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社会動向レポート
認知症高齢者の日常生活自立度別検討

認知症の人への金銭管理の支援実態と課題(1/4)

社会政策コンサルティング部 コンサルタント 小松 紗代子

今後、認知症高齢者の増加が予想されるなど、判断能力が低下した人々への金銭管理の支援のあり方が課題になると考えられる。そこで本稿では、認知症の人の金銭管理を支援した経験をもつ40代以上の男女を対象に実施したアンケート調査をもとに、金銭管理支援の実態、支援者の負担感、支援者が金融機関に期待するサービス、について考察した。

はじめに

認知症高齢者は、2015年時点で約500万人いるといわれている。そして、「団塊の世代」が75歳以上となる2025年には約700万人に増加すると推計されている(1)。注目すべきは、認知症高齢者の7割が在宅で生活していて、病院や介護施設に入院・入所している者よりも圧倒的に多いことである(2)。認知症高齢者の増加に対して高齢者向けの介護施設等の増設には限りがあるので、在宅生活を継続する認知症高齢者が一層増加していくものと推測される。

認知症高齢者が在宅で生活すれば、金銭の管理、外出・買い物の支援など様々な生活上の支援を必要とする。このうち金銭管理の多くは、認知症高齢者の家族・親族などの身内が行っていると考えられる。しかし、家族・親族がどのような金銭管理の支援をしているのかを、明らかにした報告はあまり見当たらない。

また、高齢者の金融資産の多くは預貯金として金融機関に預けられている。年齢階層別にみると高齢者ほど貯蓄額が多い。単純な試算ではあるが、高齢者全体が保有する貯蓄額に認知症患者の発症率を掛け合わせると、認知症高齢者の貯蓄総額は約50兆円と試算される(3)。判断能力の低下によっては、お金の管理が難しくなることや、詐欺などの被害に遭いやすいことが懸念され、認知症高齢者の金銭管理について金融機関が果たすべき役割もあるだろう。

本稿では、当社(みずほ情報総研株式会社)が実施したアンケート調査をもとに、[1] 認知症の人の金銭管理に対して、家族・親族がどのような支援をしているのか、[2] 支援者はどのような負担を感じているのか、[3] 金融機関にはどのようなサービスが期待されているのか、を考察していく(4)

1. 分析の視点と調査の概要

(1)分析の視点

本稿では、金銭管理支援の実態や、支援者の負担感などを、「認知症高齢者の日常生活自立度」別に分析する。一般に、「認知症≒判断能力がない」と捉えられがちだが、認知症の人の判断能力は、認知症の進行に伴って徐々に変化していくことに特徴がある。厚生労働省が2015年に公表した認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)で、「認知症の人の意思が尊重」される社会の実現を目指しているように、金銭管理においても認知症の人の意思決定を尊重した支援のあり方を考えるべきだろう。そのために、まずは認知症の人の生活レベルを考慮した分析を行うこととした。

では、「認知症高齢者の日常生活自立度」とは、どのような内容だろうか。日常生活自立度は5段階に分類され、「ランクI:ほぼ自立している」~「ランクIV:常に目が離せない状態」までの4段階と、「ランクM:専門医療を必要とする状態」からなる(図表1)。このうち、ランクMは、生活レベルとは別の判断軸で分類されるため、以後の分析ではランクI~ランクIVの自立度に基づいて、支援の実態、支援者の負担感、負担を軽減する方策を検討していく。

図表1 認知症高齢者の日常生活自立度
図表1

(2)調査の概要

本調査は、インターネット調査として実施した(5)。調査対象は、40代以上の男女のうち、過去3年以内に認知症の家族・親族の金銭管理(預貯金・財産の管理)を支援したことがある人である。有効回答者数は2,000人である(図表2)。

認知症高齢者の日常生活自立度別にサンプル数をみると、ランクI 427人(21%)、ランクII 583人(29%)、ランクIII 507人(25%)、ランクIV 391 人(20%)となっていた。

また、回答者(支援者)と、支援対象者である認知症の人の基本属性は図表3に示した通りである。今回はインターネットを用いた調査だったこともあり、回答者は息子・娘などの子供世代が多く、配偶者の回答は少ないことに注意が必要である。

図表2 調査の概要
図表2

図表3 調査の回答者(支援者)と認知症のひとの基本属性
図表3

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