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2025年:単身世帯が1996万世帯 加速する「ソロ社会」化

  • *本稿は、『2020年 日本の大問題』(洋泉社、2018年8月30日発行)に掲載されたものを、同編集部の承諾のもと掲載しております。

みずほ情報総研 主席研究員 藤森 克彦

2015年から25年の単身世帯の増加状況

国立社会保障・人口問題研究所が公表した直近の将来推計によれば、2025年の単身世帯(1人暮らし)は、2015年より8.4%増えて1996万世帯になるとみられている(2015年基準推計)。総人口に占める1人暮らしの割合は16%となり、2015年の「7人に1人が1人暮らし(14%)」という状況が、「6人に1人強が1人暮らし」に変わる。

このように2015年からの10年間で単身世帯数は1割弱増加していくが、社会に与える影響は、この数値以上に大きい。というのも、今後、20代から40代までの若い層の1人暮らしが減り、50代以上の1人暮らしが増加していくためだ。具体的には、2015年から25年にかけて、20代から40代の単身世帯数は全体で8%減少する。これは、少子化によって、これらの年齢階層の人口が減少していくためだ。その一方で、50代以上の年齢階層では、全体で23%も単身世帯数が増えていく。

特に注目すべきは、80歳以上の単身世帯の増加である。80歳以上の単身女性は25年までに34%増加して223万人となり、全年齢階層の中で最も多くの単身世帯を抱える。また、伸び率という点では、70代男性と80歳以上男性で単身世帯の伸びが高い。70代単身男性の伸び率は51%、80歳以上の単身男性の増加率は55%も伸びていくとみられている。

男女別年齢階層別の単身世帯数(2015年・2025年)
図表1

(注) 2015年は実績値。2025年は、国立社会保障・人口問題研究所による2015年を基準とした推計値。
(資料)国立社会保障・人口問題研究所「日本の世帯数の将来推計(全国推計)」(2018年1月推計)、総務省「平成27年国勢調査」により作成。

なぜ高齢者で1人暮らしが増えるのか

では、なぜ高齢者、特に80歳以上で1人暮らしが急増するのか。単身世帯の増減要因は、各年齢階層の人口増減の影響(人口要因)と、人々の世帯形成行動の変化の影響(非人口要因)に分けられる。

まず、80歳以上の単身世帯の増加は、人口要因の影響が大きい。長寿化によって80歳以上人口が増えていくので、それに伴って80歳以上の1人暮らし高齢者も増加する。ちなみに、80歳以上女性に占める一人暮らしの割合は、2015年(26%)と25年(27%)ではほとんど変化はない。

一方、小さな影響であるが、80歳以上の単身男女では非人口要因の影響もみられる。また、70代単身男性では、人口要因よりも非人口要因の影響が大きい。では、非人口要因とは何か。

非人口要因のひとつとして考えられるのは、老親とその子どもとの同居率の低下である。すでにこの傾向は進んでおり、妻と死別した80歳以上の男性とその子どもとの同居率は、1995年の67%が2015年には43%まで低下した。

もうひとつの要因は、未婚化の進展である。生涯で一度も結婚したことのない人を「未婚者」と呼ぶが、未婚の高齢者は兄弟姉妹などと同居しない限り単身世帯になりやすい。男性の未婚率は2015年は24.2%、2025年は27.4%、女性はそれぞれ14.9%、18.9%。高齢者に限ってみていくと、65歳以上の男性の未婚率は、2015年には5.9%であったが、2025年には9.0%になると推計されている。一方、65歳以上女性の未婚率も2015年の4.5%から2025年には5.2%に高まるが、高齢男性ほどの急激な上昇ではない。

以上のように、2025年には、今よりも80歳以上を中心に高齢者で単身世帯が増えていく。また、高齢男性を中心に未婚化が進んでおり、高齢単身者に占める未婚者の比率も高まっていく。未婚の高齢単身者は、配偶者だけでなく子どももいないので、老後を家族に頼ることがいっそう難しくなるだろう。

年齢階級別に見た単身世帯の伸び率(2015~2025年)の要因分析
図表2

(注) 2015年は実績値。2025年は、国立社会保障・人口問題研究所による2015年を基準とした推計値。
(資料)国立社会保障・人口問題研究所「日本の世帯数の将来推計(全国推計)」(2018年1月推計)、総務省「平成27年国勢調査」により作成。

高齢単身世帯の増加が社会にもたらす影響

では、こうした変化は、社会にどのような影響を与えるのか。

これまで日本では介護、貧困、孤立などの生活上のリスクに対して、家族が大きな役割を果たしてきた。しかし、単身世帯は少なくとも同居家族がいないので、こうしたリスクへの対応が難しい。

例えば、介護分野に目を向けると、2000年に公的介護保険が導入されたとはいえ、要介護者を抱える世帯に「主たる介護者は誰か」を尋ねると、その7割が「家族」と回答している。しかし、高齢単身世帯では、同居家族による介護を期待できない。

では、実際に1人暮らしの人が介護を必要とする場合、誰が「主たる介護者」となっているのか。世帯類型別に比較すると、単身世帯では、主たる介護者の50.2%を「事業者」が占め、最も高い割合を占めている。残りの4割程度を「子」や「子の配偶者」といった別居家族が担っている。

これに対して、夫婦のみ世帯では、主たる介護者の8割強を「配偶者」が占め、事業者の割合は、7.2%である。また、三世代世帯では、「子の配偶者」「子」「配偶者」が9割を占め、「事業者」の割合は2.4%に過ぎない。

このように単身世帯では、他の世帯類型と比べて、「事業者」が主たる介護者となる比率が高い。問題は、介護需要を充足できるだけの介護職員を増やしていけるのか、という点である。厚生労働省によれば、介護人材需要は、2013年度の171万人から2025年度には253万人に増加すると見込まれている 。年平均に換算すると、2013年度から2025年度にかけて毎年約7万人の介護職員を増やす必要がある。

一方、日本の生産年齢人口(15~64歳)は、2015年の7728万人が2025年には7170万人に減少すると推計されている。年平均に換算すると、生産年齢人口は、毎年約56万人減少していくことになる。したがって、今後日本では、年平均で56万人の生産年齢人口が減少する中で、約7万人の介護職員を増やしていく必要がある。ほかの産業分野でも、構造的に人手不足となる可能性があるので、介護職員を増やしていくことは今よりも難しくなるだろう。介護報酬を引き上げて介護職員の処遇を改善することは必須である。

では、高齢単身世帯の増加に備えて、どのような対応が求められるのだろうか。第一に、財源を確保して、社会保障の機能強化を図ることが重要だ。先の介護を例に挙げれば、介護保険料を引き上げ介護職員の処遇を改善して、「介護の社会化」を進める必要がある。

この点、税や社会保険料を引き上げれば、経済成長の足かせになるという批判もある。しかし、社会保障は経済成長を下支えする機能をもつ。例えば、介護職員を確保できなければ、介護離職者の増加を招き、労働力不足はいっそう深刻になるだろう。また、社会保障が不安定であれば、人々は将来不安から貯蓄に励んで消費を過剰に減らす可能性がある。

第二に、地域での支え合いの強化だ。身寄りのない1人暮らし高齢者であっても、住み慣れた地域で安心して自立した生活を送れるように、政府は、医療・介護・生活支援などの供給者が地域ぐるみで高齢者を支える「地域包括ケアシステム」の構築を進めている。

一方、供給者サイドのネットワークだけでなく「住民サイドのネットワーク」の構築も重要である。地域の住民同士で交流し、支え合える関係をどのように築いていくのか。特に、今後75歳以上の高齢単身者が増えていくのは大都市圏である。大都市圏の大規模団地やマンションなどでは、隣近所と人間関係が築かれていないことも珍しくなく、どのように住民ネットワークを築いていくのかは大きな課題となっている。

確かに、巨額な財政赤字を抱えるなど重苦しい現実はある。しかし、財源を確保して「支え合う社会」を構築することは、国民の合意できることである。誰もが単身世帯になる可能性があるのだから、社会として生活上のリスクに対応することが求められている。

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