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社会動向レポート
さらなる支援の充実のための論点整理

がん患者・経験者への支援のあり方(1/3)

社会政策コンサルティング部 チーフコンサルタント 志岐 直美

近年、医療技術の進歩等により、がんは「長く付き合う病気」に変わりつつある。がんを抱えながら生活や仕事をする患者が増加していることに伴い、治療と仕事の両立など、社会的な問題が顕在化している。みずほ情報総研株式会社では、医療従事者やがん患者・経験者等を招いて研究会を開催し、特に仕事や育児など様々なライフイベントに直面する現役世代のがん患者・経験者に対する支援のあり方について検討を行った。本稿ではその成果の一部を紹介する。

はじめに

(1)直近のがん対策

我が国におけるがん対策は、がん対策基本法(平成18年6月)に基づき国が「がん対策推進基本計画」(平成24年6月)を定め、「がん患者を含めた国民が、がんを知り、がんと向き合い、がんに負けることのない社会」の実現を目指して、国と地方公共団体、がん患者を含めた国民が一体となって活動を進めている。

その中で、国は平成19年度から10年間の目標として「がんの年齢調整死亡率(75歳未満)の20%減少」を掲げた。しかし、その達成が困難であるとの見通しから、平成27年12月に、次の3点を柱とした「がん対策加速化プラン」を定めている。

  1. [1]がんの予防
    予防や早期発見を進め、避けられるがんを防ぐこと
  2. [2]がんの治療・研究
    治療や研究を推進し、がんによる死亡者数の減少につなげていくこと
  3. [3]がんとの共生
    就労支援や緩和ケアなどを含む包括的な支援により、がんとともに生きることを可能にする社会を構築すること

特に、「[3]がんとの共生」に関しては、がん対策推進協議会がとりまとめた「今後のがん対策の方向性」(平成27年6月)において、“ライフステージに応じたがん対策”、“これまで以上にがん患者・経験者の状況に応じた細やかな支援の充実”、“将来にわたって持続可能ながん対策の実現の必要性”などが指摘されている。

今後もがん患者の増加が見込まれる中、限られた資源を有効活用しつつ、持続可能かつ効果的・効率的な支援の仕組みづくり、体制づくりが求められている。

(2)がん患者・経験者に対する支援を検討するにあたっての3つの視点

こうした背景を踏まえ、みずほ情報総研株式会社では、今後のがん患者・経験者への支援のあり方を検討することを目的に、医療現場でがん診療に携わっている医師、看護師、薬剤師、がん患者・経験者等を招へいし、研究会を開催した。

その中でがん患者・経験者に対する支援に関する問題や課題について意見交換をしたところ、特に次の3点に着目してその後の検討を行うこととした。

  1. [1]がん患者・経験者に対する支援の優先順位
  2. [2]相談支援センターにおける課題
  3. [3]相談支援センター以外の支援主体の必要性

(3)調査の概要

研究会では、前項の3つの視点に基づき、全国のがん診療連携拠点病院にある相談支援センター、ならびにがん患者・経験者を対象としたアンケート調査を実施した。各調査の概要は以下のとおり(図表1、図表2)。

以下、上記調査を通じて明らかとなった論点を整理する。


図表1 相談支援センター調査
図表1


図表2 がん患者・経験者調査
図表2

1. がん患者・経験者に対する支援の優先順位

(1)優先順位の評価の視点

がん患者が直面する問題は多岐にわたる。治療の副作用等に伴う身体的な問題や、がんと診断されたことに伴うショック等による精神的な問題、就労や生活費・治療費などの社会的・経済的な問題、治療に伴う妊娠・不妊等の悩み等である。すべての問題に対して支援を充実させることは改めていうまでもないが、限られた資源を有効活用するためには問題の優先度を評価し、優先度の高いものから着手するという考え方が必要である。それにより、より効率的に資源を投入し、支援の充実を図ることが期待できる。

そこで我々は、がん患者・経験者調査の結果をもとに、治療経過(がん診断・治療中の段階/経過観察の段階/定期的な通院のない段階)別に対策の優先度を分類することを試みた。(図表3)

すなわち、「問題に直面している患者の割合」が高く、「問題が解決している患者の割合(≒現状の仕組み・体制で支援ができている患者の割合)」が低い問題は最も優先度が高く、逆に「問題に直面している患者の割合」が低く、「問題が解決している患者の割合」が高い問題は最も優先度が低い、という考え方である。また、「問題に直面している患者の割合」は低いものの、「問題が解決している患者の割合」も低い問題は、いったん問題を抱えると解決が難しく、現状の支援ではカバーしきれていない可能性が高いため、対策の優先度が高いと考えた。

なお、今後はさらに、がん患者・経験者にとっての深刻さや支援に要するコスト等も加味していくことで、より施策検討に資する資料になるものと考えられる。


図表3 がん患者・経験者に対する支援の優先順位の分類方法
図表3

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