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[特集] 先端テクノロジーが食を変える

《コラム》 世界に向けた日本のフードテック

日本のフードテックは、残念ながら現時点ではどの領域においても「先駆者」といえる立場ではない。

たとえば「生産領域」では、農産物輸出額第2位のオランダは政府が「グリーンポート」と呼ばれる温室栽培地域を国内に6カ所指定して、全ての温室環境をセンサーで監視しコンピュータで制御して馬鈴薯などの野菜を栽培している。また、一般農家でも8割近くが自動制御システムにより農作物の肥料や給水を管理しており、ICTを活用したスマート農業を実現している。一方、日本は農林水産省がスマート農業を推進しているが、実証実験段階の取り組みが多く、実用化した例は少ない。他の領域も同様の状況である。

こうした現状でも、唯一の例外が「食品領域」である。この領域では日本のフードテックも十分世界に通用する可能性がある。世界の食品領域で最も成功しているのは植物性タンパク質を原料とした植物肉(代替肉)であり、多くの菜食主義者に支持されている。日本は古より植物性タンパク質を加工するノウハウを数多く蓄えており、その代表格が豆腐や味噌といった大豆加工食品である。日本の伝統食材でもあり、その「美味しさ」は日本料理の世界的人気からもうかがえる。こうした伝統的な日本のノウハウを用いた植物肉であれば世界に受け入れられる可能性は高い。

しかし、日本の植物肉が世界でシェアを伸ばすには大きな課題がある。多くの日本企業は内向き志向であり、まずは国内で一定の実績を得た後に世界へ進出することを考えがちである。ところが、世界と比べ菜食主義者が少ない日本では、植物肉の認知度も低く現時点での需要は高くはない。この課題の解決は、日本人の高い健康意識に働きかけ植物肉を多くの日本人に早く受け入れられるようにするか、最初から世界に目を向けるかという企業の戦略が鍵を握っており、その「選択」に期待したい。


伊藤 慎一郎

伊藤 慎一郎
みずほ情報総研
経営・ITコンサルティング部
チーフコンサルタント

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