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[特集] 先端テクノロジーが食を変える

各領域で進む食×テクノロジーの融合

食に関する課題解決に向け、そのほかの領域でも、イノベーションの創出に向けたさまざまな取り組みが行われている。
残りの4つの領域で進む研究開発や新サービスの一例を紹介する。

食品領域

日本では、動物の細胞を人工培養して作る「培養肉」の研究開発が活発だ。環境負荷の低減や効率的な食料増産につながる技術として注目されている。2019年3月、日清食品ホールディングスと東京大学生産技術研究所の竹内昌治教授の研究グループは、世界で初めてサイコロステーキ状の筋組織の作製に成功した。また、細胞培養システムの低コスト化を実現したスタートアップ企業のインテグリカルチャーは、2019年7月に日本ハムと共同で細胞培養肉の基盤技術開発を開始している。

長期保存技術の研究開発も盛んだ。明治大学とフードイズムが共同開発した「エイジングシート」は熟成肉に必要なカビの胞子をシートに付着させたもので、腐敗を防止し、安全かつ短期間で発酵熟成肉を作ることができる。2018年には、川崎北部市場水産仲卸協同組合と連携し、魚の熟成化に成功。約20~23日間の長期熟成にもかかわらず〝新鮮さが保たれた魚″として商品化されている。

完全栄養食の開発に取り組む企業も登場している。1日に必要な栄養素の3分の1が含まれるパスタやパンを開発・販売するベースフードは、オンライン販売のほか、カフェチェーンなどとのメニュー開発も展開する。2019年には米国の栄養基準に合わせた商品を開発し、販売を開始している。

図1
ベースフードが開発した完全栄養の主食「BASE PASTA」「BASE BREAD」

流通領域

位置データなどビッグデータを活用した流通効率化の取り組みが進んでいる。KDDIとアクセンチュアのジョイントベンチャーとして設立されたARISE analyticsでは、顧客の販売実績データとKDDIが保有する位置情報に基づく人流・IoTデータや天候・イベントデータを組み合わせて、商品・サービスの需要予測を行う分析モデルを開発した。高い精度での需要予測が可能で、配送・補充業務の効率化や配送ルートの最適化を図ることができるという。

食品宅配事業を展開するオイシックス・ラ・大地は、連結子会社とくし丸の事業を通じて、全国各地で買い物難民を支援する移動スーパーを展開するなど、食品流通にかかわる社会課題の解決に取り組んでいる。2017年からは、ヤマト運輸と共同で農産品の受発注から配達までをワンストップで効率化するオープンプラットフォームの構築に取り組み、2019年2月に生産者や農業法人向けにシステムの提供を開始した。同年6月には協業の検討に関する基本合意書を締結し、食品流通のサプライチェーン強化に向け取り組みを進めている。

外食(中食)領域

人手不足の解決が大きな課題となっており、さまざまなサービスが登場している。モバイルオーダープラットフォーム「O:der」は、店舗の業態やオペレーションに応じて、顧客が店外から事前注文を行うテイクアウトオーダー、店内着席後に顧客自身が注文を行うテーブルオーダーなどのスマートフォンアプリを提供する。接客やレジ・会計業務の削減ができ、限られた人員での運営が可能となる。また、メニュー情報の多言語表示や、オンタイムでの各国通貨への換算などのサービスを提供する「ToUMenu」は、飲食店のインバウンド対策の支援ツールとして、多言語化にかかる経費や作業負担を軽減することができる。

そのほか、デリバリーに特化したレストラン向けにシェア型キッチンを提供する「キッチンベース」など、これまでにないユニークなサービスも登場しており、今後もますます進化していきそうだ。

メディア領域

飲食店の情報サイトやレシピサイトなどは今や定番だが、動画でレシピを紹介する「DELISH KITCHEN」や「kurashiru」などのWebメディアも登場している。また、グルメレビューアプリ「LINE CONOMI」は、LINE独自のAIを活用した画像認識技術により、レシートを撮影するだけで店名やメニューを自動入力できるなどの機能を提供している。今後は、AI機能を活用してユーザーの好みの飲食店やメニューを紹介するレコメンド機能などを追加していく予定だという。

他の領域の取り組みと融合したサービスも多い。定額制で飲食店のメニューを1日2回までテイクアウトできる「POTLUCK」(メディア×外食・中食)や、フードシェアリングサービスの「TABETE」(メディア×廃棄・再加工)などが挙げられる。TABETEは、飲食店や惣菜店などの閉店間際や商品の入れ替え時に発生してしまう余剰食品を、消費者が安価に購入できるWebプラットフォームで、食品ロス削減に貢献できるほか、事業者にとっては新規顧客の獲得や売上向上にもつながる。自治体との連携による同サービスを活用した食品ロス削減の取り組みも行われている。

ベンチャー企業から連携する大手企業まで、フードテック市場に参入しようとする動きは日本でも活発化しており、世界へと打って出ている企業もある。異業種の参入により、サービスの高度化やテクノロジーのさらなる進展も期待できる。食を起点としたさまざまな取り組みが世界を大きく変えていくことは間違いないだろう。

図2
AIを活用したグルメレビューアプリ「LINE CONOMI」(上)
モバイルオーダーシステム「O:der」(右)

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