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技術動向レポート

再生可能エネルギーの導入による経済分析の視点から

再生可能エネルギーの現状と将来(1/4)

環境エネルギー第2部
コンサルタント 佐藤 貴文  コンサルタント 古林 知哉  チーフコンサルタント 蓮見 知弘

2012年の固定価格買取制度(FIT制度)を契機に再生可能エネルギーの導入が加速し、順風満帆に見えたが、近年、多くの課題が生じ、制度の見直しが進められている。ここでは、FIT制度の下での導入量を整理するとともに、再生可能エネルギー導入の経済効果や“お金”の流れを分析し、今後の方向性を考察した。

はじめに

2012年にスタートしたFIT制度が起爆剤となり、再生可能エネルギーの導入が急速に進展した。2011年のわが国の総発電電力量に占める再生可能エネルギー発電量は、約11%(そのうち水力発電分8.1%を含む)であったが、2016年では約15%(そのうち水力発電分7.5%を含む)の水準になった1。2015年7月に発表された長期エネルギー需給見通し(2030年度見通し)では、2030年度断面での再生可能エネルギー発電の割合は、原子力発電と同水準の22%~24%と示され、単純に割合ベースで比較すると、FIT制度開始後から現在までの導入量と同水準の再生可能エネルギーが今後新たに導入される見通しとなっている。

しかしながら、再生可能エネルギーの大量導入により、再生可能エネルギー発電促進賦課金による国民負担の増加や、系統の空き容量問題等、新たな課題も発生している。政府としても、再生可能エネルギーのみならず、電力政策の視点で、法律の改正等を行いながら制度の適正化を進めているところである。

本レポートでは、FIT制度開始から今日までの導入実績と課題、経済波及効果の分析結果を踏まえ、再生可能エネルギーの主要電源にむけた道のりについて考察する。

1.FIT制度導入における再生可能エネルギーの導入状況

(1)認定量・導入量と買取価格の推移

2012年のFIT制度開始以降、制度の対象である再生可能エネルギー5電源(太陽光発電・風力発電・地熱発電・中小水力発電・バイオマス発電)の認定・導入が進み、市場価格の低下が認められた場合には買取価格が見直されてきた。また、それと同時に高い買取価格で認定を取得したものの発電を開始しない、いわゆる空押さえや、想定以上の導入による国民負担増等の課題を是正するため、法律を改正し、2017年4月に改正FIT法が施行された。

以下では、FIT制度以降再生可能エネルギー5電源の認定量および導入量ならびに買取価格について改正FIT法施行前の2016年度までの実績値の推移および2030年度の累積の導入量見通しを整理した。各図において認定量・導入量を棒グラフで買取価格を折れ線グラフで表記している。

[1] 太陽光発電

まず、FIT制度開始により、最も認定・導入が進んだ再生可能エネルギーである太陽光発電について、主として住宅向けの10kW未満と、ビルの屋上設置やメガソーラー向けの10kW以上の2つの区分で整理した。

10kW未満の太陽光発電の認定量・導入量・買取価格の推移を図表1に示す。FIT制度開始から毎年100万kWが認定され、2016年度末時点で549万kWが認定されている。一方、導入量は、認定量の約85%に相当する約80万kWの水準で導入され、2016年度末時点で475万kW、FIT制度開始以前からの累積では945万kWとなり、すでに2030年度見通しでの900万kWを達成している状況である。10kW未満の太陽光は、認定を取得してから約1年程度で運転開始となっているのが特徴である。

また、買取価格は、FIT制度開始時点では42円/kWhであったが、太陽光パネルを中心に市場拡大に伴うコストの低減が進んだこともあり、2016年度には31円/kWhまで低下している。

10kW以上の太陽光発電の認定量・導入量・買取価格の推移を図表2に示す。2012年度における認定量は、1,868万kWであり、10kW未満の太陽光の約14倍、FIT制度における当該年度の認定量の約9割という圧倒的な容量を10kW以上の太陽光発電が占めることになった。これは、事業参入の容易さに加え、40円/kWhの買取価格の高さの後押しがあったと考えられる。その後も、さらに認定量は増加し、2013年度末で6,304万kWとなり、2030年度見通しの5,500万kWを超え、2016年度末で7,905万kWまでになった。一方、導入量は年間で約700万kW程度の水準にとどまっており、2016年度末では2,875万kW、FIT制度開始以前からの累積では2,965万kWとなり、2030年度見通しでの5,500万kWで約54%の水準である。

また、買取価格は、FIT制度開始時点では40円/kWhであったが、10kW未満の太陽光と同様、市場拡大に伴うコストの低減に加えて、安価な海外メーカーの導入が進んだこともあり、2016年度には24円/kWhと10kW未満の太陽光発電よりも速いペースで低下した。

太陽光発電の導入量についての2030年度見通しの実現のためには、認定を取得しているにもかかわらず、稼動にいたっていない案件である約5,000万kWをいかに運転開始につなげていくかが重要である。そのため、改正FIT法では、認定制度の見直しや入札制度の導入、一定期間を過ぎても運転開始に至らない案件へのペナルティー等の措置が盛り込まれた。特に、認定制度の見直しにより、従来の認定や買取価格が決まっていても、電力会社との接続契約の締結に至っていない案件は、認定が失効することになった。資源エネルギー庁は、2016年6月30日までに認定を受けている約9,622万kW(約315万件)のうち、約17%にあたる約1,610万kW(約27万件)が失効となること、またそのうちの約9割の約1,463万kWが10kW以上の太陽光発電であることを公表した2

図表1 10kW未満の太陽光発電の認定量・導入量・買取価格の推移
(左:FIT 制度下における認定量・導入量と買取価格、右:累積導入量と見通し)

図表1
(資料)資源エネルギー庁「固定価格買取制度情報公開用ウェブサイト」、「調達価格等算定委員会資料」よりみずほ情報総研作成

図表2 10kW以上の太陽光発電の認定量・導入量・買取価格の推移
(左:FIT 制度下における認定量・導入量と買取価格、右:累積導入量と見通し)

図表2
(資料)資源エネルギー庁「固定価格買取制度情報公開用ウェブサイト」、「調達価格等算定委員会資料」よりみずほ情報総研作成

[2] 風力発電

風力発電の認定量・導入量・買取価格の推移を図表3に示す。風力発電はFIT制度における買取区分が陸上で2つ、2014年度に新設された洋上で1つの合計3つになっているが、認定量や導入量は、これらを区別することなく整理した。

風力発電では、FIT制度の開始と同時に環境影響評価法の改正により、原則7,500kW以上の発電設備において環境影響評価が義務付けられるという、事業環境が変化したこともあり、太陽光発電と比べると認定量・導入量が低調になっている。認定量をみてみると、FIT制度開始から年間50万kWのペースで増加し2015年度末では283万kWであったが、FIT制度開始後の案件の環境影響評価手続きが進んだ案件が認定されたこともあり、2016年度末には685万kWと1年間で約400万kWと急増した。一方、導入量は、年間約10万kWの水準で増加しており、2016年度末では79万kW、FIT制度開始以前からの累積では、339万kWであり、2030年度見通しの1,000万kWの約34%の達成水準である。

また、買取価格は、FIT制度開始から2016年度までの間は、20kW未満は55円/kWh、20kW以上の風力発電の場合22円/kWhのままであり、変更はない。また、洋上風力については、2014年に民間でも事業計画が立ち上がりつつあることを背景に、買取価格が36円/kWhと設定され、2016年度まで変更はない。

今後は、着床式の洋上風力発電が北海道や東北地域といった風況のよいエリアを中心に導入が期待されるところである。政府としても、その動きを加速化させるため、一般海域における洋上風力発電のルールとして、海洋再生可能エネルギー発電設備の整備に係る海域の利用促進に関する法律案を閣議決定し3、それを前提とした買取価格の見直し等の検討を始めている。

図表3 風力発電の認定量・導入量・買取価格の推移
(左:FIT 制度下における認定量・導入量と買取価格、右:累積導入量と見通し)

図表3
(資料)資源エネルギー庁「固定価格買取制度情報公開用ウェブサイト」、「調達価格等算定委員会資料」よりみずほ情報総研作成

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