ページの先頭です

社会動向レポート
後発医薬品使用促進に向けた地域での取組み

後発医薬品のさらなる使用促進のために(1/2)

社会政策コンサルティング部 マネジャー 田中 陽香

後発医薬品の使用促進にあたっては、都道府県単位、さらにはそれよりも狭い地域単位で関係者を集めた協議等の具体的な取組みが実践されるようになっている。後発医薬品の使用促進には使用する側の体制や意識を変えていくことが必要であり、薬価や診療報酬等、国の医療保険政策による誘導だけではなく、地域の顔の見える関係性を築く等の地道な取組みも重要である。本稿では、そうした後発医薬品の使用促進に向けた取組みを紹介する。

1. 後発医薬品使用対策の現状

(1)国全体での目標値を掲げての後発医薬品使用対策

ジェネリック医薬品とも呼ばれる後発医薬品は、我々が疾病の治療の際に使用する医療用医薬品の中でも、治療効果を発揮する有効成分や使い方についての特許がきれた医薬品と同じ有効成分で、効き目や品質、安全性が同等である医薬品である。研究開発や特許取得にかかるコストが抑えられるため、後発医薬品は新規に開発される新薬と比べ、低価格に設定されている。

そのため後発医薬品は医療費適正化の切り札としての役割が期待され、近年国が中心となり、使用促進に向けた取組みが展開されてきた。平成19年10月に公表された「後発医薬品の安心使用促進アクションプログラム」に続き、平成25年4月には「後発医薬品のさらなる使用促進のためのロードマップ」(以下「ロードマップ」という)が示され、国をはじめとした行政機関・メーカー・卸・医療機関・薬局等が一丸となって、使用促進に取組み、平成30年3月末までに、後発医薬品の使用割合を60%までにするという目標値も盛り込まれていた。

ロードマップの公表後、後発医薬品の使用割合は順調に伸びており、公表時点の平成25年4月の時点で53.8%だったものが、平成27年2月の時点では58.2%となり、ロードマップの目標値は、早々に達成されることが見込まれる状態となっている。これは、ロードマップにも明記された関係者たちの努力の結果であると言えるが、国は規制改革等の流れの中で、後発医薬品についてのさらなる使用促進を求め、ロードマップの時点よりも前倒しかつ高い目標として、2015年の経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)において、平成29年度央の時点で70%以上、平成30 ~32年度の間に80%以上が設定された。

(2)地域で異なる後発医薬品の使用割合

より高い目標値の達成を実現するには、後発医薬品メーカーによる増産をはじめとして供給側の努力が必要なことは言うまでもないが、後発医薬品を使用する側の体制や意識を変えていくことも一つの大きな要素となる。その際着目すべきは、後発医薬品の使用割合は、地域によって大きな違いがあることである。平成27年5月時点での国全体の後発医薬品の使用割合は、58.8%であるものの、もっとも使用割合の高い県と低い県の間では20ポイント以上の差が見られる。

このように、後発医薬品の使用状況については、地域ごとにそれぞれ事情も異なることから、厚生労働省は平成20年度より、後発医薬品の使用に関し、都道府県単位で関係者を集めた協議会を開催することを委託事業とし、地域単位での取組みを促進してきた。こうした地域単位での取組みは、全国一律での施策だけでは他人事となりがちなことを、地域の身近な関係者での議論により、自分事としてとらえる機会ともなり、具体的な取組みの実行にもつながるものとなっている。そこで、本稿では、後発医薬品の使用促進に大きな役割を果たすことが期待される地域単位での取組みについて紹介することとする。

2. 地域での後発医薬品使用対策

(1)都道府県レベルでの後発医薬品使用対策

後発医薬品の使用に関して都道府県のレベルで医師会、薬剤師会、保険者の代表者、有識者等の関係者が集っての協議は、平成16年度に富山県において「ジェネリック医薬品利用促進研究会」が設置されたのが端緒となった。その後、いくつかの県で自発的に後発医薬品についての協議会が設置、検討がなされていたが、平成20年度より厚生労働省が後発医薬品の使用促進に関する協議会の運営を都道府県への委託事業としたことにより、協議会設置の動きは全国各地に広がっていった。

関係者が集っての都道府県協議会は、必ずしも後発医薬品の使用に前向きではない関係者もいたため、地域によってその名称は様々で、「後発医薬品適正使用」であったり、「後発医薬品安心利用」というようなものも用いられていた。そうした背景のもと、協議会では後発医薬品を積極的に使用するための土壌を作るための議論ばかりではなかったが、後発医薬品の使用促進に資する具体的な取組みに向けた議論を展開してきたところも多い。都道府県協議会による具体的取組みとして実行されてきたものとしては、一般住民や医療機関関係者等を対象とした実態調査の実施、後発医薬品の使用促進のための計画の策定や目標の設定、後発医薬品の採用を判断するためのツール類(評価基準、採用マニュアル、後発医薬品リスト等)の作成、啓発資料(リーフレット・ポスター等)の作成・配布、セミナー・シンポジウム・研修会の開催、地域協議会の開催が主なものとして挙げられる。

上記の取組みのうち、後発医薬品の評価基準や採用マニュアルについては、それまで後発医薬品の採用に積極的ではなった機関が、より安心して使用できる後発医薬品を選ぶ際の手助けとなるものとして、都道府県内の関係機関向けに発信されていた。

また、多くの都道府県において、地域の実情を反映できる具体的なものとして作成されているのが、後発医薬品の採用リストである。掲載されている情報の項目や単位、情報源はさまざまであり、地域によって同じ有効成分ごとのメーカー別の採用病院数や病院ごとの採用メーカー名が分かったりする。メーカー別の採用病院数が分かると、後発医薬品の採用を検討する際に複数のメーカーの間で比較検討し採用する後発医薬品を選定する作業に十分な人員を割く余裕のない規模の小さい医療機関や薬局にとっては、「採用病院数が多い」=「ある程度使用実績が積み上げられている」≒「安心して使用できる後発医薬品である」という代替的な指標として参考にされる。さらに、地域の入院医療を担う医療機関の院内採用薬と同じメーカーのもの採用するということは、患者が退院して地域に戻った際に、同じ医薬品を使い続けることができることになるため、地域の基幹病院等の採用後発医薬品に関する情報は、周辺の医療機関や薬局にとっても参考になると思われる。その他、一部地域では、卸業者の在庫情報をもとにリストを作成し、地域で流通している後発医薬品が分かるようになったり、リストに薬価(作成時点のもの)の情報も盛り込んでいる場合もある。

図表1 滋賀県後発医薬品採用マニュアル(滋賀県後発医薬品安心使用促進協議会)の抜粋
図表1
(資料)滋賀県ホームページ
(PDF/685KB)


図表2 後発医薬品リストの情報源や掲載情報
図表2

  • 本レポートは当部の取引先配布資料として作成しております。本稿におけるありうる誤りはすべて筆者個人に属します。
  • レポートに掲載されているあらゆる内容の無断転載・複製を禁じます。全ての内容は日本の著作権法及び国際条約により保護されています。
ページの先頭へ