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社会動向レポート

日本の省エネ政策の検討状況と短期的に想定される動きについて(1/3)

環境エネルギー第2部 コンサルタント 桐原 貴大

2015年末のパリ協定を受け、各国の温室効果ガス削減目標が定まった。本稿では、削減目標の達成に向けてわが国で検討が進みつつある省エネ政策を整理し、そこから想定される今後の省エネ政策の動きについて考える。

はじめに

昨年末に開催されたCOP21で「パリ協定」が合意された。これは京都議定書の代わりとなる新たな法的枠組みであり、条約加盟国の全てが参加する初めての枠組みとなっている。本協定の中では、地球の気温上昇を産業革命以前の水準と比べて2度より十分低く抑え、1.5度に抑えるための取組を推進することが言及されており、それに向けた対策の実施が各国に求められることになる。

このパリ協定に先立ち、途上国を含め世界中の国々がCO2等の温室効果ガス排出量の削減目標を掲げている。わが国も2030年度までに2013年度比で26%削減を掲げており、パリ協定を経てこれが国際公約となった。この“26%削減”を策定するに当たり、前提となったのが長期エネルギー需給見通し(2015年7月)であり、その中でわが国の2030年度時点での電源構成等が定められた。同見通しにおいては、徹底した省エネルギーの推進を通じた大幅なエネルギー効率の改善が見込まれており、石油危機後並みの抜本的なエネルギー効率の改善が必要とされている。

上述の通り、わが国の温室効果ガスの削減目標は大幅な省エネ対策の実現を前提としている。今回のパリ協定においては26%削減の数値目標の達成は義務とはなっていないが、数値目標の達成に向けた取り組み状況がレビューされることとなっており、国が実施していく対策が5年毎に国際的な視点から評価されることになる。従って、省エネ推進に向けて国がこれまで以上に対策を講じていくことは確実な情勢であり、それに応じて企業にも省エネ対策が求められることになるだろう。

本稿では、わが国の省エネ政策に着目してその検討状況について整理し、そこから想定される短期的な省エネ政策の動きについて言及する。

1. 省エネ政策の最近の検討状況

わが国の省エネ政策は日本全体をカバーすべく、産業・業務・家庭・運輸の各分野において検討が進められているところであるが、本稿では一般の企業に対して影響が大きいと推察される産業・業務部門に着目し、検討が比較的進んでいる政策の中から重要と考えられるものについて提示する。

(1)省エネ取組状況に応じた事業者のクラス分け評価

エネルギーの使用の合理化等に関する法律(以下、「省エネ法」という)では、一定規模以上のエネルギーを消費する事業者に対して、国へのエネルギー使用状況の報告(定期報告)を義務付けている。この定期報告においては、事業者に対して中長期的に見て年平均1%のエネルギー消費原単位改善の努力目標を課しているところである。

しかしながら、この努力目標を達成できているのは定期報告書を提出している事業者の約2/3であり、残りの約1/3の事業者は目標を達成できていない状況にある(図表1)。事業者のより一層の省エネ努力を促すため、国は現在、省エネ取組状況に応じて事業者をクラス分けして評価する政策を検討中であり、1%削減努力目標の達成状況やベンチマーク制度(次節で後述)の目標達成状況等に応じて、事業者はSクラスからCクラスまでに分類される予定である。Sクラスを獲得した事業者は優良事業者として公表される一方で、Bクラス、Cクラスに分類された事業者は国からの指導等の措置が集中的に講じられる見込みであり、これまでよりもメリハリのある対応が2016年度から開始されることになっている(図表2)。

図表1 直近5年間におけるエネルギー消費原単位の平均年間変化率別の事業者数
図表1


図表2 事業者クラス分け評価制度におけるクラス分類の基準とクラス別の国の対応
図表2

  • 本レポートは当部の取引先配布資料として作成しております。本稿におけるありうる誤りはすべて筆者個人に属します。
  • レポートに掲載されているあらゆる内容の無断転載・複製を禁じます。全ての内容は日本の著作権法及び国際条約により保護されています。
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