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社会動向レポート

地域と学校で子どもを育てる

学校運営協議会の普及に向けて(1/3)

社会政策コンサルティング部 コンサルタント 飯村 春薫

地域住民や保護者等が学校運営に関わる場である学校運営協議会が導入されて13年が経過した。本稿では、アンケート調査やヒアリング調査の結果から同協議会の特徴を整理し、普及の可能性を考察した。

はじめに

地域住民や保護者等が学校運営に関与し、地域と学校でともに子どもを育てる環境を整備することを目的として、文部科学省は、2004年に「コミュニティ・スクール(以降、CSと表記。)」を導入した。CSとは、地域住民や保護者等が学校運営の方向性を協議する場である「学校運営協議会」を設置した公立学校(幼稚園、小中学校、義務教育学校(小中一貫校)、中等教育学校(中高一貫校)、高等学校、特別支援学校)であり(1)、新しい公立学校のあり方の一つとして捉えられている。

図表1 CS のイメージ
図表1
(資料)文部科学省「「学校運営協議会」設置の手引」より抜粋

図表2 学校運営協議会の権限
図表2
(資料)「地方教育行政の組織及び運営に関する法律」を参考に筆者作成

(1)なぜ日本はCSを導入したのか

[1] 地域住民や保護者等が学校に参画する意味

1990年代前半までの日本では、「学校教育は学校が担うべきもので、地域住民や保護者等は学校教育に介入しない」という考え方が根強く浸透し、外部が学校運営に参加することは、「学校批判や教育運動的なきらいもあった」(2)。それにもかかわらず、1990年代後半になると、地域住民や保護者等が学校に参画する必要性が指摘されるようになる。

そのきっかけの一つとして考えられるのは、1998年から適用された学習指導要領で「生きる力」を身につけることが目指されるようになり、学校教育内容が大きく変容したことである。学習指導要領改定前の1996年に開かれた中央教育審議会(以降、中教審と表記。)では、「家庭や地域社会との連携を進め、家庭や地域社会とともに子供たちを育成する開かれた学校」を作ることが提案された(3)。こうして徐々に地域住民や保護者等の学校参画の必要性が認められるようになったのである。

なお、読者の中には「PTAを通じて既に保護者は学校参画できているのではないか」と考える方もいるかもしれない。たしかに、現在ほとんどの学校でPTAという組織が整備されており、保護者が頻繁に学校を訪れている。しかしながらPTAは、「学校と保護者が相互の教育について理解を深め合い、その充実に努める」とともに、「地域における教育環境の改善、充実等を図ること」を目的として組織されたものである(4)。つまりPTAは、学校と家庭が相互に理解を深めるために設立された組織であり、保護者の学校参画のための組織とは様相を異にする。

[2] 学校評議員制度に対する批判とCS導入

地域住民や保護者等が学校運営に参画する仕組みとして2000年に導入されたのは、CSではなく、「学校評議員制度」であった。学校評議員は、校長の諮問機関として位置付けられ、校長はあらかじめ、地域住民や保護者等から「学校評議員」を選出する。そして、校長が必要とみなした場合に、学校評議員を学校に招聘し、学校運営に関する意見を募る、という制度である。ところが、当該制度に対しては導入当初より以下のような批判があげられていた。

  • 学校評議員を招聘する頻度は校長の裁量に任されているため、当該制度がまったく機能していない学校が多いのではないか
  • 学校評議員は校長に対して「意見を述べることができる」にとどまり、意見が学校運営に活用されにくいのではないか

このような批判を受け、2000年に開催された「教育改革国民会議」でCSの概念が提案された。この会議は小渕恵三総理大臣(当時)の私的諮問機関として位置付けられており、本会議後、CSの制度化が推し進められ、2004年の導入に至っている。

上述したように、これまで学校には、PTAや学校評議員制度等、様々な目的のもとで、地域住民や保護者、教職員等で構成される組織体が整備されてきた。それらと比較すると、学校運営協議会は、「地域住民等と保護者」が、「法律にもとづいて」「学校運営」に関して議論を行う点に特徴があるといえるだろう。

(2)CSの現状

CSを導入してから13年が経過しているが、2016年4月1日時点で指定校数は3,600校(うち、小学校2,300校)となった。文部科学省は、2016年度までに全小中学校の1割に該当する3,000校をCS指定校とすることを目指していたため、目標は達成されたといえる。しかしながらその数は全公立学校の1割強にとどまっており、広く普及が進んでいるとはいい難い。普及が十分に進んでいない理由のひとつとして、「類似の制度があり必要ない」「管理職や教職員の負担が大きくなる」等でCS導入に消極的な教育委員会や学校が存在していることがあげられるだろう。

翻って、中教審が2015年にとりまとめた「新しい時代の教育や地方創生の実現に向けた学校と地域の連携・協働の在り方と今後の推進方策について(答申)」では、CSの理念や意義、課題を確認した上で、全ての公立学校のCS化を目指すべきと指摘されている。その後、2017年4月、地方教育行政の組織及び運営に関する法律が改正施行され、市区町村教育委員会に対してこれまで任意としていたCSの設置が「努力義務」となった。これら一連の動きから、CS数は今後増加していくことが予想される。

そこで当社では、学校運営協議会の設置数がもっとも多い小学校に着目し、学校運営協議会の特徴を整理し、同協議会の普及の可能性を検討すべく、2016年に自主調査事業として「学校運営協議会の運営に関する調査(以降、本調査と表記。)」を実施した。本稿は、本調査の分析結果から、今後CSの普及を促すために、どのような学校運営協議会のあり方が考えられるかを検討したものである。

1.調査の枠組み及び調査概要

(1)学校運営協議会に係る議論の整理

学校運営協議会に係る代表的な議論は、保護者の学校参加に関するものである。この議論は1980年代に体罰や管理教育が問題視されていたこともあり、保護者の学校選択権や、学校教育内容を知る権利が主張されていた。その後、1990年代後半になると、保護者に加えて地域住民を対象とした海外における学校参加に関する制度(アメリカのチャーター・スクール制度やイギリスの学校理事会制度等。両制度の詳細は後述。)が紹介され、日本においても保護者や地域住民の学校参加を認めるような制度整備が求められるようになった。

学校運営協議会導入後の2005年以降では、主に「学校運営協議会の委員の属性」「学校運営協議会の役割」に関して実証的な研究が増えている。

「学校運営協議会の委員の属性」に関する研究では、「誰が委員として学校運営に携わっているのか」に着目した研究がなされており、「(学校運営協議会の委員は、)時間的・文化的制約により、事実上特定の社会階層の人々に限定される」ことが指摘されている(5)

「学校運営協議会の役割」に係る研究での主な指摘は、校長は学校運営協議会に対して「教員人事」や「教育予算」等、学校経営に関する議論よりも、学校に対する具体的な支援活動を期待しているということである(6)

(2)本調査における視点

CSや学校運営協議会に関して様々な実証研究が蓄積されてきたが、本調査では以下の点に着目したい。

第一に、学校運営協議会の委員の属性が偏り、保護者全体の意見を学校運営に反映できていないとの指摘が生じているが、なぜ属性に偏りが生じるのかを明らかにした研究は多くない。委員に偏りが生じているのであれば、「誰が」「どのように」して委員を選定しているのかを明らかにし、その妥当性について考察する必要があろう。

第二に、学校運営協議会では具体的な学校支援に関する議論が多くなる傾向にあるが、その是非については検討する余地がある。つまり、学校経営に係る議論の割合を増やすべきか、現状のまま学校支援を中心として議論を続けるのかについて、我が国の教育制度の特徴を踏まえつつ考察する必要がある。

また、学校運営協議会を普及させていくために欠かせない視点として「教員の多忙化」が挙げられるだろう。学校運営協議会を運営するにあたり、校長に加えて、教員の一部がCS担当教員として、同協議会の準備や委員対応等を行っていることが多い。そのため、学校運営協議会の普及を促すには、同協議会を運営する際の校長や教員の負担を考慮する必要がある。

そこで本調査では、「学校運営協議会委員の選定」「議論の内容」「教員の負担」の3つの観点に着目して分析を行った。そのうち、「議論の内容」に関しては、図表2で掲げた学校運営協議会が有する権限に照らして、「学校経営」「教育方針」「教育活動/学校支援」の3つのカテゴリーに整理した。

なお、本調査では、アメリカとイギリスの類似制度との比較を行いながら学校運営協議会の特徴を考察した。同協議会は、アメリカの「チャーター・スクール」やイギリスの「学校理事会制度」の考え方を参考にして誕生した制度であることから、上述した3つの観点について、海外の類似制度との比較を通じて、学校運営協議会の特徴を明らかにすることができると考えたためである。

図表3 学校運営協議会の議題のカテゴリー
図表3
(資料)各種資料を参考に筆者作成

図表4 学校運営協議会の議題のカテゴリーと学校運営協議会の機能の関係
図表4
(資料)文部科学省「「学校運営協議会」設置の手引」をもとに筆者作成

図表5 チャーター・スクール、学校理事会制度概要
図表5
(資料)各種資料を参考に筆者作成

  • 本レポートは当部の取引先配布資料として作成しております。本稿におけるありうる誤りはすべて筆者個人に属します。
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