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政府と生活者とのコミュニケーションに着目して

地球温暖化についてのコミュニケーションのこれまでとこれから

2016年4月27日
みずほ情報総研株式会社

はじめに

「地球温暖化」が世の中に報道され生活者が知るようになり、まもなく30年を迎え、総じてこの30年間で、地球温暖化への生活者の意識や行動は高まったといえる。しかしながら、ここ数年、地球温暖化に関する機運の低下が感じられる。例えば、IPCCの最新の報告書や日本政府の温室効果ガス削減目標が公表されても、以前のような大きな関心を持って世論に受け止められることは減ってきたように思われる。

そこで今回、商・学横断的に、各界を代表する有識者の方々による座談会を開催し、多くの普及啓発が実施されているにも関わらず、生活者が「わがこと化」しにくくなっている原因を探るとともに、地球温暖化対策として「効果的なコミュニケーションや仕組み」について検討し、結果をレポートに纏めた。本レポートが、低炭素でレジリエンスが高い社会を、生活者の行動のもとで達成していくために資するものとなれば幸いである。

座談会で出された意見(まとめ)

1.現状の課題について

  • 地球温暖化のコミュニケーションで大事にすべきことは、問題の規模感である。地球温暖化問題を身近に感じてもらい、興味を持ってもらう必要はあるが、身近なままだけでは問題を矮小化してしまう恐れがある。
  • 温暖化対策は、一人一人がこつこつやっても、大口のところで消費されていると、自分が行動しても仕方ないんじゃないかという気持ちもある。
  • 重要なものは世の中にあふれている。「大事だから」というだけでは、相手に伝わる理由にはならない。

2.伝える内容の転換の方向性について

  • 生活者に行ってもらいたいことは、こまめに電気を消してほしいということだけではない。我慢や節約の話ではなく、もっとクリエイティブで未来志向で発展的なことである。社会を変えるために何ができるのか?という観点に立ち、生活者と話し合うことが必要ではないか。
  • 気候変動問題を解決するのは、人々が化石燃料をいずれ使わなくなるということではないか。化石燃料が余っていても、もっと良いものが出てきたので、むしろ積極的に誰も見向きしなくなるような状態を目指していくことではないか。
  • 企業が環境に良いもの、サービスを作ったとすれば、それを選ばせるインセンティブや価値観を作ること、加えて、政策の支持も重要である。また、一人一人の心がけを強調するのではなく、大口のところの根本的な発想の転換につながることが重要で、そのようなことが納得される社会を作っていくことが必要ではないか。

3.伝えるということについて

  • 異常気象など、生活者の関心が高いことを話の取り掛かりにすると効果的である。被害が自分の身に降りかかるものでなければ、他に人を引き付ける要素は好奇心しかない。楽しめるという仕掛けこそが、普通の人を引き寄せる大事なキーワードではないか。
  • 生活者が自分達で話し合い、自分でデータを咀嚼して考えて、自分の価値観を相手に伝えることで自分自身の気持ちが変わったり、相手の見方が変わるという場づくりが必要ではないか。
  • 生活者たちに嘘がつけなくなったということが前提にある。オープン・アンド・フェアで透明度を重視し、伝えていくことが重要。「それをやっても解決はしない、でも、だからといってやらないよりはやったほうが良い」とまで言えるとよい。情報があふれている昨今、伝える内容以上に、伝える人のマインドや意志が最も重要である。

当社の考察

1.身近なことだけを伝えるコミュニケーションの時代は終わった

  • 座談会で最も明白になったのは、地球温暖化に関するコミュニケーションが転換期を迎えているということである。
  • 「地球温暖化」というキーワードが広がり始めた当初は、人々は好奇心や新鮮味を持って問題を受け止めていた。しかし、「身近」な内容だけを長年伝えてきた結果、一人一人の対策行動が削減にどのように寄与しているかが不明確であったり、寄与が小さいと感じられ、人々は温暖化対策に興味を失ったのではないか。
  • 今後、地球温暖化に関する政府と生活者のコミュニケーションを検討するに当たっては、このように生活者の意識や関心が変容したことを大前提にするべきである。

2.地球温暖化を解決するための本質を伝えるコミュニケーションが必要

  • 転換期を迎えた今、生活者に伝えるべきことは、下記に示すような「地球温暖化問題を解決するための本質」であると考える。
    • 気候を安定化させることは世界的な合意であり、対策強度を弱めることも、温室効果ガスの削減目標を後退することも許されない。今後、地球温暖化問題を本気で解決していくためには、効果の高い対策メニューを実施して2050年に排出量を80%削減すること、すなわち、化石燃料利用からの脱却が必要である。そして、その実現には、対策メニューを生活者に支持してもらうことが不可欠になる。
    • 生活者に求められる効果の高い対策メニューとは、これまでのようなこまめな省エネ行動だけではなく、より高効率な省エネ家電の利用や断熱性能の高い住宅の選択、低炭素化につながるサービス等の選択、といった取組である。
  • これらの「本質」を伝えるためには、どのようなコミュニケーションが有効かを検討し、着実に遂行することが必要である。

3.政府は一丸となって本気で取り組んでいる姿を国民に示すべき

  • 政府に求められていることは、省庁横断的に様々な政策と連携し、政府が一丸となって地球温暖化問題の解決に本気で取り組んでいる姿を国民に示すことである。その際には、PDCAサイクルを確立して対策効果を示し、国民に対する透明性・信頼性を確保することも重要になる。
  • 地球温暖化の本質を生活者に理解してもらうためのコミュニケーションを実現し、政府と生活者が一体となって本気で地球温暖化対策に取り組んでいくことによってはじめて、低炭素でレジリエンスの高い社会を達成することが可能になるのではないだろうか。
  • 本レポートは当部の取引先配布資料として作成しております。本稿におけるありうる誤りはすべて筆者個人に属します。
  • レポートに掲載されているあらゆる内容の無断転載・複製を禁じます。全ての内容は日本の著作権法及び国際条約により保護されています。
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