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技術動向レポート

地球観測衛星のデータ公開の現状と今後の展望(1/3)

情報通信研究部 チーフコンサルタント 井上 敬介

地球観測衛星を利用した地球観測データの収集が始まって久しい。1958年にアメリカがエクスプローラー1号を打ち上げたのを皮切りに世界各国が地球観測衛星を打ち上げて、科学的研究・気象予報・民生利用など、様々な目的に用いてきた。

地球観測衛星が収集するデータの容量は膨大であり、その処理や伝送にかかるコストが大きいことから、かつてデータの入手・活用は容易ではなかった。しかし情報通信技術の発達により、近年は誰でもインターネットを通じて地球観測衛星のデータを入手し、活用できる環境が整いつつある。

筆者は2016年7月に、USGS(アメリカ地質調査所)のEarth Research Observationand Science(EROS)Centerを訪問する機会があった。そこで収集した情報も交えつつ、地球観測衛星が観測したデータの近年の整備・公開状況を紹介し、今後の活用の展望について私見を述べてみたい。

1. 地球観測衛星とは?

地球観測衛星は、地球の周回軌道上から主に電波、赤外線、可視光を用いて地球を観測する人工衛星であり、地球の熱輻射による赤外線や太陽光の反射・散乱を観測するもの、人工衛星自体が発する信号の反射・散乱を観測するものがある。

地球観測衛星は、観測する波長によって様々な現象、例えば地表や大気の温度、湿度、空気中の化学物質の濃度、降水量などを捉えることができる。そのため、目的に応じて分解能・観測波長の異なる様々な地球観測衛星が打ち上げられ、オゾン層の破壊、熱帯雨林の減少、異常気象の発生などの環境の変化、災害の監視、気象現象の観測、軍事偵察などに用いられてきた。

2. 地球観測衛星が観測するデータ

本レポートでは、地球観測衛星が観測するデータを、大きく以下の2種類に分類して紹介する。

  • 定期的に収集された画像データ
  • 標高データ

(1)定期的に収集された画像データ

定期的に収集された画像データは、地球を周回する地球観測衛星から赤外線・可視光を観測して収集した画像データである。静止軌道など特殊な軌道をとるものを除けば、地球観測衛星は地球の周辺をまんべんなく回って画像を収集できる。数時間から数日の間隔で同一地点の観測を行うことができるため、人間の活動や自然災害などによる地表の変化を捉えることに利用される。

(2)標高データ

地球観測衛星が観測したデータから作成した、地表の陸地部の標高データである。地球観測衛星は地球を様々な角度から観測するため、そのデータから三角測量の原理によって標高データを作成できる。標高データは、地理空間情報として最も基本的なデータの一つであり、立体地図の作成から火山活動や洪水による災害予測、水資源の管理などに幅広く用いられる。

次章以降、これら2つのデータについてデータの整備・公開状況を紹介する。

3. 定期的に収集された画像データ

地球全体の画像データを定期的に収集してきた地球観測衛星は数多くあるが、ここでは現在も運用中でありかつ長年にわたる時系列の観測データが公開されている、Landsat衛星とTerra衛星の画像データを紹介する。

(1)Landsat衛星とTerra衛星

[1] Landsat衛星

Landsat衛星は著名であるため、ご存知の方も多いだろう。米国のNASAが打ち上げた地球観測衛星で、1972年に1号機が打ち上げられて以来、代を重ねて継続的に運用が続けられてきており、その撮影した画像は科学的研究のみならず農業や都市計画などに幅広く活用されてきた。現在は1999年に打ち上げられた7号機と、2013年に打ち上げられた8号機が運用中である。

分解能は近年開発された衛星には劣るが、運用期間が長いために長期間に渡る変化を捉えるためのデータが揃っている。可視光から赤外線までの波長を捉えることができ、最新機である8号機では、全部で11の波長域のデータが観測でき、分解能は可視光では30mとなっている。11の波長域のデータを組み合わせることで人間の目で見た時の色を再現する画像データを作成できる他、地表面の状況(例えば森林・畑・建築物など)によって反射光のスペクトルパターンが特徴を持つことから、土地利用データの作成などにも用いられている。

[2] Terra衛星

Terra衛星は米国のNASAが1999年に打ち上げた地球観測衛星である。高性能熱放射反射放射計(ASTER)や、中分解能撮像分光放射計(MODIS)を含む全部で5つの観測装置を搭載している。ASTERは14の波長域のデータを観測でき、可視光の解像度は30m、MODISは30の波長域のデータを観測でき、解像度は250mから1kmである。打ち上げから既に17年が経過しているが、現在でも運用が続けられている。なお、ASTERは日本の通商産業省が開発した観測装置である。

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