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社会動向レポート

廃棄物・リサイクル法体系の一元化に向けて(1/3)

環境エネルギー第1部 コンサルタント 水上 碧

循環元年といわれた2000年から15年が経過した。世界的には国連のSDGsの「持続可能な消費と生産」目標やEUのCircular Economyの新政策パッケージの発表、国内では廃棄物処理法の見直しの議論の開始や5月のG7富山環境大臣会合の開催予定など、更なる「循環型社会」形成への機運が国内外で高まっている。一方で、過去からの議論を振り返ると、循環型社会形成推進基本法制定当時からの課題が今なお残されている。本稿では、過去の経緯を振り返りながら、今後への期待を述べた。

はじめに

2000年に日本で「循環型社会形成推進基本法」(以下、「循環基本法」ともいう。)が制定されてから15年が経過した。この間、世界の人口は増え続け、また新興国が目覚しい経済発展を遂げるに従い、世界の資源利用量は増している。国連環境計画(UNEP)の国際資源パネル(1)による報告書では、20世紀に総物質採取量は約8倍に増加していること、多くの資源が生産の限界に達しつつあることが書かれている(2)。また、「持続可能な開発のための世界経済人会議(WBCSD)」は、持続可能な社会へのビジョンの中(Vision 2050 The new agendafor business)で、2050年までに資源効率を4 ~10倍高める必要があるとした(3)

このような世界的な持続可能な発展のための資源利用の問題意識等から、EUをはじめ諸外国でも天然資源の利用量削減や資源の循環的な利用の促進を進め、環境負荷を減らしていくための検討や取組が進められてきた。また、世界的な経済の停滞という背景の中で、EUを中心に、資源の効率的な利用の促進は多くのビジネスにとってその競争力と収益性の改善につながるものであるとの認識のもと、廃棄物政策と資源政策のリンクだけでなく経済政策・社会政策ともリンクした、資源効率の向上及び資源の循環的利用の促進の流れが大きくなってきている。

こうした流れを受けて、2015年度には3つの注目すべき世界的な動きがあった。

[1]G7エルマウ・サミットにおいて「資源効率の向上」が謳われた

2015年6月に行われたG7エルマウ・サミットの首脳宣言では、「天然資源の保護と効率的な利用は、持続可能な開発に不可欠である。我々は、産業の競争力、経済成長と雇用、並びに環境、気候及び惑星の保護のために極めて重要と考える資源効率性の向上に努める」と述べられており(4)、首脳宣言においてこのような一文が入れられた意義は大きいとされている。

[2]国連の「持続可能な開発目標」(SDGs)の中で「持続可能な消費と生産」が目標として掲げられた

2015年9月に採択された国連の「持続可能な開発目標」(Sustainable Development Goals)では17個のゴールを設定しているが、そのうちのゴール12では「持続可能な消費と生産」を掲げ、「天然資源の持続可能な管理及び効率的な利用の達成」や「廃棄物の発生防止、削減、再生利用及び再利用により、廃棄物の発生を大幅に削減する」こと等をターゲットとしている(5)

[3]EUが循環経済(Circular Economy)政策パッケージを打ち出した

2015年12月2日に欧州委員会が打ち出した「循環経済(Circular Economy)政策パッケージ」(6)では、「我々が過去に頼っていた経済成長の線型モデルはもはや今日のグローバル化された現代社会のニーズには適していないことは明らかである。我々は『採る、つくる、捨てる』のモデル上にはもう未来を築くことはできない」とし(7)、循環経済を進めることで経済・雇用が向上するとし、モノの流れの輪を結ぶ(Closing the loop)ための各種目標・廃棄物法案の改正案・アクションプラン等が出されている。

このような世界的な流れを受けて、2016年は日本でも、廃棄物削減、資源効率の向上及び資源の循環的利用などの議論が活発化するタイミングを迎える。2016年5月には富山県でG7環境大臣会合が開かれる(8)。ここでは、前述のG7 エルマウ・サミットの首脳宣言を受け、廃棄物管理・資源有効利用の先進国であると認知されている日本(9)として、また議長国として、先進的な議論を主導していくことが期待される。

さらに、現在は「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」(以下、「廃棄物処理法」という。)の見直しに向けた議論が行われており、循環型社会形成推進基本計画の見直しに向けた準備もこれから始まる。更なる循環型社会形成に向けて、どのような新しい目標や仕組みが入れられるのか、今後の議論が注目されている。

このように、世界的に高まる「資源を効率的に利用し、廃棄物を削減し、それにより経済成長にもつなげる」という議論は、捉えようとしている範囲が、経済・社会、そして「廃棄物」から「資源」の視点へとより広がりつつあるものの、日本がこれまで取組み及び議論を重ねてきた「循環型社会」の形成と通じるものである。本稿では、基本に立ち返り、日本の循環型社会形成推進基本法制定当時の思いを振り返りながら、今後への期待を述べたい。

1. 「循環型社会」とは

まず、日本では、「循環型社会」を「[1]廃棄物等の発生抑制、[2]循環資源の循環的な利用及び適正な処分が確保されることによって、[3]天然資源の消費を抑制し、環境への負荷ができる限り低減される社会(10)」と定義している(循環基本法 第2条(11))。循環型社会のイメージとして中央環境審議会循環型社会計画部会(第11回(2002年))(12)では図表1のような図が示されている。

日本は、江戸時代には循環型の社会を形成していたものの、その後の開国及び西欧諸国を手本とした成長の中で大量生産・大量消費型の社会を歩んだ(13)。そして日本の廃棄物政策は、そのような大量生産・大量消費型の社会の歩みや経済発展にともない質・量ともに変化する廃棄物に関する課題へ対応を進めるかたちで進んできた。最初は公衆衛生向上の観点から始まり、その後は公害対策・生活環境保全、そして最終処分場の逼迫等への対応等を経て現在へとつながっている(図表2)。特に廃棄物の発生量の高水準での推移や不法投棄の増大及び豊島で起こった大規模な廃棄物の不法投棄問題による社会的注目、ダイオキシン問題等により一層増した廃棄物処理施設の設置の困難性による最終処分場残余年数の逼迫という喫緊の課題が生じる中、大量生産・大量消費・大量廃棄型経済社会からの脱却の必要性からつくられたのものが、「目指すべき『循環型社会』」の姿であり、理念である。


図表1 循環型社会のイメージ
図表1


図表2 日本における循環型社会に係る主な課題及び法制度の変遷
図表2


2. 循環型社会形成のための法制度の概要

次に、「循環型社会」の形成を推進するための法体系は、図表3のようになっている。

環境政策の根幹を定めた環境基本法の下に循環基本法がある。その循環基本法の下に、廃棄物の排出抑制及び適正処理のための「廃棄物処理法」、資源の有効利用及び廃棄物の再生利用の推進の必要性から制定された「資源有効利用促進法」(旧再生資源利用促進法)があり、さらに個別物品の特性に応じて制定された6つの個別リサイクル法と「再生品等の供給面の取組に加えて需要面からの取組が重要である」との観点から制定された「国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律」(グリーン購入法)がある。循環基本法には、同法に基づく施策の総合的且つ計画的な推進を図るため、「循環型社会形成推進基本計画」を策定することが定められている。また、その時々の状況に応じた計画とするため、概ね5年ごとに計画の見直し・改正を行うことが定められている。廃棄物処理法や個別リサイクル法等も、その時々の課題に対応するため、定期的な見直し・改正が図られている。例えば、2012年8月には、循環の輪からはずれていた携帯電話等の小型電子機器等を対象として、そこに含まれる金属等の有用な資源の再資源化を促進するため、「使用済小型電子機器等の再資源化の促進に関する法律」(小型家電リサイクル法)が制定された。

循環基本法とは、このような各種法制度の上位に位置づけられた、循環型社会形成推進のための基本的な理念や考え方を定めた法律である。


図表3 循環型社会を形成するための法体系
図表3

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