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ビジネス最前線

金融業界におけるEDIの動向について(1/2)

プラットフォームサービス第2部
課長 町田 英輝  システムエンジニア 大石 恭史

総合振込や口座振替といった金融サービスはEDI(1)によって支えられている。金融業界のEDI代表ともいえる全銀手順は、1980年代に制定されて以来、今もなお利用されているが、2018年から2つの大きな変革が起きようとしている。本稿では、現行の全銀手順の仕様や、今後の変更点について解説する。

1.金融業界におけるEDI

金融業界では、企業・銀行等金融機関相互のEDIの手段として、一般社団法人全国銀行協会(以下、全銀協)によって制定された全銀手順が利用されている。全銀手順の歴史は古く、1983年に全銀協標準通信プロトコルのベーシック手順が制定されて以降、1997年のTCP/IP手順の制定等、いくつかの追加や変更を経て、金融業界におけるEDIの標準規約として、2018年現在も利用されている。PSTN(2)を介して通信を行う点や、センター確認コードと呼ばれる通信相手を一意に識別するコードを用いて、通信相手を認証する点、データの到着回数を「サイクル」として管理し、重複伝送を防ぐといった点が特徴として挙げられる。

国内外を問わず、EDIは流通、自動車、小売、建築等さまざまな業界で利用されており、表立っては見えないが、裏方として経済活動に関わっている。金融業界もその例外ではなく、企業は金融機関が提供するサービスの利用を目的に、一括ファイル伝送の手段としてEDIを利用している。例えば、複数の銀行振込を一括して依頼する総合振込、従業員に対する給与の振込を依頼する給与振込、お客さまの口座から利用料金を自動で引き落とす口座振替等で利用され、日々大量のデータ交換が行われている。銀行振込や口座振替は、私たちの生活に密着していることに加え、企業活動を行う上で欠かすことのできない決済の手段であることから、社会インフラとして機能しているといっても過言ではない。このような金融業界のEDIにおいて、インターネットの業務用インフラとしての利用拡大や、取り扱う情報量の増加、労働生産性の向上等を背景に、2つの大きな変革が起きようとしている。その1つが、「企業間データ交換の高度化を目的とした全銀EDIシステムの稼働」であり、もう1つが「INSネット(ディジタル通信モード)の終了に伴うベーシック手順およびTCP/IP手順のサポート終了」である。

2.企業間データ交換の高度化を目的とした全銀EDIシステムの稼働

政府は、2016年6月に「日本再興戦略2016」を、2017年6月に「未来投資戦略2017 ―Society5.0の実現に向けた改革―」(以下、未来投資戦略)を閣議決定した。これらの施策の1つにFintechが挙げられる。Fintechとは金融を意味する「Finance」と、技術を意味する「Technology」を組み合わせた造語であり、概ねITを活用した金融サービスへの変革といった意味合いで使われることが多い。

未来投資戦略では、Fintechによる変革後の生活・現場のワンシーンとして図表1のような記載がある。

ここで述べられている「商流情報付き送金電文」がEDIでやりとりするデータである。商流情報が付与されることにより、これまで支払企業と受取企業の間で、いわゆる「カネ(総額)」の情報のみの交換であったことが、一緒に「モノ(商品名や単価や数量等)」の情報も交換可能になる。

では、変革後の生活・現場のワンシーンで述べられている「煩わしい売掛金の作業」とはなんだろうか。売掛金とは未集金の売上のことである。企業は商品を販売した対価として金銭を得るが、正しい金額を受け取ったかを確認する「消込作業」が必要となる。例えば、口座への振込額が、発行した紙伝票の請求額と一致しているかといった確認だ。図表2に月間の消込処理にかかる平均事務処理時間のデータを示す。データ交換の高度化により、これらの作業を効率化、自動化することで、消込にかかる時間を削減し、企業における決済事務の効率化を図ることができる。

このような企業間のデータ交換の高度化を実現するという政府方針に基づき、全銀協および一般社団法人全国銀行資金決済ネットワーク(以下、全銀ネット)は、新たなプラットフォームとして全銀EDIシステムの構築・導入を決定した。稼働開始は、2018年12月を予定しており、2020年までの全面移行が計画されている。

全銀EDIシステムの稼働にあたり、特筆すべき変更点は大きく分けて以下2点である。

[1] 接続先と伝送手順の変更
[2] データフォーマットの変更

図表1 未来投資戦略 変革後の生活・現場のワンシーン(抜粋)
図表1
(資料)「未来投資戦略2017−Society 5.0の実現に向けた改革−」

図表2 消込処理にかかる平均事務処理時間
図表2
(資料)中小企業庁「「決済事務の事務量等に関する実態調査」最終結果報告書」をもとにみずほ情報総研が作成

[1] 接続先と伝送手順の変更

一括ファイル伝送では、PSTNを利用して各金融機関へ直接データ交換を行っていたが、インターネットもしくは閉域網(3)を利用のうえ全銀EDIシステムを経由し、各金融機関とデータ交換を行うことになる。通信回線がPSTN(速度:2.4kbps~64kpbs)からインターネット(速度:数Mbps~数Gbps)に変更となることでデータ交換にかかる時間を大幅に短縮できるメリットや、複数の金融機関との取引がある場合は、各々の金融機関と接続していたものが、全銀EDIシステム稼働後は、全銀EDIシステムと各金融機関がバックエンドで接続されるため、企業から見た一括ファイル伝送の接続窓口が一本化されるといったメリットがある。ただし、インターネットバンキングの接続先や、一括ファイル伝送のサービス申込先が各金融機関であることに変更はない。

伝送手順としては、全銀手順の代わりにJX手順の採用が決まっている。JX手順とは、インターネット等を使用して、HTTPSによるデータ交換が行える通信手順であり、流通業界(メーカー、小売等)ではすでに広く採用されている。全銀EDIシステムとの通信はTLS1.2(4)による暗号化と、クライアント(企業側システム)への全銀ネットが発行した証明書導入を必須としており、セキュリティについても考慮されている。

[2] データフォーマットの変更

全銀手順は、全銀協が制定したデータ固定長の全銀フォーマットを用いて各金融機関とデータ交換を行うが、全銀EDIシステムのデータ交換(JX手順)では、商流情報付き送金電文を実現するために、XML形式と呼ばれるデータフォーマットを利用する。XMLとは、Extensible Markup Languageの略称であり、テキスト形式でデータ記述を行う言語である。タグをつけてデータを表現できるという特徴があり、記述の自由度が高い。金融通信メッセージの国際規格(ISO20022)でも規定されている通信規格である。

現行の総合振込サービスにて使われる送金指示のデータ電文には、「EDI情報欄」もしくは「振込メッセージ欄」と呼ばれる20桁のスペースがある。制定当初は、データ交換する企業間で売掛金消し込みのキーとしてこのスペースを利用することを想定していたが、最大20桁という情報の制限もあって、現状利用している企業は少ない。そこで、この項目を拡張し、さまざまな情報を付加することが可能なXML形式が採用された。XML形式では、EDI情報欄が140桁になっており、かつ、繰り返しの利用が可能なため拡張性に優れている。加えて、海外および他業界(流通、自動車、電子機器、石油化学等)においてもXML形式は広く利用されていて、他業界とのデータ連携においても親和性が高いというメリットがある。

注意点は、全銀EDIシステムへの移行対象が、金融機関のすべてのサービスではないということだ。現時点では、EDI情報欄をもつサービスである「総合振込」「振込入金通知」「入出金取引明細」の3サービスが対象である。その他サービスの「給与振込」「口座振替」等の一括ファイル伝送においては、もう1つの変革点である以下3章の対応が必要となる。

図表3 EDI情報欄のイメージ
図表3
(資料)一般社団法人全国銀行協会XML電文への移行に関する検討会「総合振込にかかるXML 電文への移行と金融EDIの 活用に向けて」(2016年12月)

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