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「SDGs」経営のメリットと取り組み方(1/3)

  • *本稿は、大阪府中小企業団体中央会の冊子『中小企業にも大きなチャンス!「SDGs」経営のメリットと取り組み方』(2020年9月30日発行)に掲載されたものを、同会の承諾のもと掲載しております。

みずほ情報総研 グローバルイノベーション&エネルギー部 山本 麻紗子

はじめに

SDGs(Sustainable Developent Goals:持続可能な開発目標)が2015年の国連サミットにおいて、2030年までに達成すべき社会課題解決の目標として採択されてから約5年。日本でも広く認知されるようになったSDGsですが、新たなビジネスチャンスとして使いこなす企業はまだまだ少ないのが現状です。

中小企業がSDGsに取り組む際、人材や資金の不足は大きな課題ですが、意思決定のスピードの速さ、柔軟性の高さや地域との密着性の高さ等の面から、中小企業にはSDGsに取り組みやすい土壌があるといえます。

本稿では、まず日本企業にとってSDGsが経営戦略上、重要な目標となりつつある背景と経緯を説明し、SDGsを活用したビジネスデザインについて、中小企業がどのようにSDGsを導入できるのかについて解説します。

1.SDGsとは

(1)SDGsを巡る企業参入の背景と17の目標の構成

SDGsとは、“Sustainable Developent Goals”の略称で、日本語では、「持続可能な開発目標」と訳されます。2030年を期限とし、社会、経済、環境の調和を追求する目標の枠組みであり、2015年の国連総会において採択されました。

SDGsは貧困、飢餓といった開発途上国に寄った課題だけでなく、気候変動、イノベーション、働きがい等、先進国の課題も内包します。また、SDGsはすべての人々にとって「どういう状態になっているべきか」という成果目標です。成果の達成に向け、課題解決のためのソリューションやイノベーションが必要であり、そこには大きな市場が潜在します。2017年のダボス会議において、SDGsに関連する市場が12兆ドル、創出される雇用の規模が3億8000万人との推計が出されたことにより、経済界がSDGsにコミットする一つの契機となりました。

SDGsの17の目標の構成を見てみると、目標1~6で人間生活の基盤となる「持続的な社会を創出」し、目標7~12で「持続的な経済を創出」しつつ、目標13~15で社会・経済を取り巻く「環境を保護・育成する」という段階を踏んでいます。目標16・17は目標1~15を実行するための手段として、平和・公正と関係者間の連携を掲げています(図表1参照)。

SDGsの目標は相互に関連しており、必ずしも何か一つの目標を達成して完結するものではありません。例えば、都市ゴミ処理への取組は、目標11「住み続けられるまちづくりを」に該当しますが、衛生環境整備という意味では、目標3「すべての人に健康と福祉を」や目標6「安全な水とトイレを世界中に」にも合致します。さらにバイオマス発電等のビジネスにつなげられれば、目標7「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」にも合致する多様な展開が想定されます。このように、SDGsで掲げられた未来像の実現のためのニーズを探っていくと、ありとあらゆるSDGsビジネス展開の可能性が考えられます。


図表1 SDGs 目標の構成
図1

出所:外務省「持続可能な開発のための2030 アジェンダと日本の取組」をもとにカテゴリー分けはみずほ情報総研

(2)SDGsとESGの違い

企業の持続可能性という文脈では、「ESG」も注目されています。ESGとは、環境(Environent)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の略称であり、ESG投資とは社会や環境を意識した投資のことで、近年ではこれらの投資は財務リターンが高く、投資リスクが小さいと捉えられるようになり、企業にとっては財務+αの指標という認識です。

一方、SDGsは現在のステークホルダー(顧客、株主等)から未来のステークホルダーにまで広がる新たな事業機会です。SDGsは世界全体の共通言語であることもあり、企業としての活動の意義を世界において共有するツールとなり得ます。

ESGとSDGsはともに企業の持続性に関連するため、それぞれの違いが分かりにくい面がありますが、ESGは企業の現状についての投資家等のステークホルダーにとっての評価であり、SDGsは企業の未来に向けた活動であると考えると分かりやすく、概念的には、ESGはSDGsに包含されます(図表2参照)。

国民の年金を預かるGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)は、2017年からESG投資をスタートさせ、中長期の投資に財務(経済)だけでなく、環境や社会の要素に配慮した投資に力を入れるようになりました。また、日本経団連もSDGsを前面に打ち出した「企業行動憲章2017」を公表し、民間企業の間で、環境・社会に関わる一連の動きを促進させようという機運が高まっています。


図表2 SDGsとESG
図2

出所:みずほ情報総研作成

2.中小企業がSDGsに取り組む意義とメリット

(1)SDGsによる企業価値の創造

前項でも述べたとおり、財務(経済)だけでなく、環境や社会に配慮した投資(ESG投資)が世界中で急速に拡大しており、気候変動等の環境問題や、公正な労働環境等の人権問題のような社会課題に対する企業の対応が、中長期的に企業価値に影響を与えるという認識が資本市場で確実に広がっています。

今後、投資家は株価を安定化させるため、ESG投融資(サステナブル投融資)を一層積極的に行っていくと考えられます。社会的課題解決に貢献するための資金をサステナブルではないプロジェクトに投じるわけにはいきません。つまり、そうしたサステナブル投融資を調達した企業もまたSDGsに貢献する投資<サステナブルなビジネスモデルへの転換>を行う必要があります。それはまた、SDGsに貢献する企業活動へのキャッシュフローが企業価値向上に貢献していくことでもあります(図表3参照)。

EUでは、「EUサステナブル・ファイナンス行動計画」により、パリ協定やSDGsに貢献する企業活動への資金フローを促進しています。日本もまた、欧米で実際に起きている化石燃料関連(石炭、石油、ガス関連事業)からのダイベストメント(投資撤収)等、企業行動を変えるような社会的な動きが徐々に広がりつつあります。このようなサステナビリティの潮流は、投資家行動に変化をもたらし、企業の対応を通じて将来的に産業構造を変化させます。企業には、将来の産業構造変化を見据え、柔軟性・弾力性のある事業戦略の策定が求められています。日本企業にとっても、短期的に対応可能な「財務・資本戦略」と中長期的な時間軸での対応が必要となる「事業戦略」を連関させた貸借対照表(B/S)のサステナビリティ化を進めることが、企業価値向上や競争力強化につながるといえます。


図表3 SDGs による企業価値の創造
図3

出所:みずほ情報総研作成

(2)日本企業がSDGsに取り組むメリット

SDGsに取り組もうとしている企業の中には、CSR(Corporate Social Responsibility:企業の社会的責任)と同様、SDGsを「コスト」として捉えているケースもありますが、SDGsは様々なマーケットで新たな事業機会を生み出す「ビジネスチャンス」といえます。

また、品質を重視し、確実に事業を遂行し、地域社会を重視することは日本企業の美点でもあり、これらが投資インパクトの大きさにもつながっており、SDGsが目指す未来像との親和性が高いのです。SDGsビジネスへの参入を促進するためには、自社の理念・戦略や既存事業とSDGsとの紐付けのみならず、新規事業を立ち上げる段階において、SDGsを達成することを念頭に事業を設計する必要があります。

SDGsの目標から想定される課題、それに対するソリューションとなる商品・サービスは何かを洗い出し、SDGsビジネスのコンセプトを策定、それに基づくSDGsビジネスモデルを検討することで、日本企業が新たなビジネスチャンスを見出し、社会課題の解決に貢献することが可能になると期待されます。

(3)中小企業がSDGsに取り組むメリット

SDGsの達成には、民間企業によるイノベーションやそれを伴う商品・サービスが必要とされており、日本の企業数の99%、従業員数でも約70%を占める中小企業に期待される役割は大きいといえます。中小企業がSDGsに取り組むメリットは主に5点です(図表4参照)。


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図表4 中小企業がSDGsに取り組むメリット
[1] 地方創生 中小企業の主な市場は地域です。地域との関係強化を意識することで、地域に おける新たな役割や市場創出を想起していくことが期待されます(図表5参照)。
[2] ビジネスアイデア獲得 中小企業の役割は部品等の中間材の製造です。大企業の設計図どおりに作るだけではなく、自社事業をSDGs の目標と結び付けることで、自社製品が社会に貢献することをイメージする、さらには新たな製品開発に結び付けるような思考を生み出すことが期待されます。
[3] 将来の人材獲得 多くの中小企業は人材獲得に苦労しています。SDGs に取り組むことは持続可能な企業を目指すことであり、これは社会課題への対応のアピールになり、企業の信頼性の高まりや質の高い人材の確保、従業員のモチベーション向上による定着率の向上等、人材獲得機会の増大が期待されます。
[4] 新しいビジネスパートナー獲得 SDGs を通じて自社事業を強化したり、新規事業を立ち上げたりする過程において、これまでのステークホルダー(顧客・取引先等)とは異なるビジネスパートナー(他業種企業、研究機関等)が見つかり、ネットワークが拡大する可能性があります。SDGs の目標17「パートナーシップで目標を達成しよう」には、企業が構築する様々な組織との連携も含まれ、SDGs の達成に資する内容であれば、SDGs に取り組む企業とみなされ、企業評価の向上につながります。
[5] 海外展開 一部の中小企業では新たなビジネスの舞台として、海外市場に関心を向けています。海外市場でのビジネス機会獲得のため、世界共通言語である「SDGs」を通じて現地との関係強化を図っていくことが期待されます。

(4)中小企業がSDGsに取り組む際の課題

意思決定のスピードの速さ、柔軟性の高さや地域との密着性の高さ等の面から、中小企業にはSDGsに取り組みやすい土壌があるといえます。他方、CSRや環境に関する専門の部門を持つ大企業とは異なり、中小企業がSDGsに取り組む際に「マンパワーの不足」や「資金の不足」は大きな課題です。

これに対し、政府や自治体では、中小企業や地方企業のSDGs導入を促進する取組を行っています。例えば、金融庁は、地域金融機関が地元企業のニーズを捉えた付加価値の高いサービスを提供することで、安定した顧客基盤と収益を確保できると期待し、地域金融機関と地元企業との共通価値の創造に向けてSDGsが有効であると公言しています。そのために、金融庁は、地域金融機関が地元企業のSDGsへの取組を適切に評価することや、それに基づく融資、本業支援を促進しています。


図表5 中小企業と地域社会との協働の意義
図5

出所:みずほ情報総研作成

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