状況についても確認が可能である。これにより、危険性が顕在化するシナリオや可能性を検討することを支援する。

図1 チェックフロー(作業・プロセスの危険性)
図表1

(2)リスクアセスメントの流れ

当該ツールを用いたリスクアセスメントの流れは、図2のとおりである。

まず、[1] 危険性に関する情報をSDS(Safety Data Sheet:安全データシート)などから収集し、[2] 収集した情報に基づき作業やプロセスごとに4種類のチェックフローを用いてスクリーニングを実施する(設問に対し、「はい」か「いいえ」で回答する)。[3] その結果を用意している結果シートに記載し、リスクの大きさを判断のうえ、付属のガイドブックなどを活用してリスク低減措置の内容について検討のうえ結果シートを保管する(必要に応じてリスク低減措置を導入する)とともに従業員などと共有する。[4] さらに保管した結果シートを活用し、定期的な危険性などの確認を実施する。なお、ここでのポイントは、当該ツールは、指針におけるリスクアセスメントに使用することが可能である一方で、代表的な危険性を対象としたツールであるため、すべての危険性を対象としているものではなく、スクリーニングであることに留意されたい。

図2 リスクアセスメントの流れ(危険性)
図表2

(3)Webシステム版

2017年2月に、上記のようなリスクアセスメントがWeb上でも可能となるよう、化学物質による爆発・火災等のリスクアセスメントのためのスクリーニング支援ツールWebシステム版が公表された。このWebシステムでは、対象物質のGHS(The Globally Harmonized System of Classification and Labelling of Chemicals:化学品の分類および表示に関する世界調和システム)情報の自動入力や、対象物質や危険性ごとに代表的な事故事例の例示なども可能としており、事故に至るシナリオの検討を支援することに加え、リスクアセスメントの実施内容等がPDF形式で出力されるなど、従業員へのリスクアセスメントの内容の周知(義務)にも対応している。

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