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[特集] 多様で柔軟な働き方が会社を強くする

キャリア継続を支援するフレキシブルな再雇用制度

再雇用制度が整備されていれば、さまざまな事情を抱える社員が安心して働くことができ、キャリアの継続やスムーズな復帰が可能となる。
即戦力人材を確保する手段としても注目される再雇用の制度について、ユニークでフレキシブルな取り組み紹介する。

再雇用制度で優秀な人材の確保を図る

労働力人口が減る中で人材を確保する方策として、企業が近年導入し始めている対策の一つが、退職した社員の再雇用制度だ。かつて社員だった人材であれば、スキルや人柄がすでにわかっているため安心して採用でき、また社内風土や業務内容に精通している人材として即戦力となる。さらに、退職後に社外で得たスキルや経験を活かしてもらうことも期待できる。警視庁では、2016年度に「再採用制度」を導入し、子育てや介護などやむを得ない理由により退職した元警察官を対象に復帰の道を開いている。2017年2月には、女性警察官3名に再採用辞令が交付された。

富士通株式会社では、1988年から再雇用の制度を導入し、法改正や環境の変化に伴い、何度か制度改訂を行ってきた。しかし、勤続3年以上の育児・介護による退職者に限定された制度で、退職時に所属長が推薦し登録する必要があるなど条件面が厳しかったためか、十分活用されていなかった。

そこで、この制度をブラッシュアップし、2016年春から「カムバック制度」として運用を開始した。新制度は、対象を配偶者の転勤や学業による離職、転職まで拡大するなど条件面の柔軟性を高めた。この大胆な緩和策について、同社 人事本部 労政部 マネージャーの黒川和真氏は「人材の流動化が進む現在、優秀な人材には機会があれば戻ってきてほしいという意見が社内では圧倒的だった」と話す。ICT業界では、新たな経験や勉強がしたいという理由で転職する人材は少なくない。同社はそれを、キャリア志向の高い、優秀な人材であると解釈し、再雇用の門戸を開くことにしたのだという。「さまざまな事情を抱える多様な社員が働きやすい環境、活躍できる場を作ることが、会社の持続的な成長にもつながっていくと考えた」(黒川氏)。

そのほかの条件も緩和し、勤続1年以上であれば応募可能とした。また、応募期間も退職後5年以内までに広げ、5年を越える場合は、通常のキャリア採用で応募してもらうなど、復帰を希望する人には柔軟に対応していく構えだ。退職時の登録も不要とし、同社ホームページ内に専用窓口を開設して、応募フォームからエントリーできるようにした。応募があれば、かつて働いていた部署と人事部にて人員の必要性を確認し、面接を行う。

再雇用となった場合の配属先は、基本的には前職と同じ部署を想定しているが、組織改編や応募者の退職後の職歴によっては、新たな部署に配属される場合もあるという。また、雇用区分についても、有期契約社員としての採用に限定していた従来制度を変更し、会社の必要性や本人の希望に応じて、正社員としての採用も可能とした。有期契約社員としての採用であれば、短時間勤務に加え、短日勤務も選択することができる。

同制度は導入してまだ1年しか経過していないため実績は少ないが、旧制度を利用して有期契約社員として復帰していた人が正社員としての雇用を希望し、改めて応募して採用されたケースや、転職した人が元の部署の社員から声をかけられて正社員として復帰したケースなどがあるという。今後は制度の利用を促すためにも、社内外に周知を図っていきたいという。同部の菊地麻世氏は、「カムバック制度があることで、育児や介護などさまざまな事情を抱える社員が安心して働くことができるのではないか」と話す。

また富士通は、2017年4月に全社員を対象としたテレワーク勤務制度を開始し、育児や介護などの事情を抱える社員も働きやすい就業制度の構築に努めている。

同社のように働き方の選択肢を増やしていけば、社員は子育てや介護の状況に合わせて、その時に最も働きやすい方法を選ぶことができる。制度の多様性や柔軟性を高めようとする企業の姿勢は、社員の自社に対する満足度を高め、組織の基盤をより強固にすることにも役立つだろう。

富士通のカムバック制度の対象
図1

ネットワークを構築し人材を紹介し合う

女性活躍推進の観点では、結婚や配偶者の転勤などに伴う転居によるキャリアの中断をカバーする制度が必要だ。

各企業では、配偶者の転勤中、休職や在宅勤務を認める制度や、グループや社内の他拠点での受け入れを推進する取り組みなどが実施されている。国家公務員では、配偶者の海外勤務に同行する場合、最長3年の休業を認める制度が2014年から導入されている。

中でもユニークな取り組みが、全国の地方銀行64行が参加する「輝く女性の活躍を加速する地銀頭取の会」による職員のキャリア継続を支援する「地銀人材バンク」だ。同会は、意欲・能力のある女性の積極登用を進めるとともに、女性リーダーの育成やネットワークの構築を図ることを目的に2014年11月に発足し、女性活躍に関する自主目標の設定、組織の意識変革などの行動宣言を策定し、公表している。

同会が2015年4月に創設した地銀人材バンクでは、会員行の職員が、結婚や介護、配偶者の転勤などにより転居するため、やむなく退職する場合に、本人の希望に応じて、転居先近隣の会員行に紹介する。会員行は全都道府県をカバーしているため、転居先がどこであっても、近隣の銀行を紹介することが可能だ。各行の人事担当窓口で作るネットワークを通じて人材を紹介し合い、紹介された銀行は自行の採用基準に基づいて採用を判断する。配偶者の転勤が終了し再び地元に戻る場合も再度地銀人材バンクを利用できる。男性も同制度を利用することが可能で、今後は親の介護で転居が必要となった職員の利用が増えるのではないかと見られている。

地銀人材バンクは、職員にとってはキャリアの継続的な形成が、銀行側は即戦力となる高度な人材の確保が可能となる取り組みだ。運用開始初年度の2015年度は78人が希望し、うち48名が制度を利用して転居先の銀行に勤めた。2016年までに139人が希望、100名が実際に採用となるなど、会員行から好評を得ているという。同会の事務局を務める千葉銀行 ダイバーシティ推進部では、この取り組みについて「配偶者の転勤などで退職せざるを得ない職員が少なくない中、これまでは同じ業界で働き続けたいと思っても求人情報があまりなく、せっかく身につけた知識や経験を活かすことが難しいケースがあった。不慣れな土地で新生活と求職活動を同時に行うことは心身の負担も大きいが、本制度を活用することで、スムーズに求職活動ができる安心感もある」と話す。

このように、業界でネットワークを構築して人材を紹介し合うという方法は、全国に拠点のない企業や地方の中小企業などにとってもヒントとなるものだ。労働人口が減少する中で、高度な専門性や経験を持つ労働者を継続的に雇用することは、企業にとっても重要な課題となる。各社の状況に合わせた対策が期待される。

図2
地銀人材バンクの狙い
全国の地方銀行64行のネットワークを活かして、
職員の「キャリアの継続」と会員行の「即戦力
人材の確保」の両立を可能とする

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