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[特集] 先端テクノロジーが食を変える

データ解析やAIの活用により食品ロス削減に取り組む ―廃棄・再加工領域

SDGs推進の観点から食品ロス削減に向けた取り組みが活発化している。
さまざまなデータを組み合わせて要因分析を行い、精緻な需要予測によりサプライチェーン全体で食品ロスを抑制するデータサイエンスを駆使した取り組みが始まっている。

データサイエンス

需要予測モデルの開発に向け取り組みを推進 ―株式会社プリンスホテル

「食品ロス」は今や大きな社会問題となっており、2015年に国連サミットで採択された「持続可能な開発目標(SDGs)」のターゲットの1つとしても、2030年までに、小売・消費レベルにおける世界全体の1人あたりの食料の廃棄を半減させることが盛り込まれた。FAOが2011年に発行した「Global Food Losses and FoodWaste」によると、世界の食料の廃棄は年間約13億トンにも及び、これは世界の食料生産の3分の1に相当するという。日本においても、年間2759万トンの食品由来の廃棄物等が発生しており、このうち643万トンは可食部分と考えられる量、いわゆる食品ロスである(平成28年度推計)。

こうした食品ロスの問題解決にも、ITを活用したフードテックの適用が期待されている。食品ロスは、食品関連事業者(食品製造業、食品卸売業、食品小売業、外食産業)および家庭から発生しており、事業者、消費者、自治体、国が相互に連携して、サプライチェーン全体で食品ロス削減に取り組むことが求められている。たとえば、外食産業では、材料の調達・保管時、調理時、調理後消費者に提供されるまでの間、消費者の飲食時と、さまざまな段階で食品ロスが発生する。削減策としては、消費者の意識啓発により食べ残しを減らすといった地道な取り組みが考えられるが、そうした食べ残しへの対策だけでなく、ビッグデータ解析やAIの活用による需要予測や需給最適化の取り組みが期待されているのだ。

株式会社プリンスホテルでは、グループの「サステナビリティアクション」推進の一環として、2019年5月に、「食品ロス削減に向けた実施計画」を策定し、取り組みを進めている。同計画は、(1)ブッフェレストランにおける提供食品量や実消費量、食品ロス量を計測する「調査」を行い、(2)その結果を基に仕入れ・調理・提供の食材フローを作成する「検証」を実施し、(3)調査結果や施設属性、外部状況を踏まえた「需要予測モデルの開発」を行い、(4)予測モデルに基づいた食品提供を実施する「運用」を段階的に行うものだ。過去の実績データや宿泊データなど食品需給に関係するさまざまなデータを組み合わせ、分析することで、需要量に影響を与える要因の発見と需要予測モデルの開発を行うことができれば、精緻な飲食需要予測に基づく必要十分な供給量の確保を実現することができ、食品ロスの抑制につなげられる可能性がある。

同年5月下旬には、計画の第一段階として、軽井沢プリンスホテルのブッフェレストランにおいて、(1)の調査を行った。調査はみずほ情報総研が担当し、調理、ブッフェ台への提供、取り分けの各段階において廃棄量と食べ残しの量の計測を行った。6日間の調査期間の後半3日間は、食品ロス削減手法として、啓発POPの設置と9分割のパレットスタイルプレートの導入を行い、料理の取り過ぎや食べ残しの抑制効果について検証を行った。

調査結果からは、これらの削減手法に一定の効果があることがわかり、廃棄量の実態把握のほか、提供する料理の種類・提供方法への課題も見えてきたという。同社 執行役員 品質管理部長の小林正之氏は、調査結果や課題は、需要予測モデルの構築に活用できると話す。また、この需要予測モデルに従い、宿泊者数、レストラン利用客数、利用単価、仕入れ量などの経営指標から廃棄量との相関性が高い数値を特定し、これを活用した「想定廃棄量基準」を算出したいという。「この基準を基に、各施設の廃棄量削減目標を設定したいと考えている。また将来的には、AIを活用した需要予測の運用も考えていきたい」(小林氏)。

外食産業の食品ロスを減らすには、調達から実消費までの各段階で精緻にデータを拾い上げて実態を把握し、適切な対策を講じることが必要だ。その際に、データサイエンスなど先端ITの活用が有効な手段となるだろう。デジタルとアナログの両面で取り組む同社の挑戦が実を結び、その突破口となることを期待したい。

プリンスホテルの食品ロス削減に向けた実施計画
図1

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