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技術動向レポート
ロシア及びユーラシア経済連合における規制動向の整理

医療機器産業の新興国展開促進に向けて(1/3)

社会政策コンサルティング部 医療政策チーム医療産業課 コンサルタント 片岡 千鶴

さらなる海外展開が期待される医療機器産業において、特に新興国展開の際に課題となることの多い医療機器規制対応に着目し、新興国の中でも現状の市場規模が大きいロシア連邦を中心に、2017年1月から市場統合に向けた医療機器承認プロセスにおける共通制度が開始されるユーラシア経済連合における規制動向を整理した。

はじめに

平成28年6月2日に閣議決定された「日本再興戦略2016」においては、医療機器産業は、新興国を中心に拡大するグローバル市場の獲得を図ることとされ、医療機器を含む日本の医療技術・サービスで2030年までに5兆円(2013年時点で6,600億円)の海外市場を獲得することが目指されている。

このように日本再興戦略においてもメインターゲットとされている「新興国」については、市場成長性の観点から、BRICs、ASEAN、中東諸国等が有望視されることが多い。海外展開にあたっては、現地規制に対応し、医療機器の登録申請を行い承認されることが市場進出の入口で求められる必須要件となる。しかし、一般的に新興国の規制は発展途上にあり、頻繁に変更があることに加えて規制の文書上の内容と実態が必ずしも一致しないことが多いため、医療機器メーカーの薬事規制対応を困難なものとしており、海外展開における大きな課題のひとつとなっている。

そこで、本レポートでは、新興国のうち、現状の市場規模が大きく周辺地域へも展開が見込まれる一方で、言語の問題も含めて特に情報取得の困難なロシア連邦を取り上げながら、同国の医療機器規制の理解の一助となるよう、医療機器規制の主な着目点に沿って規制の特徴や動向、課題等を概観する。

1. ロシアにおける医療機器市場

今回、新興国の例としてロシアを取り上げる背景としては、上述した医療機器規制情報の取得の難しさの一方で、(1)新興国の中では現状の市場規模が大きく保健医療政策にも積極的であることと、(2)周辺国との関係においてもロシア一国に限らない面的展開が考えられることの2点から、市場の魅力度は比較的高いと考えられるためである。

(1)市場性と保健医療政策動向

ロシア医療機器市場は、2014年時点で約6485.3百万ドル(1ドル110円換算で約7,134 億円)の規模(世界第9位)であり、市場全体の約2%程度を占めている(1)。年平均成長率も、約6.06%と先進国と比較して高い傾向にある。

政策面では、近年ロシアにおいては保健医療政策に関する問題意識が高く、心血管疾患・がん・結核等の深刻な病気に対する施策、予防医療の推進、医療従事者や医療業界の賃金向上等を含む大規模プログラム「2020年までのロシア連邦ヘルスケア発展プログラム(Health2020)」が進められている。また、医療産業分野についても、「2020年までのロシア連邦製薬・医療産業発展プログラム」(Pharma 2020)が2009年に承認され、ロシアの製薬・医療産業のイノベーションモデルへの移行を目的として、外資系メーカーによるロシア現地生産化や外資系メーカー誘致等による現地R&Dなどを目指して革新的医薬品・医療製品の生産・開発や医薬品・医療製品に関する制度改善等が進められている(2)

こうした中、民間医療機関には最新医療機器設備がみられるものの、医療機関の大多数を占める公立病院を中心に医療設備の老朽化が進んでおり、医療機器の6割程度が古くなっているともいわれ(3)、潜在的な医療機器ニーズも高いことが想定される。

(2)周辺地域における動向

ロシア及びその周辺国では、2015年1月1日に「ユーラシア経済連合(EAEU)」(加盟国:ロシア、ベラルーシ、カザフスタン、アルメニア、キルギス)が発足しており、医療分野においては、医薬品共同市場及び医療機器共同市場の形成が目指されている。具体的には、後述するとおり(3章参照)、2017年1月から域内共通の新たな医療機器登録承認制度が開始されており、今後はロシア市場への進出が周辺国も含めた面的な市場進出となる可能性が高まっている。

図表1 国別医療機器市場世界シェア(2014年時点)
図表1

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