ページの先頭です

技術動向レポート

欧州におけるPower to Gasのプロジェクト動向と今後の展望(1/2)

環境エネルギー第2部 コンサルタント 大山 祥平

国内外で、再生可能エネルギーを水素に変換して貯蔵する “Power to Gas” 技術の実証が進んでいる。本稿では、欧州における近年のプロジェクト動向を紹介するとともに、今後の展望を述べる。

はじめに

近年、日本および海外諸国では、水素エネルギーの活用に向けた取り組みが進んでいる。水素の利点として、様々なエネルギー源から製造可能でエネルギー・セキュリティ(エネルギーの安定供給)の向上に繋がることや、燃料電池と組み合わせて使用することで、省エネルギーやCO2 排出量削減に寄与することが挙げられる1

また、水素は水の電気分解によって製造することができるため、電力の貯蔵手段としても近年注目を集めている。電力貯蔵技術には水素以外にも蓄電池やフライホイール(1)等様々なものがあるが、目的とする貯蔵期間と貯蔵容量により、適した技術は異なってくる(図表1)。一般的には、数秒から1日程度のサイクルで充放電を行う場合には蓄電池やフライホイール等が優位であるのに対し、数週間から数カ月といった長期間にわたり大量の電力を貯蔵する場合には、水素が優位になると考えられている。

現在、世界的に再生可能エネルギーの導入量が拡大しているが、太陽光発電や風力発電は気象条件に応じて発電量が変動するため、時に需要以上の電力(余剰電力)が発生する可能性がある。余剰電力を無駄なく有効活用する上で、水素をはじめとする電力貯蔵技術の重要性は今後さらに高まると考えられる。

水の電気分解(水電解)により水素等のガスを製造する技術は、Power to Gas(PtG)と呼ばれている。PtGの基本的なフローを図表2に示す。水電解により水素を製造した後、そのまま燃料電池自動車(FCV)や定置用燃料電池等の燃料として利用するか、あるいは水素をCO2と反応させることでメタン化(メタネーション)し、合成天然ガスとして利用する方法がある。また、近年では水素やメタン以外にも目的生産物の多様化に向けた取り組みが見られ始めている。

本稿では、PtGの実証プロジェクト動向について、現在最も導入が進んでいる欧州の事例を中心に紹介する。

図表1 電力貯蔵技術の特性による住み分け
図表1
(資料)IEA“ Technology Roadmap Hydrogen and Fuel Cells”2
(注)PHS:Pumped Hydroelectricity Storage(揚水発電)、CAES:Compressed Air Energy Storage(圧縮空気エネルギー貯蔵)

1. 既存プロジェクトの概略

欧州では、2000年代からPtGの実証プロジェクトが開始されており、既に終了したものも含めると、合計70件近いプロジェクトが実施されている。国別ではドイツにおける実施件数が最も多く、全体の約6割を占めている(図表3)。この背景として、ドイツではEnergiewende(エネルギー大転換)という政策のもと、再生可能エネルギーの導入を強力に推進していることが挙げられる。Energiewendeでは、2050年までに電力部門における再生可能エネルギー比率を80%に高めることを目標としており、このような野心的な目標の達成のためには、不安定な再生可能エネルギー電源の出力変動を吸収する電力貯蔵技術が不可欠である。ドイツ以外では、風力発電の導入が進むデンマークやイギリス等においてPtGプロジェクトが比較的多く実施されている。

PtGプロジェクトを目的生産物の種類別に分類した結果を図表4に示す。水素のみを製造するケースが最も多く、全体の約6割を占めている。次に多いのはメタンのみを製造するケースであり、水素とメタンの両方を製造するケースが後に続く。また、少数ではあるが液体燃料やメタノール等を目的生産物とする事例も存在する。なお、水素のメタン化・メタノール化に必要となるCO2は、バイオガス精製や火力発電所の排ガスから調達することが想定されている。

図表2 PtGのフロー
図表2
(資料)みずほ情報総研作成

図表3 欧州における国別のPtG プロジェクト件数
図表2
(資料)European Power to Gas Platformホームページ3に基づきみずほ情報総研作成

図表4 目的生産物別のPtG プロジェクト件数
図表2
(資料)European Power to Gas Platformホームページ3に基づきみずほ情報総研作成

  • 本レポートは当部の取引先配布資料として作成しております。本稿におけるありうる誤りはすべて筆者個人に属します。
  • レポートに掲載されているあらゆる内容の無断転載・複製を禁じます。全ての内容は日本の著作権法及び国際条約により保護されています。
ページの先頭へ