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改正労働安全衛生法に基づくリスクアセスメントと個人ばく露測定の活用(その2)(1/2)

  • *本稿は、『環境と測定技術』 No.11 Vol.45 (一般社団法人日本環境測定分析協会、2018年11月20日発行)に掲載されたものを、同編集部の承諾のもと掲載しております。

みずほ情報総研 環境エネルギー第1部 貴志 孝洋

前報(本誌 No.9, vol.45, 2018年掲載)では、改正労働安全衛生法に基づくリスクアセスメントに関する基本について解説したところであるが、本報では、個人ばく露測定を含む測定技術に関する最新の動向などについて解説する。なお、測定技術のうち簡易測定法のひとつである検知管を用いた化学物質のリスクアセスメントについては、「ガス検知管の基礎と検知管を用いた化学物質のリスクアセスメントについて1)」及び厚生労働省「職場のあんぜんサイト」にて公開されている「検知管を用いた化学物質のリスクアセスメントガイドブック」を確認されたい。

1. はじめに

1.1.作業環境測定の意義

前報でも触れているが、改正労働安全衛生法が改正され、一定の危険有害性を有する化学物質を製造あるいは使用する事業者はリスクアセスメントを実施することが義務化されているが、リスクアセスメントの本来の狙いは、事業場で働く作業員や従業員、つまり「仲間の健康と安全を守る」ことにあると考えている。あくまでも、リスクアセスメントは数ある手段のひとつであり、「リスクアセスメントを実施すること」自体は目的ではない。これは、作業環境測定についても同じことが言えるのではないだろうか。一部の事業者においては、特定化学物質障害予防規則(特化則)や有機溶媒中毒予防規則(有機則)などの対象物質を取り扱っているから作業環境測定を実施しているだけなど、「作業環境測定を実施する」こと自体が目的となってしまっている状況にあるのではないかと懸念している。しかしながら、作業環境測定は、その測定結果を活かして作業環境を改善し、事業場で働く作業員や従業員、つまり「仲間の健康と安全を守る」ことを可能とする手段であり、そこに意義があると考えている。

1.2.安全配慮義務と作業環境測定

かつて安全配慮義務は、労働契約に付随する義務とされており、あくまで判決の中で用いられてきた考え方であったが、平成20年に施行された労働契約法の第5条において、はじめて明文化された。具体的には、[1] 「危険発見」、つまり化学物質の危険有害性を発見(予見)する義務と[2] 「事前排除(予防)」、つまりリスクを除去・低減あるいは労働者にリスクを知らせ、リスクを顕在化させない対策を講じる義務を指している。作業環境測定によって、作業場の気中濃度が明らかになるため、「危険発見」という観点から大きな意義があり、測定結果を基にすることでリスクの除去・低減につなげることが可能となるため、「事前排除(予防)」という観点からも大きな意義があると考えている。

2. 作業環境測定に係る厚生労働省の動向

2.1.職場における化学物質管理の今後のあり方に関する検討会2)

平成22年1月から6月にかけて、厚生労働省において「職場における化学物質管理の今後のあり方に関する検討会」が開催され、[1] 有害物の発散が1日に数回しかなく、それ以外は無視できるほどの低濃度となる工程が行われている作業場(間歇作業)や、[2] 有害物が発散する区域に労働者は1日数回しか立ち入らず、その外部には有害物が漏えいしない作業場(作業者が単位作業所外に移動する作業)の場合、作業環境測定(A測定及びB測定)では過度に有害な作業として評価されてしまい、設備の改善などが求められるおそれがあることが指摘されている。さらに、有害物の発散源に近接して行うような作業の場合(作業者の呼吸域におけるB測定が困難な場合)、作業環境測定では作業環境中の濃度が過小に評価されてしまうおそれも指摘されている。

2.2.作業環境における個人ばく露測定に関する実証的検証事業3)

平成22年1月から6月にかけて、厚生労働省において「職場における化学物質管理の今後のあり方に関する検討会」が開催され、[1] 有害物の発散が1日に数回しかなく、それ以外は無視できるほどの低濃度となる工程が行われている作業場(間歇作業)や、[2] 有害物が発散する区域に労働者は1日数回しか立ち入らず、その外部には有害物が漏えいしない作業場(作業者が単位作業所外に移動する作業)の場合、作業環境測定(A測定及びB測定)では過度に有害な作業として評価されてしまい、設備の改善などが求められるおそれがあることが指摘されている。さらに、有害物の発散源に近接して行うような作業の場合(作業者の呼吸域におけるB測定が困難な場合)、作業環境測定では作業環境中の濃度が過小に評価されてしまうおそれも指摘されている。

2.3.個人サンプラーを活用した作業環境管理のための専門家検討会4)

現行の作業環境測定は、作業環境測定基準による場の測定が行われているものの、気中への発散の変動が大きい場合や、作業者の移動が大きく場の測定のデザインが困難な場合などでは、適切な作業環境の評価とならないことがある。前節1.1.及び1.2に加え、個人サンプラー測定技術の進歩や、測定のデザインと結果の各種評価方法についてコンセンサスが得られつつあることなどを踏まえ、厚生労働省では、個人サンプラーを活用した測定についての検討を行うため、「個人サンプラーを活用した作業環境管理のための専門家検討会」を開催している(平成30年9月現在)。さらに、当該検討会では、作業環境が良好な事業場についての測定頻度の低減など、合理的な作業環境管理が可能となるよう必要な事項の検討も行われている。

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