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社会動向レポート

広がりつつある高齢者の見守りの現状と今後のあり方について(1/4)

社会政策コンサルティング部 チーフコンサルタント 羽田 圭子

単身高齢世帯が増加しているが、在宅時の転倒や急病時に同居家族の通報や搬送等を期待できないため処置の遅れや孤独死等のリスクを伴う。リスク回避の方法として、近年、ボランティアによるもの、ICT(1)、センサー(2)等の機器を活用したものなど見守りの選択肢が増えている。今後も、少子高齢化、介護・看護労働力不足が見込まれるため、人とICT、センサー、介護ロボット等を組み合わせた見守りのさらなる普及が期待される。本稿は、高齢者の見守りについて、現状、課題、今後に向けた提言をまとめた。

1. 激増する高齢の単身世帯

2015年国勢調査によると、日本の総人口は1億2,709万人となり、2010年の前回調査から96万人減少した。75歳以上の後期高齢者は1,612万人で約8人に1人となり、14歳以下の子どもの1,588万人を初めて上回った。わが国の人口減少と少子高齢化はさらに進行している。

世帯の状況をみると、単身世帯が5,344万世帯まで増加しており、65歳以上高齢者の6人に1人が一人暮らしである。高齢者について5歳階級別に2000年を100とする指数でみると、特に80歳以上の単身世帯の増加が著しいが、これは夫婦世帯の一方が亡くなり、単身となるためと思われる(図表1)。

図表1 高齢の単身世帯の増加
図表1
(資料)国勢調査よりみずほ情報総研が作成

2. 高齢者にとっての自宅生活の意味とリスク

高血圧、高脂血症等の慢性疾患があったり、掃除や買い物等の生活支援や身体的な介護が必要になっても、軽中度のうちは、子どもと同居せずに自宅で生活する高齢者が増えている。なぜ、一人暮しを選ぶ方が増えているのだろうか。第一の理由として、「住み慣れた自宅で暮らし続けたい」との意思があるのではないかと考える。

個人差はあるものの、高齢になると、毎日仕事に行くこともなくなり、外出の頻度や人との交流は少なくなり、家が主な生活の場となる。あくまで例示だが、「お気に入りの庭を眺める」、「好きな酒を飲みながら食事をする」、「子どもや孫と交流する」、「好きなテレビ番組を楽しむ」、「ゆっくり風呂に入る」、「ペットと過ごす」といった、「家での何気ない生活」が高齢者にとってはかけがえのないものになるようである。

介護保険施設、老人ホーム、高齢者住宅等の施設は、住まいの提供、定期的な見守り、相談を基本サービスとしている。さらに、施設によっては、活動プログラムの提供、掃除・洗濯・食事・買い物等の家事の代行、通院等の外出介助、身体介護、リハビリテーション、看護、医療処置などを施設職員が直接提供する、もしくは外部機関から提供する。当然、こうしたサービスは有償で提供される。

一般的に、高齢者が施設に移り住む理由としては、自宅の手入れ、掃除、食事の支度等が負担になること、日常的に介助や介護が必要になること、緊急時の対応に不安があることなどが挙げられる。施設においては、前述したような様々なサービスの提供が受けられるため、安全性や生活の利便性は高まるが、共同生活のため施設のルールに従うことが求められ、生活における自己決定の範囲、すなわち自律度は低くなる。高齢者住宅等の中間的な施設もあるが、一般的に自宅と比べるとやはり自律度は低くなるであろう。

一方、住み慣れた自宅では、生活全般について自分で意思決定をすることができるが、裏を返すとすべてを自己責任で実行しなければならない。図表2に自宅と施設における生活の「自律」の範囲を比較した。

高齢者の心身、家庭、経済等の状況や価値観はそれぞれ異なる。自宅や施設の形態も多様であり、コストも様々である。意思だけでなく、実現可能性やコスト等の要素もあるため、住み慣れた自宅に住み続けることも含め、高齢期の住まいの選択は簡単ではない。

本稿は、単身で自宅で暮らし続ける高齢者が多い現状について、自律の観点から考察を試みたものであり、自宅か施設かの選択肢の比較や、施設よりも自宅を推奨することなどを目的としたものではないことを申し添える。

なお、「じりつ」には「自律」と「自立」があるが、デジタル大辞泉によると下記とされている。

  • 「自律」→他からの支配・制約などを受けずに、自分自身で立てた規範に従って行動すること。
  • 「自立」→他への従属から離れて独り立ちすること。他からの支配や助力を受けずに、存在すること。

高齢になっても一人暮らしを選択する心情としては、「自分の生活は自分で決める」、「自分の事は自分でやる」という覚悟が根底にあると思われるため、本稿では「自律」という言葉を使用している。

単身世帯においては、自律度の高い生活を送ることができる一方で、転倒したり、急病になった時、気付いて助けてくれる家人がいないため、発見、対応が遅れ重症化したり、最悪の場合、死に至ることもある。加齢に伴い、一人暮らしの生活上のリスクは高まっていく。実際、この20年間で救急搬送の件数は増加傾向にあるが、内訳をみると高齢者の割合が顕著に上昇している(図表3)。

孤独死の全国統計は無いが、東京23区内でみると、死亡後、数日経って発見された高齢者は増加傾向にあり、2015年には3,000人を突破した(図表4)。

発見が早ければ救命できた可能性がある事例、家族に別れも告げずに突然亡くなる事例、近隣から悪臭の通報があって発見される事例、遺体の損傷が激しく処理が困難な事例、飼い主が亡くなったためペットも死亡した事例等、孤独死の発生は遺族や近隣住民にも衝撃を与える。

人は、人との関わりがなければ生きていけない社会的な存在であるが、誰にも看取られずに亡くなり、死後、一週間、時には一カ月以上、誰にも気付かれないという孤独死が日々、全国で起きている。こうした「無縁社会」の背景には、人と人のつながりの希薄化があるといわれる。人の尊厳という観点から、孤独死対策の必要性が叫ばれている。

こうした現状を高齢者自身はどう感じているのだろうか。内閣府の調査結果によると、誰にも看取られることなく息を引き取り、その後、相当期間放置されるような孤独死を身近な問題だと感じる(「とても感じる」と「まあ感じる」の合計)人の割合は、60歳以上の高齢者全体では2割に満たないが、単身世帯では4割を超え、差し迫った問題と認識されている(図表5)。

図表2 「自律」に着目した自宅と施設の標準的な日常生活の比較(注)
図表2
(注)標準的な「自宅」と介護保険施設、老人ホーム、高齢者住宅等の「施設」を想定したもの。
(資料)みずほ情報総研が作成

図表3 年齢区分別の搬送人員数と構成比の5年ごとの推移
図表3
(注1) 搬送人員数に対する割合の算出に当たっては、端数処理(四捨五入)のため、割合の合計は100%にならない場合がある。
(注2) 年齢区分の定義
新生児:生後28日未満の者、 乳幼児 : 生後28日以上の満7歳未満の者
少年:満7歳以上満18歳未満の者、成人: 満18歳以上満65歳未満の者、高齢者:満65歳以上の者
(資料)総務省「平成28年版救急・救助の状況」

図表4 東京23区内で自宅で死亡した65歳以上一人暮らしの者
図表4
(資料)東京都福祉保健局東京都監察医務院の資料をもとにみずほ情報総研が作成

図表5 孤独死を身近な問題と感じる人の割合
図表5
(注1) 対象は、全国60歳以上の男女
(注2) 本調査における「孤独死」の定義は「誰にも看取られることなく亡くなったあとに発見される死」
(資料)内閣府「高齢者の健康に関する意識調査」(平成24年)

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