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社会動向レポート

日本の医療機器産業が世界市場で勝ち抜くためには(1/2)

社会政策コンサルティング部 コンサルタント 日諸 恵利

わが国の医療機器産業が政府から成長牽引役と目されて久しいが、世界市場における日系企業の立ち位置に鑑みれば、その成長性については楽観視しがたいものがある。

現在、世界市場の拡大に寄与しているのは発展途上国の経済成長である。この発展途上国市場を獲得するためには、現在は大きく引き離された欧米の医療機器メーカーに対抗しうるだけの販路開拓戦略が必要である。その有効な打ち手のひとつとして、「情報インフラ」の活用を通じた医療インフラ整備への参画と、現地人材育成が大きな可能性を秘めているのではないかと考える。

はじめに

21世紀の日本経済は、ライフイノベーションの振興に力を注いできた。小泉内閣(2001年~2006年)では、科学技術創造立国を掲げ、「健康増進」を中核分野に位置づけた。また、続く第一次安倍内閣(2006~2007年)では、イノベーション25として、製薬産業を成長分野の一丁目一番地に位置づけている。さらに、政権交代のあった2009年でも、鳩山内閣(2009~2010年)において新成長戦略として「ライフ・イノベーション」を中核領域に位置づけている。続く野田内閣(2011~2012年)でも日本再生の基本戦略として、鳩山政権に続き「ライフ・イノベーション」を復興・経済再生の中核に位置づけるとともに、内閣官房医療イノベーション推進会議及び推進室を設置するなど、さらに医療・介護領域の政策強化を押し進めてきた。そして、現在の第二次安倍内閣(2012~)においては、日本再興戦略として、健康・医療戦略室を設置の上、「健康・医療戦略」を発行している(1)

このように、政策的に医療・介護分野の産業振興が推進される中、次なる成長牽引産業として期待が高まっているのが“医療機器産業”である。

1. 医療機器市場概況

(1)医療機器産業の世界市場

現在、医療機器の世界市場は、約3,000億ドル(約30兆円)となっており、2017年には、4,344億ドルまで高まることが予想されている(2)。この世界市場の成長を牽引しているのは新興国・発展途上国であり、これらの国の経済発展に合わせてマーケットが拡大基調となっている。


図表1 世界の医療機器市場
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(2)わが国の医療機器市場

一方、わが国の医療機器市場は、2011年度で約2.4兆円(国内売上額)であり、15年前の1.23倍程度の規模にはなっているが、安定的成長基調とは言いがたく、市場の伸び率は年によって増減があるという状況である(3)。また、わが国の医療機器の輸出入金額は、2011年時点で約5,780億円の貿易赤字となっており、赤字額は年々微増している。具体的には、診断系機器(ex. 血液検査装置、医用写真フィルム、全身用X線CT装置等)は貿易黒字を保っているものの、治療系機器(ex.コンタクトレンズ、人工骨・人工関節、ステント等)については輸入額と輸出額に4倍以上開きがある赤字状態である(4)

わが国の国内市場においては、治療系機器は2007年以降5年間で1.3倍に拡大し、2011年時点では国内市場の約53%を占めている(5)。一方、診断系機器の市場は横ばい傾向であり、診断系機器が強みとなっているわが国の医療機器産業にとって、転換期が訪れていることが推察される。このような状況の中、わが国の医療機器産業が真に成長牽引産業となるにあたっては、今後、治療機器も含めて世界市場で勝てる産業となることが必須条件である。


図表2 わが国の医療機器産業の市場規模
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2. 世界市場におけるわが国医療機器産業の立ち位置

現状のわが国の医療機器メーカーの世界市場における立ち位置は、国内1位の企業でも世界売り上げランキング20位である。世界1位との差は約6.4倍であり、圧倒的な差がつけられている。これに対し、図表8に見られるように、米国の医療機器メーカーは、世界市場の約40%のシェアを占めており、世界売り上げランキング上位20社中14社が米国の企業という、高い国際競争力を誇っている(6)

このように、国際競争力に差が出ている背景の一つとしては、日本の医療機器企業の65%は中小企業であり、売上規模が100億を超える規模の企業は全体の13%に留まるという業界構造が挙げられる(7)

以下では、このような医療機器産業におけるプレイヤーの企業規模の違いは踏まえた上で、国際市場におけるわが国医療機器メーカーと米国医療機器メーカーの個別の販売戦略や各種の取組みにつき、どのような点が異なるのかを検討する。


図表3 医療機器の輸出入金額の推移
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図表4 治療系機器及び診断系機器の輸出・輸入の現状
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図表5 治療系機器及び診断系機器の市場規模の推移
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図表6 日本の医療機器メーカーの規模
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図表7 米国の世界市場におけるシェア(2012年)
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図表8 米国の世界市場における立ち位置(2012年)
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