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[特集] 先端テクノロジーが食を変える

AIやロボティクス、バイオテクノロジーなど、食とさまざまな先端技術を融合して新たな価値を生み出すフードテックの動きが注目されている。
食のバリューチェーンで、どのような変化が起きているのだろう。

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食に関する5つの課題とフードテックの可能性

近年、米国を中心に、大豆など植物性のタンパク質を原料とした植物肉(代替肉)が大きな話題となっている。味や匂いも肉そっくりだとして、大手ハンバーガーチェーンにも採用されるなど人気を博している。ほかにも、新たなタンパク源として宇宙での活用も考えられている藻類や昆虫を原料とした代替食品の開発が進んでいる。

次世代食品の開発以外にも、食に関連するさまざまな領域でイノベーションへの取り組みが活発化している。こうした、「食」と「テクノロジー」を融合して新しいサービスや商品を創り出す「FoodTech(フードテック)」は、既存のビジネスを変革する動きとして注目されている。

その背景には、以下のような社会課題や食に対する価値観の多様化などさまざまな要因がある。まず、(1)人口増加による食糧不足と飢餓の問題だ。国連食糧農業機関(FAO)は、2017年の報告書「食糧と農業の未来―トレンドと課題」において、飢餓と貧困の撲滅に向けて、食糧の増産および農業生産性を維持するための革新的な方法を模索することが必要だと提言している。一方で、(2)食料の廃棄も大きな問題となっている。世界の食料の廃棄は年間約13億トンにも及び、世界の食料生産の3分の1に相当するという(FAO : Global Food Losses and Food Waste, 2011)。これらの問題を解決することは、「持続可能な開発目標(SDGs)」にも盛り込まれており、食糧の安定確保と栄養状態の改善などに向けた取り組みが始まっている。

(3)菜食主義の増加も要因の1つだ。健康志向や宗教上の理由、動物愛護、環境保護などを背景に欧米を中心に拡大しており、代替肉や、健康を維持するために必要な栄養素を補うことができる完全栄養食などの商品の開発が活発化している。(4)食の安全という課題もある。異物混入や産地偽装、人為的なミスなどを防ぐため、安全な保存・運搬方法や、商品の状態を可視化し自動的に判別する技術、高度なトレーサビリティの確立が求められる。加えて、(5)人材の不足も、食のバリューチェーンを構成する各業界で問題となっており、AI技術やロボットの活用など、省力化や無人化が検討されている。

これらの課題を解決するために、【1】生産領域 【2】食品領域 【3】調理技術領域 【4】流通領域 【5】外食(中食)領域 【6】メディア領域 【7】廃棄・再加工領域の各領域において、フードテックによる取り組みが進み始めている。

5つの課題のうち、国内においては、特に「食料の廃棄」「食の安全」「人材の不足」の解決に関心が高まっている。生産領域では、農業就労者の高齢化や人手不足が大きな課題となっており、圃場の管理にIoT・AIを活用する取り組みや、自動運転技術を導入したトラクターや田植え機が開発されており、スマート農業、アグリテックの取り組みが活発化している。農作業の効率化や生産性向上の観点から導入が増えている植物工場も進化している。調理技術領域においても、食品工場やレストランの厨房へのロボットの導入により省力化を図る取り組みが進む。食の安全については、調理技術領域において、異物の混入を画像認識技術により検知するシステムの開発・導入などが進んでいる。流通領域では、生産から販売までの流通経路を把握するトレーサビリティ確保の取り組みが進められている。食料の廃棄については、AIによる需要予測モデルの開発などが進められている。ブロックチェーン技術の活用によりサプライチェーンにおける情報連携や効率化が進めば、食品ロスの削減にもつながるだろう。

フードテックはこうした課題解決に寄与すると同時に、新しい市場や新しい食文化を生み出す可能性がある。大学など研究の場では、持続可能な食や食サービスのシステムデザインや、食材の化学的・物理的変化を分子レベルで解明する研究などが進められている。

食とテクノロジーの融合は、社会課題の解決の糸口となり、従来の食関連ビジネスを大きく変えるのか。先進事例から、フードテックの可能性と未来を探る。


取材・文/編集部 写真/栗原 剛、アマナ、ピクスタ

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