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[特集] 先端テクノロジーが食を変える

食品流通の高度化に向け先端技術の導入を支援

法改正により流通の合理化を促進

安全・安心・新鮮といった消費者の食への期待が高まる中、食品の生産、流通にかかわる人材の不足は深刻な状況だ。食品の市場価値を高め、流通の合理化・最適化を図るために、サプライチェーン全体における物流・商品管理・決済に関する新たな情報共有基盤の構築が求められている。

2018年に「食品等の流通の合理化及び取引の適正化に関する法律」が改正されたことにより、農林水産省では、「流通の効率化」「品質・衛生管理の高度化」「情報通信技術等の活用」「国内外の需要への対応」の4つのテーマの実装に向けて食品流通合理化促進事業を実施し、民間企業の取り組みを支援している。

同省 食料産業局 食品流通課長の武田裕紀氏は、「どのような手法で取り組むかを国が決めるのではなく、民間からの多様なアイデアや技術活用による解決策を広く募り、オープンイノベーションの発想で事業を進めている」と話す。取り組みを促進するため、事業者向けに、実証の成果や得られた効果を共有する報告会も開催しているという。

採択を受けた事業では、電子タグ(RFID)を搭載したパレットで積荷を管理し、産地から輸送先までの情報を一括管理することで、荷積み・検品・入庫・荷下ろしの作業時間の短縮化や省力化を実現する取り組みや、タブレットなどスマートデバイスを活用して生産者と出荷先の情報共有を活発化し、生産計画に役立てる取り組みなど、さまざまな技術を活用した実証が行われている。今後は、物流センターにおける荷積み・荷下ろし作業の自動化・効率化についても検討を進めたい考えだ。

先端技術を活用した取り組みを推進

食のサプライチェーンでは、トレーサビリティの確保による安全性の担保も重要な課題だ。現状では、情報の追跡・提供コストが商品価格を押し上げ、必ずしも消費者インセンティブにつながっていない。そこで、商品に問題が生じた際、範囲の特定や回収に要する時間が短縮でき、回収コストの低減や食品ロス削減による収益向上が期待できる点や、データの集約により決済業務の効率化につながるといったメリットを事業者側に伝えることで取り組みを進めているという。

みずほ情報総研では、大田市場の仲卸三秀が採択を受けた事業に参画し、2020年3月に青果の流通におけるトレーサビリティ確保と決済高度化に向けた実証実験を実施した。実証には、生産者、卸会社、仲卸業者、小売業者が参加し、(1)ブロックチェーンを活用したサプライチェーン全体のトレーサビリティ確保と関係者間での情報共有、(2)QRコードを活用した請求支払業務の効率化とリアルタイム送金による決済デジタル化について検証を行った。実証実験では、産地から店舗に至るまでの商品の流れをブロックチェーンに記録し、商品情報やレビューの共有・開示と、傷みのある商品が発見された際に、流通経路を特定し、同じ生産者の商品を販売している全店舗を迅速に検索できるかについて検証を行った。また、ブロックチェーンの取引記録を基にした請求データの作成および決済アプリ「J-Coin Pay」による支払いの実行などについても確認を行った。

先端技術の導入により、食品流通の未来はどう変わるのか。武田氏は、従来業務の代替だけでなく、新しい市場や価値が生まれる可能性があると述べる。一方で、「システムが扱いやすい画一的な商品が好まれ、食の多様性が失われることは避けなくてはならない。豊かな消費を守るためにも食品流通の新しい仕組みの構築が必要だ」。食にかかわる事業者には、消費者や取引先のニーズの多様化に対応しつつ、流通の効率化を図り市場を新しい時代へと一歩進める、画期的な取り組みを行うことが期待されている。

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